映画🎬-『耳をすませば』

このノートを書きはじめてはや1ヶ月近く経つ気がする。
追記追加を重ねてなかなか書き終わらないので、一旦公開してその後書き足していくことにしようと思う。

他のノートも下書き途中で埋もれているものばかりだし、完成させてからと思って置いておかずに、書いた部分だけ投稿しちゃっても良いのかな、なんて思った。

🎬『耳をすませば』/ 平川雄一朗/2022年

前書き

耳をすませばという作品が、ずっと好きだった。ジブリ作品の中で、1番好き。
ジブリのアニメ映画はもちろん、続編の猫の恩返しに加え、原作も読んだ。
そういや学校の授業にも出てきたな、たしか道徳の時間に。背景の心情だとか、そういうものを答える授業で、既に様々な媒体で何周も楽しんでいた私は答えを知っているなんてレベルじゃなくて、当てられた時に困った覚えがある。

だから、実写映画の制作が発表された時、この上なく嬉しかったし、またあの世界を味わえるんだ、そう思った。同じく耳をすませばが好きな友人と見に行こうね、なんて話もした。
でも、結局コロナウイルスの加減で延期が続き、その子とはそんな関係ではなくなってしまったし、公開時期も観に行けるようなタイミングじゃなくて、結局いつか、いつか見ようと思い続けて、2年も経ってしまった。

そんな作品を、今回やっと観ることができた。
色々と思うところがあったので綴っていきたいと思う。

感想（ネタバレあり）

1.原作漫画・アニメとの設定の変化

今回、いくつかの設定が原作漫画・アニメの時と異なっていた。その中でも気になったものをあげていく。

1-1.聖司が目指しているもの

・原作漫画→画家
・アニメ映画→バイオリン職人
・実写映画→チェリスト
なかなか大きな変更である。

私は少しモヤっとしてしまった。
あくまで原作は漫画だとしているのに、どちらかというとアニメ寄りの設定である。

しかも、アニメと原作漫画は「つくること」が夢である。形は違えど、絵として、バイオリンとして、自分の思い描くものを「つくる」仕事であり、それは文章として自分の作品を、世界を、「つくる」雫と通ずるものなのだと思っていた。

だからこそ分かり合える部分がある。
分野や、活躍の仕方、夢の追い方の違いで悩み、不安になる部分ももちろんある。
そういうことを含めて、2人で支え合って頑張っていくんじゃなかったのか。

芸術という括りでは同じなのかもしれないが、私は少しモヤっとしてしまった。

私はアニメから入った為、原作漫画を読んだ時に大きな違和感は感じなかったけれど、原作からファンだった方は、その時もモヤモヤしたのだろうか。

どんな意図があってここを変えたのか、私自身が把握できていないだけかもしれないけれど、私はモヤモヤしてしまった。

1-2.雫のはじめての小説を読む人

これは、変えてほしくなかった。
おじいちゃんに、地球屋の店長さんに、人生の先輩であり、バロンと出会わせてくれた司郎さんに読んでもらうから、意味があったんじゃなかったのか。

そもそもアニメの方では、司郎さんに1番に読んでもらうと約束した上で、バロンをモデルにしたお話を書く許しを貰っていたような。
そして、雫が書き上げた物語が、バロン達と司郎さんの中にあった物語とどこか似ていて、そのある種運命的な繋がり含めて味わうシーンのように思っていた。

同年代とか、ライバルとか、そんなんじゃなくて、尊敬する、自分よりずっと長く、豊かな目で生きてきたであろう司郎さんに読んで貰うからこそ、意味があったのではないだろうか。

3.の『天沢聖司は「やなやつ」』にも記すが、あの頃の聖司はまぁあまり素直ではないし、ナルシシストのような面も垣間見える。

仲が良くなってきたといえど、そんな彼に、大切な作品と初読者になって、ということ自体、違和感を感じた。

あんなに想像力豊かで、不思議な縁を楽しんで、ワクワクしちゃうような雫が、そうするだろうか。バロンと出会ったあの場所で、司郎さんに読んで貰う、それ以外の選択肢が本当にあったのだろうか。

また、あのシーンがあることで、お互い夢を追う対等な関係であった2人の関係が、少し歪なものになったように感じた。
雫は聖司に、自分の作品を読んでもらい、感想を伺った。まるで雫が評価される側、聖司が評価する側、みたいに。
でも、雫が聖司のチェロを評価する場面なんてなかったように思う。
お互いにそういう場面があって、お互いの努力を知って、尊敬して、そんな描かれ方ならまだ納得がいったかもしれないけれど、大切なシーンが塗り替えられてしまった気がして、少し寂しくなった。

2.子ども時代の再現度の高さ

回想として何度か描かれた子ども時代が、記憶の世界そのままだった。

セリフが全く同じなのもあるのだろうが、あの世界のあの住人達を、この世界の人が演じている。あの世界が現実にある。そう思えた。

喋り方だとか、醸し出す空気だとか、そんなのが全部同じで、感動した。


ただ、あまりに再現度が高すぎて、「実写」作品としては少し違和感もあった。

漫画内やアニメの世界では違和感のなかったセリフでも、現実の人間が言うと歯の浮くようなセリフに聞こえたり、現実味のない言葉に聞こえたりする。

そんな現象が起きている気がして、でもそれはどこまでも二次元のあの世界と同じ世界を描いているからで、ジレンマを感じた。

あの世界そのまま、でも現実世界の人が行っていても違和感のない言動というのは、なかなか難しいのかもしれない。

3.天沢聖司は「やなやつ」

自分が小-中学生だった頃は、やなやつだけど、いじわるだったけど、素直じゃないだけで、根はいいやつなんだな、なんて思っていた天沢聖司。
当時から『天沢君かっこいい！！』なんて思いは微塵も抱かなかった為、元々好みではなかったのかもしれない。

それでも当時は、雫と聖司の関係性が素敵だと思っていた。
感性が似ていて、つっけんどんな態度を取りつつも、相手を尊敬しあいながら、お互いの夢を追って、切磋琢磨している。
そんな『2人』が好きだった。
あくまで、2人の関係性が好きだったのだと思う。

そして、現代編ー10年後の聖司は、あの頃のままだった。
良い意味でも、悪い意味でも。

雫は多少変わったと思う。
こちらも良い意味でも、悪い意味でも。
きっと雫は大人になったんだろう。社会で生きていく中で、捨てなければならないものもあるし、諦めなければならないものもある。それは分かるし、その変化は雫が10年ちゃんと生きてきたことを示していた。
空想上の世界にいる少女としてではなく、現実を生きる大人として、生きてきたからこその変化なのだろう。
でも、そこには、何をするにも真っ直ぐで、人の心を真正面から見つめるあの雫がいなかった。
かろうじて小説を諦めてはいなかったけれど、なんだか、それ以上に大切なものを失いかけていたように思う。
だって、あの頃の雫なら。司郎さんに作品を読んでもらって泣いていた雫なら。
担当作家さんに、あんなことは言わないし、言えないはずだから。ああいった対応をされた時の自分の気持ちを、もはや考えるまでもなく脳裏に浮かべて、違う行動を取ったはずだ。

雫の何よりの長所であり、原石であった、キラキラした部分。少女だった時、決してそれだけは失わなかった彼女の宝物を手放しかけているように見えて、見ていて悲しかった。

物語を通して雫はその大切な感情を思い出していき、最後は取り戻す（？）形となるのだが、その描写によって、この作品が原作の蛇足にあたるような気がしてしまった。

対して聖司はあまり変わっていなかった。
本当に、良い意味でも悪い意味でも。
雫より素直じゃなくて、キザで、ちょっぴりナルシシストで、そんな、『やなやつ』な部分が、当時のままなように思えた。
あの頃のまま、歳を重ねたようにみえた。

だから、ある程度成長した周りー分かりやすいのは杉村とかーからは少し浮いているようにもみえて、どこか現実離れしたというか、
悪くいってしまうと周りが見えていない部分が大きいような、そんなふうに感じてしまった。

私は元々聖司がとても好きだったわけではないけれど、嫌いでもなかった。でも、今作の聖司は、見ていて歯痒くて、なんでそうしちゃうんだろうって受け入れられない部分も多くて、少し苦手だった。

それもこれも、私の精神年齢がまだ幼いからなのだろうか。もっと歳を重ねたら、また違う感じ方をするのだろうか。将来また考えてみたい気もする。

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余談だが、『月の夜星の朝』という漫画シリーズ（母が読んでいたものの為少し昔の作品）も近いものを感じた。

学校の図書室の司書さんと母の読書歴が重なっていたこともあり、当時は母の古い漫画を読んでは司書さんに感想を語りにいっていた。

『月の夜星の朝』もそんな中の一つ。いつものように感想を語った後、我が家にはなかった続編について、
そして、事前に調べて続編があることも知っていたので、当たり前のように先生に続きを読もうと思ってるんですって話した。そしたら、なかなか語気強めに止められて。
いつもなんでもたくさん読みな、って感じだった先生がそんなことをいうのははじめてで、とても驚いたのを今でも覚えている。

学生時代の主人公たちは、強くて、真っ直ぐで、キラキラしてて、どんな困難も協力して乗り越えていた。
でも、続編の主人公達は、急に人生に何度も迷い、昔信じていたものも信じなくなり、あんなに強い意思で共にいようとしていた2人が離れかけたり…だとか（その後先生からざっくりあらすじを聞いたりネタバレを読んだりした）。あの頃の主人公らの魅力がごっそり消えてしまったように思えてショックで、あの作品ごと苦手になってしまったから、今もし月の夜星の朝を読んで素敵な気持ちで終わっているのなら、そのまま読まないでいた方がいい、とも先生は言ってたっけな。

その時は（自分の作品への思い入れ具合の加減もあっただろうけど）そうなのか、くらいにしか思わなかったけど、自分の大切な作品でそういった展開を味わうと、複雑な気持ちになるものだなと思った。

大人になるってそういうこと、なんだろうか。

4.かつて自分に似ていると言われた雫

後日追記します

5.あの頃の方がまっすぐで

後日追記します

最後に

後日追記します