200円足りなくてフィリピンから出国できない危機
ロックダウン中のフィリピンにいました。
欠航、そして欠航
3月30日に帰国する予定が、COVID-19の対策でルソン島全域がロックダウンされ、セブパシフィック航空が欠航となり、帰国の足を失いました。航空会社の中には運行しているものもあったけれど、ロックダウン中はすべての公共交通機関がストップ。飛行場まで行けないために、物理的に飛行機に乗れない……という状況でした。
なんとかクルマを手配し、4月5日の飛行機で帰ろうと航空券を購入した翌日、再び欠航……。またもや航空券を取り直して、ようやく4月10日に帰国することになりました。
手配に翻弄されているうちに時が過ぎ、観光ビザの期限4月8日はひっそりと過ぎて行きました。
観光ビザ代、払わなくていいよね?
ロックダウン中はイミグレーションオフィス(出入国管理)の業務が停止していました。だから、ビザの延長手続きはできません。でも、大丈夫。フィリピン政府から「ロックダウン中にビザが切れても、ロックダウンが終了してから30日以内に手続きをすれば、ペナルティはかからないよ」と通達されていたのです。「よかった。焦ることはないんだ(ホッ)」という安心を得たらいつのまにか、頭の中からビザのことが消えていました。
いざ、帰国!
フィリピン観光局経由で連絡が取れた地元の観光会社の手配で、マニラ空港までのクルマを出してもらえました。
4月10日、朝6時30分。予定通りの時間にドライバーと出会うことができ、マニラへ。平均時速120キロ。たまに180キロを出す爆走で、2時間もかからずに空港に到着。
フライトの離陸が14時40分なのに、空港に着いたのは9時前。「何時間前行動だよ…」、と一人呟かざるを得ない早どり具合。通常時ならいいですが、COVID-19の対策で空港のショップは98%休業、旅行客の入れるエリアも縮小され、ただ椅子に座ってジッと待つ以外にやることがありません。ただ唯一、営業していたのが国民的ファーストフードチェーン「ジョリビー」。
ハッピビーが運んできたフライドチキンとギュッと詰まった米をかっ込んで、ひたすら時が経つのを待ちました。
え? ビザ代を払うの?
ようやくANAのチェックインカウンターがオープン。オンラインチェックインが済んでいたので、手続きは簡単。荷物を預けて、イミグレーションをスムーズに通過……するはずが。
イミグレ「ビザ、切れてるけど」
わたし「うんうん、知ってる。でもいいんだよね、ロックダウン中だから」
イミグレ「ペナルティは払わなくていいけど、ビザの延長金は普通に払うんやで」
わたし「は?」
イミグレ「やで」
わたし「え?」「え???!」
イミグレ「2840ペソやで」
わたし「(手持ちが1500ペソしかないよ)クレジットでもいいですか?」
イミグレ「ダメです」
仰天……。ぇーーーーーーーーーー。ショック、フリーズ。
イミグレ「ATMがあるわよ」
わたし「…○△■×☆」
お金をおろせない恐怖
いつも通り、楽天カードの海外キャッシングで下ろすことにしました。というか、それ以外の方法がない。この方法はすでに3回ほど行っているので慣れています。
楽天カードを挿入。ボタンをプッシュ! エラー! 「……!?」
ATMが使えない。
フィリピンのATMは、お金の供給がうまくいかずに、ATMのくせにお金が入っていないことも多々ある。それも経験していたので、「またこれか」と思って隣のATMに移りました。
2台目のATMも使えない。
仕方がない。他の機種を探そう。
3階から2階のフロアに降りて、他の台を探す。
3台目もおろせない。
4台目もおろせない。
さすがに焦ってくる。「え、操作ミス?」と思い、操作を検索して確認する。いや、あってる。でもなぜか受け付けてくれない。
5台目もおろせない。
どうしたらいいのよーーー。警備員に助けを求めるも、アドバイスがお役に立たない。
周りを見ると、フィリピン人はおろせているようだ。なぜかわたしの時だけエラーになる。「そうか、引き出す金額が大きいのかも!」と思って、どんどん、小さくしてみる。
2000円にしてダメ。
1000円にしてもダメ。
フロアの逆側の機種に移って、再びトライ! でも6台目もおろせない、もちろん7台目も。見渡す限り、これで終わり。
そして、もし8台目を探してトライしても、この流れではおろせる気がしない。
「ぁ! 手持ちの日本円があるじゃん!」と思い出し、持っている全日本円(2000円)を両替する。
数えてみると、約2700ペソ。
「ぁぁぁぁ、100ペソ(200円)足りない‼︎」
フライトの時間は近づいてくるし、お金はもうないし……、あとは人に頼むしかない!
2人の男の子を連れた男性を発見。
よし、優しそう。
わたし「すみません、200ペソ(400円)貸してくれませんか。あとで振り込みますので」
パパさん「こういう時ですからいいですよ(返さなくて)」
わたし「!?!涙」
優しみ、染み入る。。。日本人、やさしい。
かき集めた大量の札束でビザ代を払うことができ、ようやく待合スペースに進めました。
お金を恵んでくれたパパさんのお子さんが私を指して「これ誰ー?」と何度も言ってて、いやほんと、「これ誰」ですよ。ありがとう、本当にありがとう。
「もらった優しさ巡らせるために、なんかいいことしなきゃぁぁ」と噛みしめながら、機体に乗り込みました。
羽田空港で恩返しを
なんとこのファミリーとは、数時間後の羽田空港でまた出会うこととなりました。同じ飛行機だった! 聞けば1月にマニラに移住したばかりとのこと。子どもが病気になったら今の医療体制では心配だから、と、一時帰国を決めたそうで。
日本に家がないので、とりあえずホテルに行き、そのあとは転々とするしかないかなぁ、とおっしゃったので、とりあえずわたしの連絡先を紙に書いてお渡ししました。
わたし「何ができるかわかりませんが、何か困ったら連絡してください」
自宅から迎えがきていたわたしは、PCR検査の結果を待たずに羽田空港を出ることができます。でも、彼らはホテル行きなので検査結果が出るまで、空港を出ることができません。さらに、長時間待機しなければならない待合所は、イミグレーションの手前。あるのは、椅子と自動販売機1台。毛布とお弁当と水は配ってくれていたけれど、ショップもない。もし、日本円を日本についてから入手しようとしていたとしたら、ATMもなく、下ろすこともできないような場所。もちろん、預入荷物を受け取ることもできません。
小さな子ども2人と、この殺風景な場所で待つのは、なかなかしんどいだろうな、と思いました。
今のわたしにできること…。
ジュースやコーヒーが買えるようにと持ってるだけの日本円の小銭をまとめ、食糧が確保できなかったときのためにと手荷物に入れていた全粒粉クラッカーやチョコビスケット、ピリナッツとコーヒー味のナッツ、予備のマスク1枚をまとめて、壁越しにお渡ししました。
わたしはすでにその場所を通過してしまった後で、彼らがそこから先に行けないことを知り、直接渡すこともできなかったのです。
不要だったら荷物になるから捨ててね、とすらも言えなかった…。
今もなお、気がかりです。どうか、健康に気をつけて、安心できる場所が見つかりますように。
※お金がおろせなかった理由は、楽天カード側がフィリピンで不正使用されたと判断して利用停止の遠隔操作をしていたためでした。1〜2台目のATMにお金が入ってなく、何台もATMを回ったことで、「むむ?不正?」と判断されてしまったようです。今回のコロナで実際に不正利用も増加しているらしく、セキュリティが厳しくなっているとのこと。ありがたいけど、今回に限ってはまじで勘弁…でした。こんなこともあるのか、と。
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