魔法

魔法だ。

君は結界を育てている。

シャラシャラと軽快に枝葉を伸ばした光が柔らかいドームを作って、
たくさんの衛星が飛び回って、世界に間違いがないかをチェックしている。
確認すると満足気ににっこりと笑う。

「あなたに魔法をかけました」
「あなたは3日後に、死んでしまうはずだったのですが、魔法で助けてあげました」
「だからもうだいじょうぶですよ」

海の底も空の上も、ここから10,000メートルという点では同じ。

私を深海に沈めるのが君ならいいよ、
素直にいうことをきく遺跡になるよ、
きっと発掘されないでいつまでも眠っているけれど
君の魔法ならいいよ。

「全部嘘だったんだ」というその言葉が嘘じゃないって、証明はどこにある?

君は結界を広げていく。
灰色の地面の奥まで、水色の空の向こうまで、私の涙を越えて。

精霊になるつもりだったのが、飛べないから疾走して、
透明なガラスのつま先はひび割れて
ナイロンとプラスティックの髪の毛は伸び続けて
血は流れて
いつの間にかここで歌うようになっていたんだ。

隣の家の友人は国境の向こうへ行った、
幸あれ、と言った教師は地下室へ消えた、
何もかもが変わっていくから、これは魔法だと思ったんだ。

腰骨をカナヅチで叩き壊して、伏し目がちに去ろうとしている。
ゆるしてと言うならゆるすけど、君はほんとうに、

私にゆるされる覚悟ができているか?

それなら、ねぇ、

私の首を絞めたその時の
緯度と経度の座標を
星々の位置を
風の吹いた角度を
私が覚えていることをゆるしていて。
そして
いつかぷはぁと水面に顔を出したその時は
君は魔法のように消えていて。













2020.10.25(日)昼
西永福JAMにて
ふれでりっひ書院・koyubi ツーマンライブ
イメージテキスト
盗書URL https://twitcasting.tv/nurunuru023/movie/647819748

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