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stage#1

唐橋ひかりはふと目が覚めて、時計を見る。まだ8時半だ。家を出るまでには1時間半ほどある。今日の授業は2限から4限までだが、3限と4限は出席を取らないからすぐに帰ってこようなどと考える。大学2年生なんてこんなものだ。這うようにキッチンに向かい、2つ並んだマグカップに牛乳を入れてレンジで温める。布団に戻りホットミルクを飲みながらもう1つのマグカップの持ち主のことを考える。3週間ほど前に別れた男のものだ。笑ってしまうほどあっさりとした別れた方だった気がする。「別れよう」と言われ、「分かった」と言った。彼は次の日には荷物を整理して家を出ていた。その時にこのマグカップは持って帰らなかったのである。ひかりは空になったマグカップを洗い、洗面所に向かった。歯を磨きながら、自分の顔見つめる。化粧をするか迷うが、どうせすぐ帰ってくるのである、すっぴんのままマスクをつけようと考えて洗面所を出る。その際に玄関の端に立っているハイヒールに気づいた。見栄をはることもあまり必要なくなった私にはただ足を疲れさせるものと化していた。そのおもりを下駄箱の奥にしまった。時計の針は10時をさしていた。家を出る予定のはずだが、着替えも終わっていない。また15分遅れると考えながら服を着替える。大学2年生なんてこんなものだ。

退屈な授業が終わり教室を出ようとすると、後ろから「ひかり」と呼び、肩を叩くものがいた。私の周りにそんなことをする人は1人しか知らない。「さな、ほかの人と間違えたらどうするの」と聞くと、藤代紗奈は「身長でだいたい分かるよ。あと間違っても友達になるし」と答えた。たしかに紗奈はひかりと対照的に明るく多くの友達がいる。そんな紗奈にいじられるように私の身長は152cmと周りと比べほんの少し小さい。紗奈とひかりはそんなコンプレックスを堂々といじれるくらいには仲良い。紗奈には多くの友達がいるにもかかわらず、よく私と一緒にいる。そのままお昼ご飯を食べに行くことにした。

パスタを待ってる間に「成人式どうするの」と紗奈に聞かれた。私達は4日後に正式に大人の仲間入りらしい。「明後日岡山に帰るよ」と答える。東京出身の紗奈と比べてひかりは岡山に帰るだけで一苦労である。両方のパスタが届いた。パスタを食べながら、ひかりは成人式に対して少しわくわくしていた。懐かしい友達に会えるということもあるが、何よりも振袖を着れることがうれしいのだ。今の顔とはくらべものにならないくらいおめかしをする。自分のことを美しくできる、服と化粧は偉大と感じながら最後の一口を頬張る。

*むぎ茶です。今回連載小説を始めました。この連載小説はみなさんからコメントで頂いたワードを次回のお話に入れ込んで話を続けていく『みんなで作り上げる小説』となっております。コメントが多い場合、全部に対応できるか分かりませんが、気軽にコメントしていってください。逆に頂けなかった場合には私の力不足ということで私自身の力で次回の話を投稿します。使わせて頂いた場合そのワードに本人様のリンクを埋め込ませていただきます。ぜひコメントで使って欲しいワードを「」で閉じてお送りください。これからもよろしくお願いします。

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