北米マンガアプリ市場を探る#2ジャンプ作品読み放題が500円弱で成立する背景とは
前回の記事でマンガアプリにおける日本とアメリカのビジネスモデルの違い、そしてアメリカ式モデルの最先端としてのViz Mediaを紹介した。
前回の記事を簡単に要約する。
日本とアメリカでマンガアプリのビジネスモデルが異なる。日本は単話課金モデルで、アメリカはサブスクリプションの読み放題モデルだった。
アメリカを代表するPublisherであるMarvelは$9.99/month, DCは$7.99/monthで数万話の読み放題を提供している。
しかしそれをより新鋭化する形で現れたのがViz Media(ざっくり小学館と集英社の子会社)のサービスで、彼らは二万話の読み放題を$2.99/monthで提供している。
本記事では、「なぜViz Mediaはそこまで低価格で読み放題を提供できるのか」その理由について、日本とアメリカのIPビジネスモデルの違いという観点から考察する。
なおこれは僕の考察であり、100%正しい情報とかでは全くありません。
参考文献もほぼなく、アメリカ人の友達から聞いた話をもとに僕が勝手に考えているだけなので、妄想と呼んだ方がいいかもしれません。
間違ってるところあったら教えてください。
日本のIPビジネスのモデル
日本のIPビジネスのモデルは基本的には漫画から始まり、そこからメディアミックスされ様々展開していくスタイルが主流。
つまり基本的には漫画からIPが始まり、そこからアニメ化され、成功すれば映画化やゲーム化などに展開していく。
なので、おそらく集英社(Viz Media)は、「北米では漫画で稼がなくてもいい」と思っている可能性がある。なぜなら、北米は市場がめちゃでかいので、仮に漫画が低価格で読まれてたとしても、その先のアニメや映画で十分回収できるから。
加えて、北米には違法アップロードの問題もある。
日本の漫画は違法アップロードされすぎていて無料で読めてしまう。しかもそういうサイトは大体公式のアプリよりUIが優れている。
なので日本の漫画にデジタル上でお金を払って質の悪いUI上で読むことのインセンティブが非常に低い。
違法アップロードに対抗するためにも、極力低価格で読み放題プランを提供する必要があったのではないか。
まとめると、Viz Mediaが$2.99という圧倒的低価格で読み放題を提供している理由は
・漫画で稼がなくても、その先のアニメや映画化で稼ぐことができるから
・違法アップロードに対抗するために低価格である必要があった
上記二つの理由ではないかと推測する。
北米のIPビジネスモデル
※追記 この項の内容は間違っている可能性があります🙇
対して北米は、映画がメインで、そこからサブメディアに展開されていくようなイメージだ。
日本のようにマンガや映画、アニメが並列してるわけではなく、映画がメイン、その他はサブという位置付けになっている。
また、DCやMarvelが持つIPは、コミック→映画の順に作られたのではなく、映画→コミックの順に作られている。新しいキャラクター・世界観は常に映画が先に作られ、その漫画化、もしくはサブストーリーとしてコミックが作成される。
なのでコミックは映画に付随する収益チャネルの一つなので、コミック単体で見てしっかり収益を出さないといけない。(⚠️追記:ここ間違ってるかもです。コミックは映画に付随するサブジャンルでしかない故、映画のマーケティングチャネルとしての機能を最も強く求められていて、収益性は二の次である可能性がある)
デジタルでロイヤリティを高めて紙で回収するのが一番の狙いのなのは間違いないが、デジタルでもしっかり収益を出さないといけない。だからViz Mediaのような、行きすぎた低価格設定が不可能なのではないか。
また違う言い方をすれば、アメリカのコミックは映画から出たIPの末端のメディアの一つでしかないので、そこで出る収益を削ってまでみんなに読ませる必要がない。漫画単体で見たときの収益が最大化される戦略が常に最適戦略になる。
まとめ
以下が僕が立てた仮説
Viz Mediaが$2.99という圧倒的低価格で読み放題を提供している理由は
・漫画で稼がなくても、その先のアニメや映画化で稼ぐことができるから。
・違法アップロードに対抗するために低価格である必要があるから。
MarvelやDCがそれを実現できない(しない)理由は
・映画の先に漫画があるので、漫画単体で見たときの収益が最大化される必要があるから。
疑問、あやふやなところ
「Vizは漫画で稼がなくてもいい」と思っているという仮説は本当か?
「デジタルで稼がなくてもいい」と思っている可能性は高いが「その分は紙で回収する」と考えている可能性はある
「その先のアニメやグッズで稼ぐことができる」は間違っているかもしれない
漫画以外のチャネル、アニメやグッズがどのくらいの割合出版社側に入ってくるのかは調べる必要がある
アメリカのIPビジネスにおける映画とコミックの関係性。コミックはサブジャンルだからこそ収益性を重視されるのか、それとも映画のマーケティングチャネルとしての機能を重視されているのか
自分の仮説「北米市場において、日本の出版社は漫画で稼げなくてもその先のマルチメディアで稼ぐことができる」が本当なら、集英社・小学館以外の出版社が読み放題サブスクを実施しないのはなぜか
できなくてしないのか、特にする必要がないと思っていてしないのか
Webtoonのビジネスモデルはどのようなのか
北米のコミック・マンガ・Webtoonアプリで最もユーザーを獲得しているのはWebtoonである
Webtoonは単話課金モデルを敷いており、今まで語ってきたようなサブスクモデルとは様相が異なる
次調べることのテーマ
講談社がサブスクモデルから撤退した理由は何か(講談社は一度Mangamoというアプリでサブスクにトライしている)
講談社が集英社型のビジネスモデルを目指していた場合
「集英社型のビジネスモデル」とは何か
「アプリで集客、収益性は無視→他チャネルで収益」という仮説
集英社の北米における収益のあげ方
どのチャネルで
どの割合(北米収益の何%)収益を上げているか
「集英社型のビジネスモデルに失敗する」とは何か
アプリでの集客が失敗した
集客はできたが他チャネルで収益が上がらなかった
講談社がViz media型のビジネスモデルではないものを目指していた場合
他にどんなモデルが考えられるのか?
加えて思ったことのメモ
前回の話は出版社発のアプリで軸を揃えて日米比較すべきだった。日本の非出版社発のものと米の出版社発の元を比較してしまったからそりゃビジネスモデルは違う。となると論点はアメリカに非出版社発の漫画アプリはあるのか?という部分になるのでは?
仮に自分が出版社の外からアプリを作ることになったら、どういう収益モデルを作れる?ぱっと見どの会社もアプリ単体で収益を上げることはできてなくて、アプリでの集客を紙媒体や映画などの売上で回収する仕組みにしている。そうなると非出版社が北米漫画アプリで収益を産むのはどんなモデルだったらできる?
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