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『重版出来!』を読んで②

漫画「重版出来!」についてお話させていただいています第二回目。少々ネタバレも含みますので読んでない方はご注意していただきますようよろしくお願い致します。

2. 個性の強い、魅力的な登場人物たち

黒沢心が初めて見い出した漫画家中田伯は壮絶な人生を歩いてきた人物です。父に殴られ母に首輪をつけれらたことがある家庭環境に育ちました。中田伯には漫画しかない、漫画だけが彼を生かしてきたと言ってもいいかもしれません。彼は誰にも真似の出来ない独特の世界観「ピーヴ」を描く天才です。そして、「ピーヴ」の世界と現実世界の境界線があやふやな非常に危ういところに生きています。

有名漫画家の娘アユは、描けなくなった父を支えてきた母を亡くした事で、父を憎んでいました。生活保護を受けながらバイトをし、同級生に意地悪をされながらも学校に通い現実に向き合っています。彼女にとって「夢」を見る事は諸悪の根源だったのです。

重版出来!の主人公、黒沢心は柔道でオリンピックを目指せる程の実力者でしたが、怪我をしたため引退をし、大好きだった漫画の編集者になりました。この主人公の黒沢心がとっても魅力的なんですよね。

先に触れたように、中田伯やアユは厳しい環境でそれでも頑張って生きてきた人達です。そうそう心の壁も崩すことは出来ないし、生きるために歪みながらもこの世界の居場所を見つけようとしてきました。

黒沢心は、柔道に従事してきたからか心身共にしなやかな人です。竹を割ったような性格、優しくて切り替えの早い人です。


中田伯やアユのように、大人よりも早く大人にならなければいけなかったひと、歪みながらも息をしなければいけなかったひとに対して黒沢心は伴走をするんですね。この優しさと心の距離感がとってもなんていうか良いんです。中田くんなんて本当にどう接して良いかわからないじゃないですか。実際、うまく付き合えなくて離れていく人もいます。怖いと思う人もいます。

みんな、心身共に健康であり得る人って今の世の中そうそういないんじゃないかと思うんです…中田伯まではいかなくとも、傷ついて殻に閉じこもる人、人付き合いが苦手になってしまう人…そういうときにこんな人がいたらいいなって思う人が重版出来にはポツポツといるんですよね。

黒沢心や、大塚シュート、五百旗頭、三蔵山先生、高畑先生、栗山さん…優しくて、優しいだけじゃなくて自分の足でしっかり立てるように叱咤激励をしてくれる人。見守って伴走をしてくれる人。一貫して温かい目がある。

ここを読んでくれている人に「重版出来!」をお勧めしたい理由の一つは、もしかしたら、あなたの気持ちに伴走するような場面がこの本のどこかのシーンにあるかもしれないと思ったのです。

15巻は黒沢心にもなかなかのピンチが訪れます。同僚の壬生さんと美味しいもの食べて乗りきっていけるかどうか?今回も面白いです!






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