『重版出来!』を読んで③
重版出来についてお話をさせていただいています第3回目。長くてすみません。もうちょっと話をしたいので続きます!引き続きネタバレ含みますので読む時にご注意くださいね。
3. 創作と育成について
「重版出来!」にはたくさんの漫画家さんが出てきます。まず二人、中田伯と東江絹についてお話させてください。
中田伯については②で触れましたが、家族との非常に困難な軋轢があり、それが作品の世界観にも色濃く投影し、天才たる所以にもなっています。
対して東江絹は、漫画家を本気で目指すことに反対はされていても、優しく見守る家族や理解ある友人に恵まれています。絵が上手で早くからデビューのチャンスにも恵まれます。ただ、優しい性格であるがゆえに都合良く使われてしまうんですね。
この二人、三蔵山先生のアシスタントを経験するときに出会います。正反対な二人ですが、印象的なのは、お互いにお互いが「恵まれている」と思うんです。中田伯にとって東江絹は「東江さんみたいに家族仲良くて何不自由なく育った恵まれた人がなんで漫画描くのかわからないです」と。東江絹にとっては「中田さんにしか描けない世界を多くの人が支持してくれてる。私にも自分にしか描けない世界がほしいんです。」と。
中田伯はモンスターと呼ばれながらも、漫画を描いていくことによって、また色んな人と関わることによって、こころに血を滲ませながらだんだん他の人の気持ちがわかるようになったり、少しずつ人間らしくなっていきます。とっても苦しそうですが。
そして東江絹は、いったん漫画を描くのを止めて就職をします。そこで経験を積んでそれを糧にしていくんですね。私、こことても好きなんですけど、経験が彼女の世界をどんどん積み上げて、彼女の独自の世界をこう頑丈な家を建てていったみたいな感じがするんです。
中田伯も東江絹も、好きなモノを芯にして、好きなものがあるからこそ傷だらけになっても、もうダメなんじゃないかってところまできても、「好き」をつっかえ棒みたいにして立ち上がり、それぞれ頑張れるんですね。対象的であったはずの二人が、全然違う道筋を通りながらも同じように「好き」を原動力にして頑張った結果手にするものがあるときは、見ていて本当に嬉しくなります。
もう二人。三蔵山先生と高畑先生。二人はもう大御所です。バンバン売れてます。でも、全然意欲も努力も新人と変わりません。デジタルも勉強しますし、Web化の時にはいち早くコマ割の工夫を考えます。そして、その技術を惜しみなく後進の人達に教えるんです。この二人かっこいい。
以上、これでも急ぎ足で「重版出来!」について書き連ねてみました。
これ以外でも「たんぽぽ鉄道」についてや、書店員である河さんなどまだまだ色々ご紹介したい気持ちもありますが、それは読んでのお楽しみということで。
そして、できればまたドラマ化の続編をみせていただけないかなあとこっそり思っております。
長くなりましたが、最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました!ぜひお手にとって全巻読んでいただけたら、と思っております。