見出し画像

値札が付けられない幸せ

出会って七日で入籍した経営者と離婚して
一ヶ月が経とうとしている

七日で結婚したことよりも
幸せをお金で買おうとしたことが
なによりも愚かだった

三億円の連帯保証人がきっかけで
泣き崩れる父親を六歳で見てから

私はいつだってお金持ちになりたかった
打算の笑顔と嘘を重ねてきた

高校時代はグッドデザイン賞の
審査員の息子と付き合った

大学時代〜社会人は
三菱商事の内定者と付き合った

マッチングアプリでは
商社マン、医師、パイロットと会った

最初の結婚は大企業の役員の息子を選んだ

次の結婚ではベンチャー経営者を選んだ

他人を愛したことはありませんでした。

いまの私は会社がつまらなそうな
サラリーマンの彼氏に休職と自分探しを勧めて
なんの肩書きもない
ニート状態に近い彼と入籍した

不思議なことに
なんでもない毎日がすごく楽しい
見切り品をスーパーで買って
薄い布団をしいて並んで寝て
料理する生活が眩しく見える
コンビニさえ車じゃないと行けないし
スタバもない毎日だ

今日のために捨てたものが沢山ある

港区のタワマンでの暮らし
ベッドは30万以上だった
毎週のようにウェスティンのバーで飲んだ
移動はいつもグリーン車やタクシーだった
指輪は200万を超えていた
子供ができたら私立小学校に入れようとした

幸せには値札がついているはずだったのに
それで幸せなはずだったのに
いつのまにか精神を病んで寝込んでいた

朝が来たら起き上がれる生活を
久しぶりに味わっている
マノロを脱いでスニーカーで歩いている
自分の足でちゃんと歩いている

知人の工房で作った
ささやかな指輪が
ハリーウィンストンより素敵だと思える

こんな世界を幸せに思える自分を
見つけられたことが嬉しい

贅沢を重ねても
私は決して幸せになれなかった

お金は大事だけれど
もちろん働いてはいるのだけれど

どうしても好きだと思えた
この気持ちは何だろう

愛が大事なんて使い古された台詞で
愛かお金かなんてどっちもほしい
みんなそうでしょう?

だけど何にもなくても
二人でいるだけで幸せだと言い切れる人に
値札はつけられない

他人に嘘をつかずに向き合うこと
ダメな私も、泣き虫も、寂しい本心も
そうさせてくれる相手が
私には必要で幸せだったらしい

隣でただ寝た日に頭を撫でられた
世界がすべて変わった気がした

「お父さん」そのとき優しかった父親を
思い出した。私の大好きだったお父さん。

ご飯の最後の一口を食べさせてくれるお父さん

喘息の発作のたびに
翌日が会社でも急患に車を走らせたお父さん

ディズニーランドで
ぬいぐるみを買ってくれたお父さん

アイスを食べる時は
母親に内緒で食べさせてくれたお父さん

ミスチルを歌う
音程がずれてばかりのお父さん

泣き顔なんて見たくなかったよ

連帯保証人になっても、騙されても
どんなに間違いを起こしても
パパのことを嫌いになんてなれない。

そんなこと本人に言わないから
素直じゃない私たちはこうやって生きていく

ごめんなさい、お父さん、お母さん
お金がなによりも
大事だって一万回は聞かされたのに
肩書きがなによりも
大事だって育てられたのに

私は、お金持ちになれませんでした
それどころかチャンスを自ら捨てました


だけど、好きな人を見つけました
だから許されなくても
好きな気持ちに世界一の値札をつけます

白紙の値札をつけます
誰にも買えないものだから。

私にとって本当に大事なのは
失いたくないものは
お金じゃありませんでした

ありきたりだけどきっとこれは
「愛してる」ってやつなんでしょう。

言葉にするのは怖いけれど、愛してる。

この記事が参加している募集

#お金について考える

38,069件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?