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麦のこと⑤

昨日の午後、
麦を庭に埋葬しました。

麦は日なたぼっこが好きだったから、うんとおひさまの当たるとこがいいね。 みんなからいつも見えるところにしよう。夫とそう話していました。

麦が昏睡状態に入りはじめた頃。
夫はひとり庭に出て行き、黙々とお墓の穴を掘っていました。

愛には、いろんな形があるんだ。
私とは違う夫の愛の表し方を、麦を看取る中でたくさん見た。

麦が旅立った翌朝は、穏やかに晴れて。
透明な冬の朝の光がやわらかく差し込んでいた。

こんな小春日和にお墓に入れてあげられて、ほんとうに良かったね。そう夫と話しながら、麦に触れていられる最後の時間を過ごしました。

午後になり、名残り惜しい気持ちを振り切るように庭に出て、たくさん積もっている落ち葉を掻き集める。乾いた冬のいい匂いがするやわらかい落ち葉を。

それを夫が掘ってくれた穴へと敷き詰め、ふかふかのベッドをしつらえた。

枯葉で覆ったうえに土をかける。
傍には、親友 K ちゃんちの花柚子から種を取って育てた小さな苗と、大切な方から引き継いだクリスマスローズの苗を植えた。

庭のある家、そこを終の住処にしたい。

私のその思いの中のひとつに、猫達の眠るお墓を庭にという願いありました。朝に夕に眺める庭の片隅に。

花が咲き、鳥が遊ぶ。湿った雨の匂い、虫達の声、枯葉の舞う様。移りゆく季節をずっと一緒に感じられる庭で。

ここに越してきて、ひと月と六日。

麦は旅立って行きました。私の願いを知っていて、待っていてくれたように思う。
それは麦が私にくれた、これまでのたくさんのたくさん愛の、最後の大きな愛だったように思う。

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