勤務最終日はとても気まずい

先日の金曜日、私は勤務最終日を迎えた。

朝、職場に着いてからずっと考えていたことはただひとつ。


「最後の挨拶、気まずいなあ」


私は今の現場に派遣されてからたったの3か月で退職を決めた。
理由はシンプル。今までの人生の中で過去一番に心が病んだからだ。

派遣SEという特性上、自分が一緒に働く人間は必ずしも自社の人間だけではない。派遣先の社員や他の派遣会社から来ているSEもたくさんいる。

他会社の人間が派遣されては去っていくようなそんな環境だからなのか、派遣先の会社が元々そうなのかは分からないが、今の派遣先は人間関係が希薄だ。

自分より1年も前からこの現場で働いている先輩SEですら、「〇〇さんは同じチームだけど、直接話したことが無い」とか言っているくらいだ。

当然ながら、たかが3ヵ月しか働いていなかった私は、職場の人とまともな会話を交わしてこなかった。唯一交わした会話といえば、ほんの1分ほど仕事の質問を自分からした時くらいだった。


そんな自分が勤務最終日に現場の責任者になんと挨拶をすればいいのか全く分からなかった。終業時間がやってきたら誰にも気付かれないように黙ってオフィスを抜け出したいのが本音だった。

しかし、実際は貸与品を返却したりそれなりに話しかけないといけないシチュエーションが待ち構えていることは分かっていた。

このまま奇跡が起きて、全員オフィスから出ていけばいいのにと考えていた時、終業時刻を知らせるチャイムが鳴った。

自分の仕事はとうに終わっている。辞めていく人間に新たに仕事を任せる人はいない。そう、すぐにでも帰れる状態だ。早く挨拶を済ませて帰りたかった。

重い腰を上げ、同じチームの責任者である何人かに直接挨拶しに行った。
静かな空気が流れるオフィスの中、その人の席まで近づいていき、短い期間となって申し訳なかったこととお世話になったことに対するお礼を伝えた。

その責任者からは、「次の現場でも頑張ってください」と、取ってつけたような言葉が返ってきた。当然、感情はこもっていない。

その後、もう2人ほど同じように挨拶をした。
一刻も早くこの場を去りたい気持ちでいっぱいだった私は、2人がどんな表情をしていたか覚えていない。

責任者たちへの挨拶がなんとか済み、そのまま帰ろうとした時。どこからともなくほとんど話したことのないおじ様が現れて、

「〇〇さんには挨拶した?あの人にも挨拶してもらっていいですか。」

と、言われた。

挨拶をしてほしいと言われたその相手こそ、一言も話した記憶が無い。
そもそもこの現場に来た時に挨拶もしていないし、仕事で1度も関わったことが無い。

ただ、その人はえらい役職の方なのだそうだ。

「えらいから、挨拶しろ」

平たく言えばそういうことなのだろう。

すぐにでもこの場から逃げ出したかったのに、最後の最後で1番気まずいタスクを課され、本当に消えてしまい気持ちだった。

全く納得がいかないまま、そのえらい人にも同じように挨拶をして「あぁ、はい、ありがとうございました」と、乾ききった返事をもらった。

そのあと、ようやくオフィスから無事去ることができた。

時間にすると15分も経っていないくらいだろうが、1秒1秒が地獄のように長く感じた。

オフィスビルを出ると、一気にどっと疲れがこみ上げた。正直、こんな思いはもう2度としたくない。

とはいえ、ここ最近の自分はあまり仕事が長く続いていない。
1年半くらいのスパンで転職を続けていて、その度にここまでではないが気まずい思いはしている。

それもこれも、自分が選んだ道なので文句は言えないのだが。
結局のところなるようにしかなっていない。


さて、これからどうやって生きていこう。

そんなことばかり考えている。
会社勤めをしても結局辞めてしまうのなら、会社にとって私を雇うことは不都合だろう。私もできれば迷惑はかけたくないので、就職しない方がお互いにとってwin-winなのではないかとすら思える。

じゃあ、一人でフリーランスとして働く?

でも、自分に何ができるのだろう。
いや、「できる・できない」の話ではない。
自由に暮らしたいのであれば頑張ってスキルを身に付けて1人でも食べていけるよう努力をすればいいのだ。

でも、その努力を怠っているのは自分自身。
自由に生きたいと言うわりに、そのための努力はしないのだ。

だから、結局どこかに就職して窮屈な思いをしながら働き、「自由に生きたいなぁ」なんて愚痴をこぼしながらまた働くのだろう。

実際、そうやって生きている方が楽なのだと思う。
自分で行動しなくても仕事がもらえるし、好きかどうかは置いておいてその仕事をこなせば食べていけるだけの給料がもらえる。

一方、自由に生きていくということは、全て自分でやらないといけないということだ。
難しい税金のこと、どうやって仕事を獲得すればいいのか考えること、スキルを身に付けること、そして何より行動に起こすこと。
誰も責任を取ってくれない。全てが自分次第。

そっちの方がよっぽど大変そうだ。

でも、その方が自分に後ろめたさを感じずに生きていけるだろうし、充実した人生になるのだろう。

仕事を辞めた今、考える時間はしばらくの間、ある。
今後、自分はどのようにして生きたいのか?

何かしらの答えに到達できればいいのだが。。





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