麦庵亭

翻訳とか書評とか

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iPadで絵を描いてみた その2

前回は無謀にも油絵機能をつかって、Adobe Frescoでヤドンを描いてみた。 今回は「スーラ」という気になるブラシがあったので、またもや無謀にもつかってみることにした。 スーラというのは、言うまでもなく、画家のジョルジュ・スーラのことだ。 細かな点の集積によって、えも言われぬ色と光の絵画世界をつくりあげた、あのひとのことだ。 なんか面白い情報はないかと、スーラについてちらっと調べてみたが、31歳という若さで亡くなったほかは、これといって特筆すべき人生のエピソードはない

    • ハルムス「出来事」

      ある日、オルロフはすりつぶしたエンドウ豆を食べすぎて死んでしまった。クルィロフはそれを聞いて、やはり死んでしまった。スピリドノフは自ら命を絶った。スピリドノフの妻は食器棚から落ちて、やはり死んでしまった。スピリドノフの子どもたちは池で溺れて死んだ。スピリドノフの祖母は飲んだくれてどこか路上へ消えた。ミハイロフは髪をとかすのをやめて皮膚病になった。クルグロフは鞭を手にした婦人を描いて、気がふれた。ペレフレストフは電信為替で400ルーブル手に入れたとひけらかして、仕事場から追い出

      • iPadで絵を描いてみた

        このコロナの煽りをくらって、在宅ワークするためにどうしてもiPadを買わざるを得なくなった。だが買ってみたものの、もっぱら仕事用のメールとかチャットとかちょろっと使うだけで、数万のスペックをいまいち使いこなしていない感が強い。 そこで、このiPadのポテンシャルを万分の一でも引き出すべく、四連休中おもむろにApp Storeにアクセスし、描画アプリをダウンロードしたのだった。 数あるお絵かきアプリのなかからAdobe Frescoを選んだが、とくに理由はなく、無料なのと、A

        • ハルムス「水色ノートNo.10」

          赤毛の男がいた。男には目も耳もなかった。髪もなかったから、赤毛の男とさえ言えないかもしれない。口もなかったので話すことができなかった。鼻だってなかった。 手も足もなかった。腹もなく背中もなく背骨もなく、内臓もこれっぽっちもなかった。なんにもなかった! だからそもそも誰の話をしていたのかよくわからない。 もうこの男について語るのはやめにしよう。 1937

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