KANETATAKI
皆さんは、聞いたことがあるだろうか。
カネタタキという名を。
カネタタキとは、バッタ目カネタタキ科に属する夜行性の昆虫。
そう、虫である。
あれは、数年前の秋。
まだ、カネタタキという存在も名前も知らなかったある夜のこと。我が家の台所で突然聞こえた。
「チッチッチッチッチッチッ」
その音は昼間は聞こえず、決まって夜に聞こえるようになったことで、家族内で小さなパニックになった。
父「報知器の故障かな?」
母「にしては、夜だけだし…」
なんて話していたある夜、悲劇は起きた。
父、報知器を確認しようとして椅子から転落した結果肋骨骨折の巻ー!!
入院は免れたものの、当時は東京ディズニー・リゾートへの旅行を控えていたので我が家は(特に父は)犯人探しに躍起になった。そして、我々はついにその存在を知ることとなる。
姉「むぎ」
私「ん?」
姉「あの音さ、もしかして虫の鳴き声じゃない?」
というわけで、検索開始。
【虫 鳴き声 チッチッ】
わずかな手掛かりで、探してみたところ、
『カネタタキの鳴き声』
というタイトルの動画を発見。再生してみたところ、流れてきたのは。
チッチッチッチッチッチッ
私「お姉ちゃん、もしかして」
姉「間違いない、こいつだ」
ウチにいるのは。
父の肋骨を折った犯人は。
KANETATAKI!!!!!
それからの数日は、鳴き声が聞こえれば姿が見当たらないかと各自が声がする方を睨みつけるが見当たらないという非常にヤキモキする日々を過ごしたのだが、あいつは突然姿を現した。
「チッチッチッチッチッチッ」
姉「相変わらず鳴いてるな、カネタタキ」
父「カネタタキって名前、ふざけてるだろ」
もはや悪口なので、全国にお住いの良識あるカネタタキの皆様に謝るべきであろうやり取りをしていたある夜。
母「ん…?」
相変わらずカネタタキが鳴く中晩ご飯を食べていた時、母が壁を指差したことにより、事態は一転した。
あれ、カネタタキじゃね?
そこには、小さい体ながら存在感ある声で、
「チッチッチッチッチッチッ」
と鳴くカネタタキの姿が。
カネタタキ「私をお呼びですか?」
母「むぎ、あんたの部屋からピアノの椅子取っといで!」
私「御意!」
全員が戦闘態勢を取る。晩ご飯なんて食べている場合じゃない。母がピアノの椅子に大量のティッシュペーパーを抱えて立ち、父が叫んだ。
父「かかれぇぇぇぇ!!」
たかが虫1匹。されど虫1匹。
こちとら夢の国への家族旅行を目前に父の肋骨を折られたのだ←
許すまじ、カネタタキめ!
母の一撃がヒットするも、油断した隙にカネタタキは床に落下。姉も私も苦手な虫相手に応戦するも、カネタタキはしつこい。すると、そこへ再び母が怒りの一撃。
怨み、晴らさでおくべきか!!!!
しんと静まり返る食卓。母が手にするティッシュペーパーには、息絶えたカネタタキ。その姿を確認するや、母は声高らかに叫んだ。
母「つんだ!!!!!!」
姉「大事なところで噛むなよ!!!!」
父「ちょwww肋骨に響くからwwwww」
緊張が一瞬で切れ、爆笑に包まれるとカネタタキは父にその息絶えた姿を確認された後、ゴミ箱に葬られた。
さよなら、カネタタキ。
あの日から、カネタタキが我が家にやって来たことはない。だが、季節が変わるたびに聞こえるあの忌まわしい鳴き声を忘れた日々はない。
ていうか、
【虫 鳴き声 チッチッ】
で検索結果が出るの天才か。
「カネタタキの鳴き声」
の撮影者の方、ありがとうございました。
ちなみに、父はその後、肋骨を骨折したにも関わらず矯正ベルトを巻いてディズニー・リゾートに行き、楽しいひと時を過ごしました。
よろしければ、お願いします。 お願いします!!(圧