『七月大歌舞伎 夜の部 吉原狐』の話
どうも、私です。
今日は、「念願が叶った話 後編」をします。
可愛すぎるやろーーーーー!!!!!
お付き合い下さい。
◆
前回、お知らせしたとおり夜の部は、『俊寛』のほかにもう1つ上演された。
それは、『吉原狐』だ。
中村米吉さんが、おきちを演じる。
姉「米吉さん、大抜擢ですよ!」
私「ユウナん!」
と演目と配役発表を目にした私達は、米吉さんの名前を見つけてウキウキとした。
だって、ユウナだよ?
見るしかないやん。
絶対に可愛いと約束された(?)米吉さんが楽しみで、私達はその時をじっと待った。
そして、幕が開くと、そこには「世を忍ぶ歌舞伎の姿をした吉本新喜劇(?)」が繰り広げられていた。
※ごめん下さい。ここからは、ネタバレになります。
それでもよかったら、ご覧下さい。
ありがとう。←
『吉原狐』
特技は早とちり
吉原仲之町。
貝塚采女(市川染五郎さん)が遠州屋半蔵(中村鴈治郎さん)の接待で、花魁・誰袖(片岡千壽さん)を従え、芸を眺めている。
その座敷の近くでは、誰袖と良い仲の越後屋孫之助(中村隼人さん)が嫉妬心むき出しで、彼らを見ている。
采女「いやぁ、楽しいね。美しい花魁と芸を眺めるなんてさ」
孫之助「殺したろか!!!!!」
小刀を手に襲い掛かろうとしたところに、芸者の小松屋・おえん(片岡孝太郎さん)が登場。
私「孝太郎さんや!」
と大向こうの中で、小声で叫んでしまった自分に、しまったと思いつつ、私は舞台を見つめた。
おえん「まあまあ、落ち着きなさいな」
と小刀を取り上げると、姿がない芸者の泉屋・おきち(中村米吉さん)の話をし始める。
おえん「あの子は、早とちりが凄いんですよ。〇〇のお座敷に行ってから、××のお座敷に行くって言っているのに、○○しか寄らずに帰っちゃったり。しかも、恋の仕方も変でね。ああ、こいつ駄目だなって男いるでしょう?そういうのが好きなんですよ。1度惚れたら、狐が憑いたみたいに惚れちゃって。だから、あだ名は『吉原狐』」
采女「何それ、ウケる」
等と話しているうちに、おきちが松葉屋の女将・お筆(中村扇雀さん)と共にやって来た。
おきち「ごめんなさい!早とちりして、別のお座敷に行っていました!」
と謝るおきち。その視線の先には、小刀を持ったおえん。
おきち「え、遅れただけで殺す感じ?」
おえん「違う、これはさっk……」
おきち「確かに私が悪いけど、殺さなくてもいいじゃない!」
おえん「だから違うって、言ってるでしょ!」
おきち「だったら、何で小刀を私に向けてるのよ!」
おえん「だから、あんたに向けてるわけじゃないってば!この昆布!」
おきち「は?昆布?」
おえん「あんたみたいな、ダメ男に引っかかる芸者は『吉原狐』なんて可愛いもんじゃなくて、狐の屁だって言ってんのよ!こ・ん・ぶ!こ・ん・ぶ!」
おきち「しばいたろか!!!!!」
おえん「しばいてみろや!昆布!!!!!」
半蔵「落ち着け、落ち着け!」
お筆「人の話を聞きなさい!」
客席は、開幕からずっと爆笑に包まれている。
姉と私も、腹を抱えて笑った。
結局、おきちの早とちりということで解決し、おえんも座敷を後にする。
すると采女に連れられて、座敷を出ようとした誰袖が、おきちに声を掛けた。
誰袖「年季が明けるから、近いうちに泉屋のお父さんに挨拶に行くね」
おきち「挨拶?」
誰袖「うん。女将さんと一緒に行くからね」
おきち「…うん、分かった!」
絶対、勘違いしてるやろ。おきち。
恋する父子
泉屋の主人であり、おきちの父・三五郎(松本幸四郎さん)は誰に対しても優しく接する男だが、悩みがあった。
仲働きをしているお杉(中村虎之介さん)と恋仲になったことだ。
しかも、お杉は、おきちと姉妹ほどの年の差しかない。
お杉「…やっぱりお暇をもらって、泉屋から出て行こうかと思います」
三五郎「いやいや、その必要はない」
お杉「旦那様は、私にはもったいない方です。それに……」
三五郎「…おきちか?」
お杉「…はい」
三五郎「分かるよ。あの子は、早とちりが凄いからな。でも、説明すれば納得してくれるよ」
お杉「…そうですかね?」
おきち「ただいまー!」
2人の心配をよそに、おきちが帰宅。
お杉に座敷を断らせに行かせると、三五郎に言った。
おきち「大丈夫。全部分かっているから、私に任せて」
三五郎「お前には迷惑をかけてすまないけど、全部分かっているから任せてって何の話……?」
おきち「再婚のことよ!だから、私に任せて!」
三五郎「…分かってくれているなら、任せるよ(絶対何かやらかすぞ」
采女「助けて!」
おきち「貝塚様!?」
やって来たのは、変装した采女。
三五郎「どうかしたんですか?」
采女「実は、公金を使いこんでしまって、手配書が出回っているんです。助けてくれるのは、おきちだけだと思ってここへ…」
そう言いながら、采女は髪をかき上げると同時に、効果音が鳴って、客席は大爆笑。
一方のおきちは、彼に恋をしたようだった。
おきち「よし!ここで、隠れていて下さい!」
采女「ありがとう!」
三五郎「(おきち、惚れたな……」
采女を匿い、しばらくすると、誰袖がお筆達を連れて挨拶にやって来た。
誰袖「泉屋のお父さんには、大変お世話になりました。ありがとうございました」
三五郎「こちらこそ、ありがとう。お疲れ様でした」
おきち「…え?」
誰袖「…え?」
おきち「どうして、お父さんの隣に座らないの?挨拶に来たんでしょう?」
誰袖「だから、お世話になった挨拶に来た……」
おきち「そっちかい!てっきり、お父さんと再婚するのかと……」
お筆「また、早とちりして……笑」
三五郎「そのことなんだけどさ、実は……」
このタイミングで、三五郎はお杉とのことを言おうとするが、なかなか言い出せない。
すると、
おきち「分かった!お杉!」
お杉「…はい」
おきち「あんた、私の腹違いの妹でしょう?」
三五郎「…え?」
お杉「…え?」
おきち「私、妹が欲しかったんだよね!!!!!」
三五郎「(面倒臭いことになったぞ。お杉、どう出る?」
心配そうに見つめる三五郎に気づきつつ、お杉は、おきちの手を取って言った。
お杉「お姉ちゃん!」
おきち「妹!」
三五郎「えーーーーー!!!!!」
誰袖「えーーーーー!!!!!」
お筆「えーーーーー!!!!!」
客席「えーーーーーwwwwwwwwww」
10日後
三五郎は、お杉をおきちの妹として扱うことにため息を漏らしていた。
三五郎「どうする?この状況」
お杉「このまま身を引いた方が、いいかと」
三五郎「えー……」
お杉「お気持ちは分かりますが、仕方ありません」
と話し合う2人。そこへ、相変わらず行方不明の采女を探す周囲の目を掻い潜り、お筆と泉屋に戻ったおきちが宣言した。
おきち「貝塚様とは、もう終わりです!ありがとうございました!」
そこへ、やって来たのが采女。
采女「やっぱり、おきちしか頼れない!助けて!」
おきち「無理。絶対無理。遊び方も下手だし」
采女「何だと……!」
刀を取り出す采女。毅然とした態度を見せるおきちを庇おうと、三五郎が立った。
三五郎「娘を斬るなら、私にして下さい!」
お杉「いいえ、妹の私にして下さい!」
采女「うるさい!」
采女に足蹴にされたお杉を心配して、三五郎が駆け寄る。
三五郎「お杉、怪我はないか?」
お杉「旦那様も、お怪我は?」
と互いを気遣う姿は、まるで恋人のように見える。
おきち「…え?」
困惑するおきちに、2人は言った。
お杉「お姉ちゃん、いいえ、おきちさん。私は、妹ではありません!」
三五郎「お杉は、私の再婚相手だ」
おきち「えーーーーー!!!!!」
三五郎「すまない。早く言い出せていたら、こんなことには」
お杉「私もです。ごめんなさい」
おきち「…でも」
三五郎「ん?」
おきち「妹じゃなくなるけど、お母さんにはなるのよね?」
三五郎「そうなるな」
おきち「やったー!お母さんって呼んでいい?」
お杉「…はい」
おきち「じゃあ、私のことはおきちさんじゃなくて、おきちって呼んで。お母さん」
お杉「…分かったよ、おきち」
おきち「お父さん、お母さん。おめでとうございます!」
お筆「おめでとうございます!」
三五郎「ありがとう!」
お杉「ありがとうございます!」
采女「無視するなーーーーー!!!!!」
完全に無視されている采女に、客席は爆笑に包まれた。
刀を振り回す采女に、三五郎は言った。
三五郎「貝塚様、無視をしたのは謝ります。しかし、私を見て下さい。私は、ご覧の通りの有様です。娘に、迷惑ばかり掛けて生きてきました。娘が芸者になると言ったのも、私がしっかりしていなかったからなんです」
おきち「お父さん……」
三五郎「貝塚様。今のままだと、あなたはきっと、私のような世間を捨てた男として生きていくことになる。私は、未来のあなたでもあるんです。どうぞ、この顔をじっくりと見て下さい」
采女はその言葉に、刀を鞘に戻し、その場を後にした。
おきち「お父さん、お母さん。改めて、おめでとうございます!」
三五郎「ありがとう、おきち」
お杉「ありがとう」
おきち「お父さん、朝湯に行こう!」
三五郎「ああ、そうしよう!」
朝湯に出かける2人。
そこへ、ボロボロになった孫之助が現れる。
おきち「越後屋の若旦那様、どうなさったんですか?」
孫之助「ああ、おきち……。店が潰れてしまってね、もうここにも来られないから散歩に来たんだよ」
そう言って、立ち去る孫之助は例の効果音付きで髪をかき上げる。
おきちが彼を見送る姿に、三五郎が慌てて声を掛ける。
三五郎「おきち、お前……」
おきち「お父さんったら。もう、男は懲り懲りだよ」
と笑い、2人は狐雨の中、朝湯へと出かけて行った。
終演後。
姉「米吉さんが、可愛すぎる!!!!!」
私「染五郎さんも隼人さんも、格好良すぎる!!!!!」
姉「幸四郎さんの色気がヤバい!!!!!」
私「それな!!!!!」
あ、と私は、やらかしたことを思い出した。
姉「どした?」
私「三五郎とお杉が、花道から出てくる場面あったでしょ?」
姉「妹の振りしてたときね」
私「あのとき、幸四郎さんとガツガツに目合ったんだけどさ」
姉「うん」
私「私、あの顔して、幸四郎さんのこと見ちゃった……」
姉「あーあ。笑」
あの顔とは、作業中など何かしら集中しているときにやってしまう顔のことで、片側の上唇と下唇を挟み込むようにして噛むというアホ丸出しの顔なのだ。
やらないように気を付けていても、気を抜くと出てしまう。
私はその顔を、幸四郎さんの放つ圧倒的色気の前で披露してしまったのだ。
私「最悪……。幸四郎さんに変な子がいたって思われてる……」
姉「大丈夫、幸四郎さんは気にしていないよ」
私「えーん」
人は、地味なダメージを負うと「えーん」と言うらしい(私調べ)。
姉「そんなことより、今日はいい夜だよ」
私「そうだね。仁左衛門さんも見られたし」
姉「仁左衛門様♡」
私「乙女なんよ」
姉は頭を抱え、深くため息を吐くと、言った。
今日の出来事って、壮大な夢だと思う(?)
夢だね(?)
よろしければ、お願いします。 お願いします!!(圧