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1.嫌い

夏になると眠れなくなる
蒸し暑さと溢れでる汗
濡れたTシャツ、虫の音

扇風機をつけたところで
生温い風が吹くだけで
窓を全開にしたところで
微弱な生温い風が吹いてくるだけ

暑さと虫の音を諦めて
濡れたTシャツを脱いで
ベッドに横になる

目を瞑る

眠れなくなる一番の理由が
目を瞑った時にある

彼女との思い出が蘇ること

夏休みの始まりから
終わりまで毎日一緒にいた
あの彼女のことを
思い出してしまう

ただの思い出であったなら
楽しくも哀しくも
ただの思い出であったのなら
こんな想いをしないで
済んだのかもしれない

ありがとうの意味を教えてくれたなら
さようならと告げてくれたなら
もう会えないと言ってくれたなら

全ての理由を教えてくれたなら…

俺はまだ小学校を卒業したばかりの
餓鬼だった
理解するためには砕けた言葉を
使ってくれなければ分からなかった
何かを察するには人生の
経験値というものはなかった

そんなことを考えて悔やんで
苦しんで俺は眠れなくなる

夏は嫌いだ
夏休みなんて嫌いだ

君なんて嫌いだ







…嘘。




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