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ゲームクリエイターの12歩目

ダークブラッドができるまで(その1)

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ゲームを作ろうとするとき、一番最初に頭に浮かぶのは「何のジャンルを作るか」という課題ではないかと思います。
よく売れているジャンルを作るのが正解だ。という意見もあるでしょうが、それは相当センスがいい(勘がいい)人じゃないと、売れるゲームにはならないと思います。なぜならそのジャンルに詳しくなければ、作ったゲームが果たして面白いのかどうかを自分では判断できないからです。(例えば魚嫌いの人が寿司職人になってもきっと成功しない)

私は作るなら自分の好きなジャンルを作るべきだと思います。なぜなら、そのジャンルの一番面白い要素を知っているからです。シューティングゲームなら弾幕を華麗にかわした時の爽快感、対戦格闘ゲームならコンボを決めて圧勝した時の優越感、シミュレーションゲームなら劣勢をひっくり返した時の達成感など。

そして同時にそのジャンルの絶対にやってはいけない部分も知っています。シューティングゲームだったら弾の当たり判定が厳しすぎるとか、対戦格闘ゲームならハメ技が存在するとか、シミュレーションゲームだったら敵の兵士が無限増殖するなど、そのゲームの一番面白い部分を殺してしまう「禁じ手」がわかっているから、ユーザーが興醒めするような裏切りも減ります。

私は小学生の時にドラクエにどハマりし、そこからテーブルトークRPGや海外のクセのあるRPGを嗜んだ経歴を持っていて、いつか自分もRPG を作りたいと思っていました。
でもRPGというジャンルはとても奥が深くて裾野も広い。ドラクエのような王道のRPGもあれば、聖剣伝説やゼルダのようなアクションRPGや、タクティクスオウガのようなシミュレーションRPGもあります。

そんな数あるRPGの中で作ろうと思ったのは、ハックアンドスラッシュ RPGでした。ハックアンドスラッシュ(ハクスラ)とは、ひたすら敵を倒してキャラクターを強くしていくことに重きを置いたゲームのことです。 代表的なものとしてはディアブロやGod of War、実はパズドラや聖剣伝説なんかもそうです。
では、なぜハクスラを作ることにしたのか、それは次のような理由がありました。

1)ストーリーがさほど重要じゃない
ハクスラは基本的にストーリーを楽しむよりも、敵を倒すことの爽快感や、キャラクターを強くすることに楽しさを見出すので、ストーリーをそこまで作り込む必要がありません。
例えば、ドラクエやFFのようなゲームは、登場人物の背景や世界観にスポットライトが当てられるのでセリフも大量に用意する必要があり、1冊の小説を書くくらいの労力が必要になります。
一方、ハクスラの場合、登場人物が全く喋らなくてもゲームが成立します。そのおかげで会話テキストを用意しなくてもよく、ローカライズで多言語対応にするときに大変楽です。

2)舞台が壮大じゃなくていい
普通のRPGだと幾つもの街やお城、ダンジョンなどが登場します。なぜならあたらしい世界へ進んでいくことこそが冒険の醍醐味だからです。でも小説であれば「賑やかな街」と一言で片付きますが、ゲームだとそうはいきません。登場する街ごとにマップを作り、脇役の住人を配置し、当然全員に会話を作ってあげなければならないからです。
RPGツクールでゲームを作るなら、むしろそれが一番作っていて楽しい部分なのですが、用意された素材を組み合わせるのとゼロから作るのとでは天と地ほどの労力の差があります。個人でゼロから作るとすれば、街を1つ作るだけで数十時間はかかることが想像されます。
一方、ハクスラの場合、舞台は1つのダンジョンだけで済みます。新たな世界を開拓するというより、強い敵やお宝を求めてより深くまで進んでいくのがハクスラの醍醐味だからです。

3)いつでも気軽に遊べる
実は、これがハクスラを選んだ1番の理由です。
通常のRPGの場合、目的はゲームをクリアすることです。なのでみんなクリアを目指してコツコツ頑張るわけですが、最近のゲームはクリアまでに100時間以上かかるものも珍しくなく、キリがいい止め時がなかったりで1プレイの時間がかかるため、途中で挫折するユーザーも多いです。(歳をとるほどに折れやすくなる)
一方、ハクスラは先ほど述べたように、ストーリー進行や次々と現れる施設もあるわけではないので中断しやすく、再開しても「どこまでストーリーが進んでたっけ?」といったことがないため、いつでも気軽に遊べます。

この「いつでも気軽に遊べる」という要素が実はスマホゲームで一番重要な要素だと思います。
コンシューマーの売り切りゲームソフトの場合、ゲームが売れた時点で利益になりますから途中で挫折されても問題はありません(レビュー評価は下がるかもしれませんが)
しかしスマートフォン向けの無料アプリの場合、広告収入やゲーム内課金が主な収益なので、離脱された時点でそこからの利益はゼロになります。なので、気軽に手に取ってもらえて毎日飽きずに遊んでもらう仕組みこそが最も重要となります。

インディゲームは差別化が大切

僕が長年温めていたハクスラゲームのアイデアは、ダンジョンを突き進んで現れる敵を倒していく、というシンプルなものでした。
ただそれだけではユーザーにすぐに飽きられてしまうのは目に見えていたので、肝心の戦闘は特徴のあるシステムにしたいと考えていました。
実際、私が作っているような少人数で開発されるゲームは俗に「インディーゲーム」などと呼ばれますが、同じような規模のインディゲームは毎日何十本とリリースされていて、特にRPGは人気のジャンルなので、普通の RPGと同じような見た目ではダウンロードもされず、すぐに埋もれていってしまうのです

そこで考えたのがポーカーのようなカードを使って戦うというシステム。ツーカードやフルハウスなどの役を作って敵にダメージを与えて倒していくというイメージです。
ですが、実はポーカーというゲームはそこまで周知されたものではないようで、小中学生の子供にも聞きましたが、大富豪ほどの知名度はないようでした。

であれば、自分でわかりやすいルールを作るしかない。そこで作ったルールが次のようなものでした。

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それは手持ちのカードを合成して強くしていくというルールです。
カードを使ったRPGというのは結構人気があり、中でも有名な「slay the spire」に代表されるような、何十種類もあるカードを組み合わせてカードデッキを作る「デッキ構築型RPG」が大半でした。
でもこのシステムは、奥が深い代わりに敷居が高い。おそらく遊戯王のようなカードゲームを遊んだ人ならすぐに慣れるかもですが、ライトユーザーには向かないのではないかと思います。
なので、私が考えたシステムでは、カードの種類は「物理攻撃」「魔法攻撃」「回復」「防御」のみとしました。(リリース当初は物理攻撃も3パターンに分かれていたが、デメリットも多かったのでのちに変更)

実際にリリースしてわかったのですが、デッキ構築型カードゲームを知らないようなライトユーザーがたくさん遊んでくれていました。一方で「slay the spire」のようなものを想像していた人にとってはやや物足りなかったようです。でもそれは私の考えた思惑通りだったといえます。

そして制作へ...

一番最初に、自分が好きなジャンルを作るべきだ!と書きましたが、実はデメリットもあります。
それはそのジャンルを好きすぎるがゆえに一般ユーザーが求めていないところにこだわりすぎて、無意識のうちに敷居を高くしてしまうという危険性です。
それを防ぐには客観的な視点を持つことが大事なのですが、自分の作っているモノこそ至高だと思うのがクリエイターの性。
なので、お勧めはそのジャンルについて造詣が深い人とチームを組むことです。
私はゲームの企画や仕様(骨組み)を作ることはできますが、プログラムやグラフィック、音楽などについては人の力を借りるしかありません。そのうちの誰かがRPG への愛があり知識も豊富であれば、客観的な視点で私のアイデアにダメ出しをしてくれるのではないかと思ったのです。

そこでこのハクスラ RPGを作るにあたって、まずはRPG への造詣が深く、私が持っていない技能を持つ人材を探すことにしたのでした(続く)


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