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ゲームクリエイターへの第一歩

「そうだ、ゲームを作ろう」

そう思い立ったのは今から約4年前、私が39歳の時でした。

その頃の私は新築住宅やリノベーションの施工管理を行う建築士でした。大学を卒業して約15年間、建築業界で幾度かの転職を経て、ようやく35才にして設計事務所(個人)を開設していました。

独立という夢もやっと叶え、忙しくもやりがいのある日々でしたが、ずっと昔からあった心の奥底に溜った欲求を満たせずにいました。それは

『自分のオリジナルゲームを作りたい』

という子供の頃からの願望でした。

話は30年ほど前に遡りますが、私がゲームにハマったのは小学生3年生の時にお年玉を貯めてファミコンを購入したのがきっかけでした。

と言っても、私がハマったのはプレイする側よりもゲームを考える側。ゲームをしながら、僕ならこうするとかこう改造したらもっと面白くなるのに、というのを考えるのが楽しくて、「僕が考えた〇〇」みたいなイラストや文章を殴り書きした空想メモをノートに書き留めていくようになりました。

やがて書き溜めていくだけでは満足できなくなり、方眼ノートに描いた自作のすごろくゲームを学校に持っていって友達にプレイしてもらうのが日課になっていきました。サイコロで駒を進めてモンスターを倒していくRPGから、野球チームを編成して甲子園を勝ち抜いてスポーツもの、架空の国の三国志のような戦国シミュレーションなどなど、毎月1つは新作を考案して学校に持って行っていた記憶があります。

そんな感じで自作のゲームで人を楽しませることに喜びを覚えるようになった私はいつしか、大人になったらゲーム会社に就職したいな、と考えるようになりました。そこで貯めていたおこずかいで『ファミリーベーシック』なるプログラミングを楽しく学べるツールを買いました。でも、プログラム初心者の私には到底扱える代物ではなく、結局マリオを左右に動かす事くらいしかできず挫折してしまいました。

そのような苦い経験からいつしか、ゲームを作れる人=プログラミングに精通している凄い人、というイメージが強く芽生え、技量も知識もない自分がテレビゲームを作るなんて到底無理だと悟ったのでした。ゲーム業界は自分には手が届かない世界、と完全に諦めていた私はカーデザイナーを目指すことにしました。そして九州芸術工科大学という学校のゲームと全然関係のない工業設計学科に進学しました。

それでもオリジナルゲームを空想するという隠れ趣味はやめることはできず、空想ノートはどんどん溜まっていきました。ちなみに誰かにアイデアを見てもらいたいという承認欲求が溢れすぎて、大学生時代に有名落ちゲーを作っていた某ゲームメーカーに商店経営シミュレーションの企画書を送りつけるという暴挙に出たのはここだけのお話。(クオータービューの最近よくあるショップ経営のやつでしたが当時はそういうゲームはまだなかった。多分)

結婚して子供も生まれ独立してからも空想ノートは書き続けました。そんなある日、一つのオリジナルゲームを考案しました。それは自分の駒で相手の駒を挟んでその駒をはじき出し、自分のキングを盤の中央に置いたら勝ちという単純なルールのボードゲームでした。

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これはきっとオセロや将棋のようなスタンダードなゲームになる!

などと根拠のない自信を持った私はゲームのサンプルを作成し、実際に自分がプレイしている画像とルールを企画書にまとめ、ボードゲームを販売している会社に自信満々の文章とともにメールを送りました。

ですが返事が返ってきたのは1社のみ。その返信内容も次のようなものでした。

『このたびはお問い合わせありがとうございました。
今回お寄せいただいたご相談の件ですが、残念ながら現時点ではご協力申し上げることは難しいかと思われます。
と申しますのも、ゲームの持ち込みを希望される方は非常に多いこともあり、すでにゲームを(同人印刷などを利用して)ご自身で印刷なさり、イベント等で販売実績のある方か、あるいは弊社関係者からの紹介のある方をのぞき、ゲームの持ち込みについて、事実上受け付けていないのが現状なのです。
いただいた文面から察しますに、このたびご相談いただいたゲームは、アイデア段階のものと思われますので、申し訳ありませんが、そういう段階でゲームを拝見して意見させていただくことは差し控えさせていただきたいと存じます。
弊社は継続的にアナログゲームの製品化を行っております。
 そのため、持ち込みのアイデアが商品化されなかった場合(そして残念ながら、これまでの経験上、持ち込みゲームが製品化されたことは一度もありません)、弊社がのちに製作したゲームをご覧になって、「俺のアイデアが盗まれた」とクレームをつけられてしまうというリスクを常に抱えております。過去には実際にそのようなことも何度かございました。
 そのため、弊社としましては、すでに商品という形になり、販売実績のあるゲームについて、こちらから申し出て版権を譲っていただいて(場合によっては形を変え)製造し、版権料をお支払いする、という形でしか、外部の企画を製品化することを考えておりません。もっとも、弊社と深いおつきあいのある方からのご紹介でしたら、そうしたリスクはないと考えますので、そうした方のご紹介がある場合は、拝見することもできます』(原文ママ)

つまり、あなたの頭の中で考えただけのアイデアをゲームメーカーが検討することはまず無いです。ということですね。当然といえば当然の反応です。

普通の人ならそこで諦めるのでしょうが、その時の私は根拠のない自信に溢れていましたので「つまり既成事実となる現物があって、本人以外の人間に認知されていれば検討してくれるのだな」と無理やりポジティブに理解しました。

じゃあ現物のゲームを作ってやろうじゃないか!

と思い立ったのが、ゲームクリエイターを目指す第一歩になったのでした。

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