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福岡インディーゲーム協会を立ち上げた話

2022年3月、私は福岡インディーゲーム協会を立ち上げました。
ありがたいことに多くの方に応援していただき、昨年は5月に福岡インディゲームサミット、12月に福岡インディーゲームエキスポを開催できたのですが、今も「協会ってどういう組織なの?」という疑問を持っている人も多く、中には私利私欲のために協会を作ったのではないか、という疑念を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで協会を立ち上げた経緯や今後の目標を書いてみようと思いました。

インディーゲーム発展途上の街「福岡」

福岡は5大ドームツアー(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)のように、比較的大きなイベントやコンサートなどは開催されるのですが、ゲーム関連のイベントが福岡で開催されることは少なく、特にインディーゲームに関しては関西より西の地域で開催されることはまずありませんでした。つまり福岡はインディーゲームにおいては、まだ発展途上の街なのが現状なのです。
東京や関西では面白そうなインディゲームイベントが開催されているのに、西日本に住む人たちが参加できるイベントがないのは寂しい!という思いからこんなツイートをしました。

そして、その日のうちに協会のアカウントを立ち上げ、ここから協会の活動がスタートしたのでした。

 以前は福岡のインディーゲーム開発者たちに声をかけて、定期的に飲み会などを開催して交流ができていたのですが、コロナ禍で交流が全く無くなりせっかくの盛り上がりがリセットされた感がありました。
またみんなで集まりたい、そして福岡を盛り上げたい、という気持ちがずっとあったので、後先を考えずこのような行動に出たのだと思います。

 今思えば、40歳まで建築の仕事をしていてゲーム会社に勤務した経験もなく、業界に何のコネクションもない無名の私が、このような協会を立ち上げるなど無謀だったかもしれません。でも逆に業界との繋がりがあると、お世話になった会社に利益をもたらすような既得権益の組織と思われてしまうので、むしろ無名で良かったと今は思います。

福岡インディーゲームサミット開催!

 協会を立ち上げたことへの反響は思ったよりも大きく、福岡だけでなく全国のインディーゲーム開発者からフォローをしていただくことになりました。
そして協会発足から間も無くしてIndie Games Japanさんから、5月にインディーゲームのイベントを開催する計画があるので一緒にやりませんか、とのお誘いをいただきました。それはあまりにもベストなタイミングで、熱意が冷めやらぬ状態でインディーゲームサミットを開催できたのは幸運でした。

 このイベントに際しては、インディーゲームの紹介を手がけてきたIndie Games Japanさんと、そのタイミングで理事として協会の運営に加わった吉武さん(Qmax代表)のネットワークで、国内外の有名開発者のインタビューを取り付けることができ、大盛況のうちに幕を閉じることができました。
 また、インディーゲーム開発を続けていくためには、マネジメントに関するビジネスの知識もつける必要があると感じていたので、福岡大学商学部の篠原准教授(MaCOP)にお声をかけたのもこのタイミングでした。

そして福岡IGE開催へ

 福岡インディーゲームサミットを開催したことで協会のことを知る方も増えて、この頃から福岡市からもお声をかけていただけるようになりました。途方もない夢のように思えていた、イベントの開催がようやく現実味を帯びてきたのです。
 福岡でもインディーゲームに追い風が吹き始めたと感じた私たちは、出来るだけ間隔を空けずにイベントを開催しようと思いました。今の熱量をそのままイベントまで持っていきたかったのです。そこでまずは会場を押さえることにしました。
 最初は堅実にコンパクトな会場を借りようと思っていたのですが、市内のいろんな施設を見て回るうちに夢がどんどん膨らんでいき最後には、やっぱり記念すべき最初のイベントだから特別な場所でやりたいよね!と協会内の意見も一致して「福岡国際会議場」を借りることに決定しました。
(ちなみに国際的なイベントも開催される福岡市民なら誰もが知っている施設ですが案外高くなくて、他の会場よりむしろ安かったくらいです)

 とはいえ、イベントを開催するには当然資金が必要になります。会場の使用料に加えて、備品購入や広告宣伝、人件費などを考慮すると、私たちのポケットマネーでなんとか出来る規模ではありません。
 やはりイベント開催にはスポンサーを探さなければ厳しいと感じた私たちは、イベント開催まで半年を切った段階でようやくスポンサー集めを開始しました。

 イベントの出展者は応募して間も無くして定員となる30組の募集がありましたが、出展料は5500円と抑えた金額設定でしたし、入場料も800円(しかも中学生以下は無料)という設定したので、想定していた200名の来場があったとしても、運営費には到底足りない計算でした。
 開催まで2ヶ月を切った頃、集英社ゲームクリエイターズCAMPさんがイベントに協賛していただけることとなり、その頃から協会の知名度も徐々に上がってきましたが、まだ一度も開催したことがないイベントのためにお金を出してくれる会社など、そうそういる訳はありません。

 そこで私たちは、あるイベントに最後のチャンスを賭けることにしました。それはCEDEC + KYUSYU2022。コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が主催しているCEDECの九州バージョンで、福岡のゲーム会社が中心となって運営しているイベントです。そして幸いなことに協会もCEDEC + KYUSYU2022で登壇させていただけることとなったのです。

 CEDECではゲーム界の著名人たちが基調講演を行うので、九州のみならず全国から講演を聴くために福岡にやってきます。そしてたくさんの協賛企業が会場に出展しているので、スポンサーのお願いをするにはまさに最適の場でした。
 結論から言うと、このCEDEC + KYUSYU2022を通じてたくさんの企業と交流することができました。そして敢えて名前は控えますが、福岡のとあるゲーム会社さんの援護射撃もあったおかげで、10社近い協賛をいただくことができました。あの時は本当にお世話になりました。

 エキスポの詳細は公式サイトをご覧いただきたいと思いますが、全国各地から約350名の来場があり、約30組の出展者も全員無事にゲームを展示できて、会場も大変盛り上がりました。
そしてスポンサーの方々の支援のおかげで、イベント収支もなんとか赤字にならずに済んだのでした。

協会がこれからやりたいこと

 とりあえず協会立ち上げの目標として掲げていた、ゲーム展示イベントの開催は実現できました。そしてイベント開催までの動きの中で感じたのは、福岡だけでなく全国のゲーム関係者から、インディーゲームの存在が注目されていると言うことでした。
 私のようにただの趣味からゲームを作り始め、それが仕事になっていくという人は今後増えていくと思います。そしてインディーゲームの注目度はますます上がっていくでしょう。なぜならインディーゲーム開発は、組織に縛られず好きなことを追求していくという、これからの生き方にマッチしているからです。
 閉塞感すらある今の日本が復活するには地方創生が必要だと叫ばれて随分経ちますが、道半ばどころかまだその糸口も掴めていないのが現状です。それは単純に地方には働く場所が少ないからです。地方にいる多くの若者が、東京や大阪に行かなければ夢を叶えられないと思っているからに他なりません。
 ですが、場所を選ばず個人が世界に配信ができるインディーゲームなら、地方から誰でもスタートできますし、もし世界的なゲームが地方の開発者の手から生まれたなら、その地方を支える一つの産業になる可能性だってあります。

 カナダのモントリオールは、北米のゲーム開発の首都と呼ばれるほどゲーム開発が盛んな都市ですが、元々IT企業が拠点を構えていたのではありません。製造業などの既存産業の低迷と失業率の増加に悩まされていた行政が、企業や教育機関と手を組み、ゲーム産業が成長しやすい地盤を形成してき他のです。ゲームをただの遊びのコンテンツとしてではなく、一つの産業として捉えていたからこそできたことだと言えます。それに比べ、いまだに日本の行政はゲーム産業を製造業などの下に位置するものとみなすことが多く、モノづくり=製造業、と言う思考から抜け出せないでいます。

 その点、福岡はゲーム産業に可能性を見出し、早くから福岡ゲーム産業振興機構を立ち上げました。また、福岡はアジアの玄関口として古くから交易都市として栄え、その文化はいまだに根強く残っています。新しいことにチャレンジすることに躊躇がなく、出身や年齢を気にせず誰とでも関わり合おうとする県民性は、国際都市にふさわしい土壌を形成しています。
 だからこそ、新しいカルチャーであるインディーゲームが、地方都市である福岡で発展する可能性があると思います。そして協会も福岡のインディーゲームを盛り上げるために、これからいろんなことにチャレンジしていくつもりです。

今後の予定


 まずは4月29日に開発者ミーティングを開催します。これはインディーゲーム開発に関わる人の勉強会であり、また同じステージで頑張っている人たちの交流会として、定期的に開催していきたいと思っています。
これはインディーゲーム開発者のレベルを底上げして、クオリティの高い作品を生み出せる環境を作っていくことが狙いです。福岡からスター性のあるインディーゲーム開発者が多く生み出されることを願っています。

 そして第2回の福岡インディゲームエキスポ。開催日と会場はまだ未定ですが、前回よりも大きな会場でもっと多くの開発者に出展してもらえるように準備していきます。前回は開催までの期間が短く、スポンサー集めに苦労しましたが、今回は準備期間を十分確保して、出展者やスポンサーの意見も取り入れていけばきっと魅力的なイベントになるでしょう。

 福岡がインディーゲームで盛り上がれば、きっと他の地方でも福岡に続けとばかりに、インディーゲーム支援の波が起きるはずです。その波は一過性のものではなく、いつか日本全体を巻き込むような大きなムーブメントになっていくことでしょう。

 福岡インディーゲーム協会は、インディーゲーム開発者の支援と福岡をゲーム開発の首都にするため、私利私欲を一切持たずこれからも活動をしていきます。
どうかご理解とご支援のほど、よろしくお願いします!


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