入室と退室(5)

 優楽に滞在していると、気がつくのが、「気さく&話しかける」人が多いということ。私も、「こんにちはー」と気軽に、そして積極的に挨拶するように心がけています。そして、そうすることにより、相手からも「こんにちはー」「元気やねー」とレスポンスが返ってくるようになるのです。

 いつぞやも、席を立とうとしている、車椅子姿の初老の女性が、通路が狭くて身動きできないということがありました。そこで、「大丈夫ですか?」と声をかけて身動きできるように四苦八苦したことがありました。翌日、その方が、「こないだはどうもありがとうございました」とお礼を言ってくださったのが、忘れられない思い出です。「これからも困ったことがあったら、気軽に声をかけてくださいねー」とか言いながら、それからその女性とも親密になったのです。また、朝食後に散歩していて、9時を過ぎると、新しい新聞が届ているのに気づきました。8時半頃、新聞が来ていないか確認していると、やはり初老の女性(やはり車椅子を使った足の不自由な方でした)が、「朝刊はまだ来てないよー。スタッフさんが届いてから並べるから、もうちょっとしたらやと思うけど…」と声をかけてくださったのです。それ以降も、「朝刊来たけど、読む?」とか気軽に声をかけてくださって、とても温かい気分になれました。不思議なもので、こうやって知り合いが少しずつ増えてくると、知り合いの知り合いを紹介してくださったりして、「拡げよう!友達の輪!」が、現実に広がっていくのです。まさに好循環です。

 会話して気づくことは、女性の友だちが、「男性の方は、自分から話しかけんし。無口やから……」とよくおっしゃっていたことです。そういわれれば、たしかに男の人が気さくに話しかけることは珍しい。無口に黙っていることが多いのです。初対面の人と向かいあいに座っていようものなら、間が悪いのか、目を閉じて眠ったふりをしたりすることが多いのです。これではもったいない。笑って話をすれば、だれでも明るい気分になるもの。

 私などは脳梗塞で、他人の話を延々聴き続けると、それが大変になってしまい、(早く終わらないかな…)と思ってしまいます。簡単なあいづちを打って、「そうですね。はい……はい……へぇー……そうですね……なるほど……はい……」と繰り返しながら、話が終わるのを待っています。しかし、それは極端にしても、短い会話であれば、ウキウキ楽しい気分になるはず。ちょっと勇気を出して、ひとこと声をかけてみてはどうでしょうか。たったこれだけのことで、老いるのが遅くなるんじゃないかと思うのです。


 

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