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プロメティウス4 (邂逅・タイムリリース)仮題  R18 2140文字

広い雲海の中、光輝く風の吹く中、少女はただ聞いていた 


最初、人間と姿形が同じ天使のように見ていたのが不思議に思う。光や風、雲が流れる一部と話ているのではと。天使の姿形に色が付けられ見えているだけではと

声がするから声で、話の内容で、天使の姿を形を思って、見えてしまうのではと


「今、会社迄の道のりを項垂うなだれ、具合の悪い人のように歩いている貴女の父親ですが」


天使は、少女の目線を地上にいる父親に視線を移すように、下を見た


「はい?」なにか?と、言うような天使の聞き方に、少女は返事をした


「思い出しませんか?」

「?」
そう言われ、天使と父親を交互に何回も見る少女は、捉えどころの無い天使に、困惑していた


「舌を垂らし野卑た目で、貴女の顔を見ていたインキュバスを思い出しませんか?
頭部に角、背中にコウモリの翼、尻に鏃のようなスペード型の先端を持つ尻尾がある姿を
信じられませんか?
父親と手を繋いで一緒に歩いていた時
一瞬にして現れた無数の記憶の数々」


思い出しませんか?と
父親以外の事もと、問うような天使の青い瞳
青い空に流れている風のある景色しか見えてないように思った

天使の姿を透して青い空を見ているようだった
少女は、手足が中学生位の大きさになってるのに気がついた。天使に聞こうと顔を合わせると天使は、続きを続けるように喋る。音楽のように



「記憶の中に埋没していた父親の行動で、貴女が不自然に思った映像の羅列

父親が自分に過剰すぎる程に、甘やかす行動
喜ばしくも、苦笑いする母親の顔
貴女を、洋服で小物で飾り立てる父親
お願いすれば、魔法少女やキャラの服やグッズ等は大概は買って貰え、同い年の子よりもオシャレな物も持たせてくれる

お姫様のドレスに
甘いケーキやお菓子は、いつもセット

インスタ映えする写真は数々あっても、ネットやFacebookにUPしない父親
母親でさえ、これ位いいじゃないと言ってもUPしない父親
今迄、何十回何百回も転生し繰り返し自殺する迄の人生の映像は、倍速やスローモーション。焦点を合わせば、普通のムービーの速度で見える映像

あの一瞬、百年の時間のように感じたはずです

映像の数々は、父親の行動で疑問に思ったもの
貴女が自殺後、父親が自殺する迄の映像が一番ショックでした

ですが、その映像が貴女が父親を調べる一番の手助けになりました

父親が、隠していた日記に書物
パソコンのパスワードも簡単、どのフォルダを見ればよいかは、前世の記憶で知っている

あの一瞬で見た映像の中に、答えがあった
巻き戻してみたいと思えば、視覚に映った映像を貴女は難なく思い出せた

パスワードは、あっていた
日記も書物も、映像通りの所にあった
どれも、見た映像と内容は変わりなかった
全てが前世と同じ場所に、同じパスワード
何度転生しても、日記も書物もパスワードを変える事の無い夢魔

狂ったレコードのようと、思いませんか?」


不意に言われ、言葉が出ないでいた
確かに不思議に思うけれど
天使の姿は見えているのに、空の雲しか見えていない、この気持ち


「悪魔は、孤独です
父親はネットで、娘の事への妄想を書き連ねる事もなく、同じ嗜好を持つ者との交流もなかった。ただ、ネット映像を漁るのみ
娘と儀式ができる
儀式に近い、似てる、そっくりな映像のスクショや動画の数々

今生の貴女の記憶、前世の記憶
その前の前世の記憶
今迄の転生分の記憶が、自分の死後の父親の行動が一気に貴女に降り注いだ、あの瞬間どうでした」後半、小さな子供に語りかけるように天使は、私に言った


超越している者から、尋ねられるこの気持
そもそも、自分が何十回何百回と同じ時間を転生してる事をあの一瞬で理解したのが、今こんなに動揺し揺らいでいるのかがわからないし、
四方八方から、ぐるぐると聴こえる天使の声に
何かが、しがみついている感覚が出てくる感じに


私は、両手で頭を押さえていた
一瞬、自分がこの雲から、頭から下に落ちたと思った
思った、だけで自分は普通に雲の上に立っていて、両手で頭のサイドを押さえていた
目眩がするようなこの感覚の中、自分の目に映るのは...

雲の上から、朝だと言うのに反射熱で白く見える、灰色コンクリートの歩道を項垂うなだれ、歩いている父親の後姿


頭の中では、今回の自分の人生で一瞬で見た、前世の父親が記憶を取り戻した時の、あの顔!
娘の死で、取り戻した記憶に欲望と歓喜と共に歪んだ笑い顔と声

頭の中で、何度も響き

頭の中で、ペンでクレヨンで筆でグチャグチャに落書きするように消えていく映像


  少女は、パニックと混乱で苦しくなるも
  別の映像にシフトしていく


少女は、父親が思い出したと連呼し、インキュバスと言う言葉に、意味がわからなかった。何を言ってるいるのか、わからなかった
わからなかったけれど、言ってる事は正しい。間違いはない。わからないだけと思った
何を思い出したか、わからなかった。父親が思い出した記憶の映像は、少女には見えなかった
ただ、正しい事を思い出したと思った


いつも、誰に対しても親切だった父親の姿が、歪んだ顔で喚いている父親と一致しない


毎回、転生する度に顔の違う父親
書斎でパソコンを開き、数々の画像と日記や書物を取り出して、喚く父親の映像が次々と、少女の中で思い出され展開されていた


続く
→プロメティウス5


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