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下駄箱書院 靴箱から始まる情報空間

トップの画像はなにかの本棚だと思うかもしれない。実は我が家の靴箱なのである。都心に近いわりにとても静かだという理由だけで選んだこの下宿、家に入ると目の前に床から天井まである靴入れが壁に埋め込まれている。この広大な棚を一段すら埋めきれない靴貧乏な私は、ここに布を敷いて本棚にした。書店の棚の一部のような雰囲気を出していて、気に入っている。

人間の成長の鍵となるのは、本、旅、人である。

下駄箱は本来靴をいれるところだ。そこに本がいるのはちぐはぐだが、私には意味深にも思える。休日もほとんど屋内で本を読む私に「たまには旅行にでも行ってみたらどうだ」と周囲の人は言うが、私に言わせてみれば、ダブルページを開いた途端、我々はもう旅に出ているのである。そこで読者は著者と交わり、著者が引き連れて来た引用者とも出会う。喧嘩したり教えられたり、応援したり風邪にかかったりする。あるいは物語というOSが仕込まれていたら、そのワールドモデルに引き込まれる。これを旅と言わずしてなんと言うのか。読書という行為には、本も人も旅もみんな入っている。下駄箱におさまっている本たちは、私を古今東西へ連れていく知の靴なのである。

本は知の靴であり、旅に出るための乗り物でもある。情報が入った特別な乗り物だ。この考え方は本をメディアとして捉える見方であり、この見方をつきつめていくと、Web、テレビ、ラジオ、雑誌、動画などのメディアの本質さえ見えてくる。

では、私の読書旅行遍歴は、いったいどのようなものなのか。私の靴箱に収まっている本たちはこんな具合である。

・西谷 圭介『サーバーレスアプリケーション開発ガイド』マイナビ出版
・Hartmut Bohnacker他『Generative Design』ビー・エヌ・エヌ新社
・Ludwig von Bertalanffy『一般システム理論』みすず書房
・網野 善彦『日本の歴史をよみなおす』ちくまプリマーブックス
・Zygmunt Bauman『リキッド・モダニティ』大月書店
・Michael Ende『モモ』岩波書店
・Marshall McLuhan『グーテンベルクの銀河系』みすず書房
・小林 標『ラテン語の世界―ローマが残した無限の遺産』中公新書
・増谷 文雄他『仏教の思想』角川ソフィア文庫
・水木しげる 『水木しげる 妖怪大百科』小学館
・村上隆『芸術闘争論』幻冬舎
・松岡正剛監修『情報の歴史―象形文字から人工知能まで』NTT出版

雑多な顔ぶれに見えるやもしれないが、私は「情報」というキーワードを一本の読解の"いと"としてこれら全ての本を読み解けると考えている。そこには異なる要素を新しい関係線で結び直していく「編集」が潜んでいる。

情報を経とし、編集を緯とす

書けそうだから書くんじゃない。書けそうもないからこそ書く。本について、知について、私の知りたい全てについて、好きに書く。数寄が重なる誰かにこそ、読んでもらいたい記事を書く。それがわたしの下駄箱書院である。



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