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TCAA2022-2024 受賞記念展 サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」@"サエドッグのシフトがやばい"都現美

西洋美術館で開館以来初となる存命作家の展示(ここは未来の~)が、東京都美術館ではキリコ展が、そして都現美ではホー・ツーニェン展が始まってたりするが、せっかくなので俺は無料のこっちに行くぜ!
(といいつつキリコ展も初日に行って感銘を受けていた模様・・・)

尚、文中敬称略



会期
2024年3月30日(土)~7月7日(日)
休館日
月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
会場
東京都現代美術館 企画展示室3F
観覧料
無料
主催
東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーアーツアンドスペース・東京都現代美術館
協力
TARO NASU

公式より

ホーツーニェンは1500円だがこっちはタダ!!
サエボーグがめちゃくちゃ頑張っているので見に行く価値はあると思われ

TCAAとはなんぞやとかいろいろあるが、そんな細けえ(日本美術界の内輪の)話はどうでもいいんだよ!

津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」

こんな作家で、金美大(この略し方を県外でするのかはしらん)の先生である

今回の作品はハーフミラー(で、あってると思う)を使ったものと、ビデオインスタレーション的なものだった

ハーフミラーってのは、普通の鏡が90パー以上の光を反射するのに対し、半分くらいしか反射しないから向こうが透けてみえるやつだ
(飛行機とかのHUDに使われてるアレ

▼生活の条件

生活の条件
生活の条件

ハーフミラーに人の行動が投影されてる部屋
ソファーとかあって、写ってる人と同じような行動がとれる&周りがすごく暗いため、写ってる人と自分の体が入れ替わったというか、同期しているように感じられることがある

ラマチャンドランの「脳の中の幽霊」に鏡をつかって幻肢痛を治療する話が出てくるが、こんな感じに脳みそはわりと簡単に見えてるものを自分と思いがちらしいというのを実感できる作品になってる

で、ステートメント的には

部屋には8つの枠が設置されていて、それぞれ鏡が入っているもの、スクリーンになっているもの、何も入っていないものがある。 スクリーンには、出演者がなんらかの仕草を行う映像が現れては消える。それは、 家事や食事の際などの、 家の中でのちょっとした所作である。
《カメラさん、こんにちは 》に現れる仕草から簡素化した動き、忙しく動き回る、歩き去る、正面を向いて立つ、 横長のスクリーンには、時々眠る人などが現れる。
振付は、身体の一部道具になるなど、 身体が所作そのものになっている。 それらの基本的な様々な様相の動きは、その生活を自分のものとする方法として、 それぞれの身体に表れる。 映像が再生されるたびに、出演者たちの身体も再生され続ける。

会場にあった作者解説より

「カメラさん、こんにちは」っていうのはこの後でてくる作品のことである
正直作者のいってることがよくわかんねえんだけど、とにかく身体性なんですよっていう浅い理解でいる

結果的にだがこれはすげえよかったと思う

▼振り返る

振り返る

通路の先に実はカメラがあって・・・という作品
遅れて再生されるため、自分がいま見てる通路と、画面に映る通路が食い違う
まあ、言っちまえばそれだけである

長い廊下の先から撮影している映像は、ちょっと遅れてその反対側のスクリーンに投影されている。

同上

解説もそれかい!!! 

これについては通行人によってリアクションが異なるとこがおもろかったっすね
それだけでなんとなくリレーショナルっぽい作品になる

▼カメラさん、こんにちは

カメラさん、こんにちは
カメラさん、こんにちは
カメラさん、こんにちは
カメラさん、こんにちは

11台並ぶモニターと、簡素化したダイニングルームのような仮設の部屋。 それぞれのモニターに映る3人の人物は1人ずつ役を入れ替えながら、 11画面全てが同じ出来事を演じている。
この映像は、36年前(1988年) に津田の自宅に初めてビデオカメラが来た日に撮影された5分程度の出来事を再演したものである。 カメラのテストのように食卓に向けて三脚に設置されたカメラが撮影した映像には、 家族に新しいメンバーを受け入れようとするような仕草が映っている。 食卓での会話の中で、 フレームの中心を家族の中心と準えて、フレーミングの取り合いをしている。 それは、 何気ないやりとりのようではあるが、 家族という社会の中にいながら外側から捉えなおそうとする行為とも取れる。シングル・チャンネルで上映されている映像では、同じスクリプトを12名の俳優が入れ替わり演じている。 12の組み合わせで演じられることで、 家族や社会を構成することの思い込みにひびが入っていく。

同上

よりによって写真をとってないが、中央には食卓をもしたインスタレーションがあり、そこに座ると投影されてるビデオ(写真のやつ)の中に座った人もダブルイメージ的に登場できる
なのでここでもハーフミラーと同じく、現在と過去(記録)の重ね合わせを実現できる

自分は家族っていう存在に対する気持ち悪さみたいなものがある人間なので、それを客観的に見る形になるこの作品はけっこう好きだった

サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」

というわけで次の展示にいく

サイボーグ 《IWAS MADE FOR LOVING YOU》
Saeborg, I WAS MADE FOR LOVING YOU
2023-2024
インスタレーション
Installation

今回の展覧会では、 昨年の海外滞在リサーチでの経験や近作 《 House of L》 や《Super Farm》 を下敷きにした新作を発表します。 「弱さ」 と 「力」 がそもそも何なのかという問題にフォーカスを当てようと考えました。 ライフサイズの玩具のような空間の中で、肉体と化学製品、 動物と人間の境界線を越えた体験をすることにより、 普段、 皆の心の中にあるものが形になってみえることもあります。 そこで「ペット」に象徴されるような、何の有用性もないのに、そして普通の進化論的過程における 「競争原理」に従うならば生き残るはずもない中途半端な存在にも関わらず、 なんだかんだ人間の感情やファンタジーを投射されることで生きる(ある意味「愛」 の力だけで生きているような) モノが作品の新しい主役になりました。微力ながら、 その不思議なパワーをどこまでも拡張して引き出すことに挑戦していきたいと思います。

同上

サエボーグについては以下を参照
上記で言及されてる作品の動画もある

とはいえ本人のこれ以上ないくらい簡潔な𝕏の自己紹介あるのでそれで十分な気がする

サエボーグ(saeborg)はラテックス製の着ぐるみ(スーツ)を自作し、自ら装着するパフォーマンスを展開するアーティストです。

本人のX

というわけでみた結果は以下

この圧倒的なインスタレーション空間!!!
まじですごい これが無料!!タダ!!(←重要)
昨年イギリスでいろいろみてきたがぜんぜん負けてないのでさすがだと思いました

なんか妙に薄暗いが、それはサエドッグがまだ起きてない状態だから暗いのだった

リアルな造形の犬のうんこ
入って振り返るとこんな感じで

で、この農家の納屋風のゲートをくぐると主役登場である

サエドッグ
動き始めたサエドッグ

お客は数人いたが、積極的に触れ合おうとする人もいて、そうするとサエドッグもそれに対して反応していた
こうなると完全にリレーショナルアートっぽさが出てくる

明るくなった世界
背景とサエドッグ

という感じである

サエドッグのシフトがやばい

ちゅうわけでこの展示はサエドッグの中の人次第なわけだが

は??

え? あの人、毎回1~2時間もあれやってんの???
しかも金土は1日4ステージ・・・

GWのシフトはこんな感じらしいので行く人はタイミングはかってもらうといいと思う
まあ、だいたいサエドッグいるけどな!

ぜんたいてきかんそう

津田作品は、暗い所でハーフミラーをつかった作品はみる人の体の感覚が分離されそうな体験を与えてくれるという点でよかったし成功してると思った
作者の思惑どおりなのかはともかく、なんか変な体験なのは間違いない

一方で、体験が純粋にすごいっていういうより、トリックアートを見たときの感覚に近く、それでいいのか?ちゅう感じがしたのも事実である
出展作家がほぼほぼもの派になった「トリックス・アンド・ビジョンズ展」じゃないけど、見た目の面白さ、思想的な意図、美的な何か、とのバランスはむずくて正直よくわかんないが、津田作品について主観的な評価でいえば、「なんかわかんないけどすげえ!」(←美的達成)よりも、「面白い、不思議」(←手品的うれしさ)の方が明らかに勝っていた

そういう意味ではサエボーグ作品の方が自分には刺さった
まず、単純にスケールがデカイ
これはテーマがそもそも「なんで愛玩動物みたいな中途半端なもんが存在できるのか」とか、そういうデカさがあるので妥当だとも思う
で、そのデカイところが背景にあって、人間の感情とかそういうミクロな層で観客は鑑賞する形になるのもいい
実際に観客はやたらでかいインスタレーションの中で、それに比べれば小さいリアルなサエドッグと対面するが、進化とかの歴史のうえで自分たちがいる、ということをくそでか背景が象徴してくれてる

また、サエドッグとの距離感も絶妙で、これが観客ごとの対応の差異を生んでて、これが作家が気になってることなんじゃないかとも思った
(やたら関係しようとする人とぜんぜんしない人がいる

ただ1点だけ文句をいうと、作品説明の進化論の理解は間違ってる
「進化論的過程における 「競争原理」に従うならば生き残る」のは進化論(ダーウィニズム)じゃない
進化論が言ってるのは「自然選択」であって、そこにはなんの「競争」も「適者生存」もない
わけわからん形をした「ふるい」が突然飛んでくるのが自然選択なので、それにまえもって適応したり、競争したりすることはできない。

・・・ということは言っておきたい!!!

ともあれ、無料展示でGWもがんばるサエドッグのためにもみんな都現代美術館にいってほしい

1500円浮くと何がいいのか?

津田とサエボーグをみて腹いっぱいになれば企画展をみないで済むので1500円浮くことになる
その1500円で都現美2F「二階のサンドイッチ」でメシを食える!

ここは美術館併設の飯屋、カフェの中では例外的にコストパフォーマンスがよく、なに喰ってもだいたいうまい

もちろん美術館併設のアレなので安いわけじゃないが他よりだいぶマシ
外で食えば映えるし、ぜひ行ってほしい!!

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