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鯉の風呂恐怖症の話
浴槽のタイルに鯉の絵が描かれた銭湯を見たことがあるだろうか?
最近のスタイリッシュなスーパー銭湯ではまず見かけないが、昔ながらの銭湯では浴槽のタイルに絵を描いているところが多くて、鯉の絵は主流だった。
お湯を張ると水面が揺らめいて、まるで鯉が泳いでいるかのように見える、それが風流だったのだろう。「銭湯 タイル絵」で画像検索すると職人技の素晴らしい作品たちが出てくる。これはこれで大事な文化として継承していってもらいたいものだと思う。
しかし、私はあの鯉が怖くて仕方がない。
子どもの頃よく連れて行かれた昔ながらの銭湯にもその鯉の風呂があった。しかし私はどうしてもこの浴槽に足を入れることが出来なかった。
本当に鯉が泳いでるように見えて、足を入れたら食われそうで、つつかれそうで、引きずり込まれそうで、なんか藻臭そうで、泣き喚きながら踏ん張って入浴を拒否したものだ。
おかげで、鯉の湯(ぬるめ)に入れず、小さい頃から大人用のアッチアチの浴槽で耐えていた。温度よりも鯉が怖かった。
さすがに小学校高学年ぐらいになれば鯉が描かれた浴槽にも入れるようになったが、やっぱりなんか嫌で極力鯉が描かれている部分のタイルは踏まないようにして端っこのほうでじっとしていた。きっと今でもそうやって入ると思う。鯉の姿も出来るだけ見ないようにする。やっぱりアイツらは泳ぎだすと思っている節がある。
ここまでで私が鯉の風呂恐怖症であることはよく理解いただけたと思う。
で、だ。ここからが本題だ。
私はシュノーケリングが好きだ。
なんで?
そんなもん私が聞きたい。鯉の湯どころではなく、本物の魚がうようよ泳いでて、つつかれもするし場合によっては実際に危害も加えられるあのマリンアクティビティ。大好きです。
一体何がどうして銭湯の鯉は怖いのだろうか。色で言えば熱帯魚のほうがカラフルなので、あの色が怖いわけではない。サイズも、あの絵と同じぐらいの魚が泳いでいる海にも潜ったことがある。だけど、入ったことはないが鯉が放たれている池に潜れるかと言われたら拒否する気がする。まかり間違ってどこぞの池の水全部抜く番組に出てくれと言われたらお断りすると思う。
結局のところ怖いボーダーラインがどこなのかよくわからないままだが、これからも鯉が描かれた風呂で私は端っこでじっとしているのだろう。
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