お茶好きの隠居のカーヴィング作品とエッセイ-昔ばなし
2. タイサンボク
天を衝く泰山木の花の香や
我が気と心もかくぞありたし
Magnolia Park
Magnolias are in full bloom;
White flowers float in the dawn gloom,
Like fairies dancing in the dark,
Like fair ladies who through fog loom.
People love Magnolia Park
And stroll in the park of the town's mark
Where squirrels chase and rabbits race,
Where jolly chaps sing and dogs bark.
The fragrant flowers that bees trace
Give a finch a favorite place;
On the fragile flower, he romps
And fragments the flower of grace.
Through the night park, a red fox tramps
While the white blooms that night dew damps
Stand out quiet and bright like lamps
From the depth of darkness like swamps.
英語でただ Magnolia と言うと、モクレン科の木の全てになってしまいます。 タイサンボクもモクレンもコブシも含まれ、どれを指しているのか不明です。 ですが、日本で見られるこれらのモクレン科の花は、どれもこれも美しく、私はそのどれもが大好きです。 他には木に咲く花が見当たらない早春の山里で、一番先に香り高く咲き、春の到来を教えてくれる清楚なコブシ、それを追いかけるように庭先で満開となる白モクレン、更に本格的な春が来たことの証として咲くエンジ色の花のモクレンと、日本の春を彩る花は、梅、桃、桜だけではありません。 タイサンボクは夏の花ですが、大きな木で高さ20mは珍しくなくレコードは37.2mだそうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/タイサンボク
掛値なく「大木」と言って良いですが、その葉も花も、共に並みはずれて大きく、かつ美しいのが特徴です。 厚さがあり、しっかりとしていて、均整の取れた良い形をした葉は、表面の艶のある濃緑色とザラッとした裏側の褐色の対比が鮮やかで美しく、枝に密集して付きます。 そして、清純な真っ白い色と高い香気を持つ巨大な花をその枝の先に咲かせるのです。 こんもりと茂った木のあちこちに、一つ一つの花がぽっかりと浮き出すように、ちりばめられた大きな木がそびえ立っているのは壮観です。
タイサンボクは漢字で書けば「泰山木」であって、動かない泰山の如く、ドッシリとした上に美しく、気品に満ちています。 とに角、大きい木というものは、それが何の木であろうと人に畏敬と神秘を感じさせるものです。 人は大きな木を見た時、自分の年齢と比べて途方もない長さであろうその樹齢を考え、木自身の歴史とその木が目撃してきたであろう、その周辺で繰り広げられた人間社会の歴史に思いを致し、自分の矮小さを改めて思い知らされるのです。 古来より日本の多くの神社が御神木として巨樹を敬うのは故の無いことではありません。
作品に作り込んだ House Finch は、かつて、私の住んでいたトロント近郊では珍しくない鳥です。 芝生にはまだ雪が沢山残っていて寒いけれども、陽が当たって枝についた氷や芝生の雪がキラキラ輝いているような早春の輝かしい朝、裏庭の杏の木にこの鳥が1群をなして訪れます。 雄鳥の頭部から胸にかけての鮮やかな赤色が雪と氷に映えて、とても綺麗だった事を思い出します。 House Finchの雄の赤色の濃さには、ヴァリエーションがあって、濃いバラ色からオレンジ色、もしくは、赤茶色に近い色まで変化に富んでいます。 この鳥に極めて近縁の鳥にPurple Finch という奴も居ますが、濃いバラ色のHouse Finchとはとても良く似ていて、まず見分けるのが難しい種類です。 本来、House Finchは日本名をメキシコ・マシコと言うように、メキシコ原産で、北米の東海岸には居なかった鳥だそうです。 が、移入によって北米全体、更にはハワイにも広がった、狭い意味での外来種です。 それに比べてPurple Finchは、元々、主に東海岸側にいた在来種だそうですが、御多分に漏れず、外来のHouse Finchに押され気味で数を減らしているようです。 この連中はいずれも繁殖期になると、雄はとても美しい声で囀ります。 同じ頃には、別の赤い鳥でやはり声も姿も美しいCardinalも庭を訪れます。 トロントの長い冬が終わると、杏やその他の花々と綺麗な鳥たちが家々の裏庭で一斉に春の歓喜を爆発させるのです。
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