見出し画像

アレサ・フランクリンが強すぎるし、歌声が美しすぎた『リスペクト』

4日前に観たアレサ・フランクリンの生涯を描いた映画『リスペクト』がつらすぎたので、書いておきたいと思います。

この映画、主人公の天才シンガー、アレサ・フランクリンが人生の困難に打ち勝ち、米国きっての「ソウルの女王」になる生涯が描かれてて、それはもう感動するのですが、少女時代の人生の困難が辛すぎて、その後のさらなる葛藤からの復活劇は素晴らしかったのですが、心から純粋な気持ちでは入り込めませんでした。

ちょうどいい監督インタビュー記事があったので引用します。↓

性暴力をエンタメにしたくない…南ア人女性監督が語る「トラウマ・ポルノ」への危惧

――アレサ・フランクリンは父親の取り巻きのひとりに性暴力を受け、12歳で第一子を、14歳で第二子を出産しました。映画は性暴力に触れてはいるものの、レイプシーンなどはありません。

といっておられますが、いやいやいやいや、十二分にトラウマになりました。アレサが父親が神父として活動する教会の信者のパーティで、歌を歌い、自室にもどって寝るという日々に、そのシーンは割り込んできます。

歌がうまいからか、父親がカリスマ牧師だからか、教会信者たちからお姫さまのような扱いを受けながら育っているのですが、ある晩、一人の男性が「彼氏はいるのか?いないのか?だったらぼくがなってやろう」といってアレサの部屋のカギを内側から閉めて入ってきてしまいます。アレサの不安そうな顔で終わる次のシーンでは、アレサは台所でお皿を洗っているのですが、お腹が立派な妊婦になっていました。

冒頭の記事で、監督は観客のトラウマにならないように、レイプシーンはなくしたとおっしゃってますが、もう十分にトラウマです。レイプシーンがあった方が自分たちとはかけ離れていると割り切れることができて、その後のストーリーも楽しめたかもしれません。しかし、わたしは、自分が少女期をやり過ごしてきたおばちゃんでもあり、成長期まっただ中の娘や姪っ子がいたりするので、あの男がドアを閉めた後の展開をいろいろと想像を巡らしてしまい、心を暗くするばかりでした。

アレサのその後の成功を見せてもらって、うん、これでよかったんだ。少女のときの事件は、その後の芸のこやしになっているかもしれないと捉えようとしましたが、やはりできず。。。よくもそんな経験をしてしまったのに、その後こんなに強く生きられるってどういうことなんだ? とそればかりが気になってしまいました。

でも、これは、現在も発展途上国で起きている悲しいけれど、実在する現実への警笛を鳴らしている映画なのかもしれない、また、日本でも一部で起きている事件に気を向けろということなのかもしれない、と考えることにしました。

ロンドン グローバル・サミット閉幕
性暴力への対応と予防の拡充を
紛争下で性暴力にあう子どもは毎年2億2,300万人以上

(たいへんです。いまちょうど読んでいた本『続 地球家族―世界20か国の女性の暮らし 大型本 – 1997/12/1』のヨルダンのページにこんな記載が。

画像1

1997年のヨルダンでは、未婚の女性が妊娠すると父親がその娘を殺すことができるそうです。でも、それくらいすれば、父親のレイプはもちろん、レイプする側の抑止になるでしょう。)

娘はほかに用事があって、この映画を一緒に見ませんでした。あれはどういうことだと聞かれたらいい性教育になったかもしれませんが、まだ早すぎたかもしれないので、よかったことにしておきます。

女性であることは、社会的弱者だと監督は言っています。黒人であることも。ここ日本で比較的自由に暮らす私たちには会社での扱い以外、ぴんと来づらいのですが、たしかにそうなのです。

ということで、これ、おすすめ映画です。アレサ・フランクリンの素晴らしい歌声に包まれながら、めっちゃ心にひっかかります。ぜひ映画館で!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?