故人の夢

亡くなった人の夢を見たことがある。偶然にもおふたかたとも同じ会社であった。

ひとり目は当時の会社の社長。
宇宙空間に浮かぶ小宇宙のような星々の上に浮かび、少しはにかんだような、安堵したような、それでいて少し挑戦的な目をして腕を組んでいた。上半身しか見えなかった。

ふたり目は当時の会社の古株の人。
夢の中で彼は、黄色く薄暗い光に満たされた周囲が岩で、細く険しい洞窟の中を無表情に彷徨っていた。洞窟の向こう側から歩いてきて目の前を通り過ぎ、いずこともなく歩き去ってしまった。黄色い顔色と、俯き加減の後ろ姿が目に残っている。

実はふたりとも幸福な亡くなりかたをしたわけではなかった。ハッキリ言って本人の望まなかった不運な最期であったのだが、ふたりの夢の印象は随分異なる。

社長は成仏されたような気がするが、古株の人の魂は今でも出口のない洞窟を彷徨っているに違いない。

御霊の安らかなることを祈るばかりである。

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