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【教育】#1 みえないもの

何で宿題やってこないの?
何回言ったら分かるの?
また遅刻。遊びに行ってたの?

親のお金でここに来ているのに、この子達は何をやっているんだ…

東京に住んでいて、塾に通えるだけの財力がある家庭がとっても羨ましかった。
田舎住みで塾や予備校を我慢し、独学で、文字通り死にかけながら大学受験に挑んだ自分は、生徒たちを見て唇を噛んでいた。

「ここにいる先生の役目は、生徒の成績を上げること、以上。そのためならどんな教え方でもかまわない。」
こんな方針を掲げていた塾だったから、一向に上がらない教え子たちの成績にイライラしていた。

私の教え方が悪いのでは無い。彼ら彼女らのやる気が皆無なのだ。人、それもとってもワガママな思春期の子たちをモチベートするという壁にぶち当たった。

私自身もやる気を削がれる中で、段々違和感が大きくなっていった。
紙切れに書かれたたった1問の○‪‬で、この子たちの何が分かるんだろう。
(そもそも私自身、テストなどクソ喰らえなアンチ学校教育代表っ子だった、笑)

もっともっと奥深く、目の前の子どもたちに向き合ってあげたい。
家で、学校で、何があったの?
宿題をやらなかった時間、何をしていたの?
今日どんな気持ちで塾に来たの?
私なりの大問イチ、ニ、サンを作っていった。

下敷きの隅っこの落書きみたいな、筆箱の奥底の消しカスみたいな、カケラをちょっとずつ集めて、制服に包み隠された無垢な彼ら/彼女らを探った。

すると、
私はなんて無知だったんだ。やっぱり、この子たちを○‪✕‬で判断するつまらない人間になるのはイヤだ。
って想いが強くなってった。

それまで私が見えてた彼ら/彼女らは、イコール塾に通えるだけ裕福な家庭に生まれた子
だった。

でも実際には、
家族の面倒を見る傍らで学校に通う子、
持病と闘い友達と同じくらい青春を楽しむ時間を無くした子、
誰にも相談できない人間関係に悩み勉強に身が入らない子、
みんな、何かしらを抱えながらも教室に通ってくれていたたったひとりの弱くて強い人間だったのだ。

いつも気だるげなあの子にも、ギャルでモデルみたいなあの子にも、私にみえないものがあるのだ。

…いつの間にか授業より人生相談の時間が長くなっていって、私が相談に乗ってもらうことすらあった。笑
そして私は塾講師を辞めた。

成績を上げるという使命を果たせないのであれば、あの場にいる理由は無かったからだ。
そして教育支援のボランティアを始めた話はまた後で。

いつか、子どもたちのためのサードプレイスを作りたい。
フリースクールを立ち上げて、子どもたちと心を使って、みえないものについて対話できる場所を作りたい。

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