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可愛くってミステリアスで……古川琴音ちゃんの魅力を再確認した「言えない秘密」

繊細で美しい映画自体の余韻と共に、柔らかい蔦植物が絡まるように、気付けば古川琴音ちゃんの存在がそっと囚われたまま。

のっけから失礼しますが、基本的に恋愛ものがほんとに苦手です。
「冴えないわたし」「地味なわたし」ってどのツラ下げて言ってんだ?みたいな冴えなくも地味でもない美少女と、「オレの彼女になる覚悟あんの?」みたいな顔がいいだけの俺様が繰り広げる、なんか、薄っぺらい茶番劇みたいで。その印象が強すぎる。
でも、まぁひとまず、きょもちゃんが出るから。
あと映画館の音響でSixTONESの楽曲聴いてみたいから、という多方面に申し訳なさすぎるほど不純な動機で「言えない秘密」見に行きました。
で、映画館出る頃には古川琴音ちゃんのことしか考えていませんでした。
内藤雪乃a.k.a古川琴音ちゃんが、とにかくかわいい。
「リボルバー・リリー」琴子の、そこはかとない人外感がずっと印象に残っていましたが、やっぱりこの子、可愛さと妖しさを醸し出すのがうまいのかも。
「言えない秘密」を見てそれを再確認しました。
触れそうで触れられない。捕まえようとして伸ばした指をするりとかわして、その可愛いおくちでくすくす笑っているのがなんて似合うのだろう。

それにしたって、お顔と滑舌が殊更かわいい。
守りたいと同時に、なりたいタイプの女の子。

わたしもあの喋り方、したい。
少し舌ったらずでかわいい。
あ段の発音に微妙にeの音が入る感じのあの舌ったらずさ。
あの笑うと目がきゅっと吊って細くなる感じ。
ねこちゃんみたい。
よく見たらそばかすあるのもなんて愛くるしいのでしょうか……。

特にわたしの「かわいい」をブチ抜いてきたのはクリスマスパーティーのシーンです。
絵面がレトロで可愛すぎて、これが泣けるタイプの恋愛映画だとか一瞬忘れました。
赤いカーディガンに黒のワンピース、白タイツ。タイツに色を合わせたベレー帽、足元は黒のエナメルストラップシューズ……!
かわいすぎる……良い……。
(ワンピース、ネイビーだったかも……でもネイビーでもかわいい!)
湊人くんも色合わせたのか赤い服を着ていて、なんて可愛らしい2人なんだ、と口角が上がるのをぐっと堪えるわたし。
そして……ふたりが奥ゆかしく気持ちを通わせ、雪乃ちゃんがミステリアスで愛らしいねこちゃん系女の子であればあるほど、どうにも出来ない、彼女の抱える「言えない秘密」にわたしは涙が止まらず……。
終盤、生まれてくるひとさまの赤ちゃんに、泣きながら「お祝いさせてください…!」というシーンでわたしの涙腺もばくはつ。
なんかもう「雪乃、わたしが、助ける……!」みたいな気持ちに。

基本、恋愛がテーマの作品に嫌悪を抱いて生きてきたのですが、動機はどうあれ、見て良かったです。
謎に「冴えないわたし」とかのたまう美少女もいないし、謎に上から目線のいけすかねぇ男もいない。
それに、雪乃、とても、乙女で。
残り少ない命を恋に捧げたところ、本当に好感しかないです。
明日よりも今日が大事、恋に生きることが大事、なので。

それを実行する女の子は素敵。
やっぱり死を以って完結する恋ってロマンチックなんですよ。
死で完結すると、恋を、一生綺麗な思い出のままに出来る。
未来がないからこそ、「もし生きていたら」という美しい夢を描くことも出来るというものです。過去も、存在しない未来すらもただただ美しいだけのものとして優しく淡く残り続けるの。
スノードームの偽物の雪を眺めるように、いつまでも汚れず澄んだまま。
わたしもこれになりたい。雪乃ちゃんみたいになりたい。
死ぬ前提で誰かをすっごく好きになってみたい人生でした。
自分の命を引き換えにしてでも逢いたいと思える存在って、どんなかしら。
わたしがひとりで死にかけている時、あんなに必死に走ってきてくれるひとっているのかしら。
湊人と雪乃のふたりは、清くて眩しくて美しい。
多方面に謝ります。ごめんなさい、恋愛作品のすべてが嫌いなわけじゃないことに気付けました。美しい作品をありがとうございます。
廊下の軋むレトロな旧校舎も、ピアノの音色で時空を行き来するのも、雪乃ちゃんのお衣装も、大好きな人の目に映るために必要な108歩も、全部が雪乃ちゃんの恋のための、魔法の約束事。

「ここに帰ってきて」の話もちょっとして良いですか?
湊人くんの涙が二人の写真に落ちた後、流れる「ここに帰ってきて」。
映画を見る前と見た後では曲の印象が違う。
湊人くんが、雪乃ちゃんへ「あれから随分時間が経ったけれど……」と近況を綴っている、さながら後日譚のような……。
湊人くんは、きっとピアノを弾き続けているのだろうな、と思えました。
SixTONES、完全に泣かせに来ていました。
あと、単純に映画館の音響で聴く「ここに帰ってきて」の、壮大で重厚なメロディに、そこに乗る6人の歌声に包まれるの心地よかったです。陶酔感。


たまには自分が触れないジャンルの作品を見るのも、良いものですね。

ただひとつ、ひとつだけすっごく無粋なこと言っていい??

湊人ーーー!!!!!
救急車を、呼べーーーーーー!!!!
いくら21年前だとて、公衆電話とかあるでしょうが!!!

とはいえ、あそこで死別するから美しく、わたしにも珍しく刺さった恋愛映画となったわけです。
ごめんて。無粋なことを申しました。
少しビターで、繊細なチョコレート細工のような映画でした。
溶けてなくなったあとも、舌の上に残った幸福感を味わうように、ふたりが過ごした時間に思い馳せてしまいます。

無害

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