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閉そく区間とダイヤのはなし

《閉そく区間について》

 鉄道は、自動車とは異なり、道路の上(軌道の上)を自由に走行することはできません。自動車のように加減速を速やかに行うことが難しく、ある一定程度の間隔をおいて走行させないと衝突などの危険があるためです。

 それを避けるためにもダイヤを設定し、正確な時刻で運行することが求められるのです(ちなみに日本の鉄道は世界に類を見ないほど時間に正確に運行されている)が、運行の正確性・安全性を確保するために鉄道が走行する軌道上にも様々な仕掛けが存在します。

 その中でも一番基本となる、“閉そく区間”という考え方について触れたいと思います。

《閉そく区間の考え方》

 みなさんは、列車に乗っている時に、所々で信号機🚦が設置されているのを見たことはありますか?

 閉そく区間とは各路線進行方向に向かって適切な間隔で設置された閉そく信号機と信号機の間の区間のことをいいます。そして、一つの閉そく区間内に1列車しか侵入することはできないことが大原則となっています。

図A


図B

 図Aで示している状況の時間を進めると、図Bのように、列車Aが一番左側の閉そく信号を通過し最初の閉そく区間に侵入する(列車Bは列車Aが動くと同じ速度で進行するものとする)と、閉そく信号が“進行(緑)”から“停止(赤)”に切り替わり、さらに後続の列車の進行を制限します。

 さらに列車Aが図上の左から三番目の閉そく信号を通過したときには、左から二番目の閉そく信号は“停止”から“徐行(黄)”に変化します。仮に列車Bが図Bの位置で停止してしまった場合は、列車Aは左から三番目の閉そく信号を徐行しながら通過し、左から四番目の信号手前まで進入可能になります。

 このように、原則として、同じ進行方向に進む列車は一つの閉そく区間に対して一つの列車しか進入することができません。

ちなみに、必ずしも 列車の長さ < 閉そく区間の長さ とは限らず、一つの列車が二つの閉そく区間に跨ってしまう場合もあります。当然、後続列車は、その一つ前の閉そく信号までしか進入できません。

 閉そく区間の長さは、各路線の事情に合わせた配置となっており、閉そく区間を短くしたほうが、高密度運転が可能になります。

《閉そく区間とダイヤの関係》

 一つの線路上を同じ速度、同じ停車駅で走る列車しか存在しなければ、ダイヤ作成上も困難なものではありませんが、大都市近郊の通勤時間帯に大量の列車を走らせ、かつ、各駅停車や快速列車、特急列車などが混在する路線では速度の異なる列車が同一線路上を走ることになり、前を走る遅い各駅停車に特急列車が追い付いてしまったりすることが考えられます。

 そのため、通勤時間帯には各列車速度を揃える“並行ダイヤ”と呼ばれるものが組まれることとなり、乗客からすれば、どの種別の列車に乗ってもノロノロ運転が続くことになったりすることもあります。

 その対策としては先に述べた、閉そ区間を短くして、走行できる列車の密度を高めたり、線路容量を増やし、速度の速い列車と遅い列車の線路を分けたり、大都市近郊で路線の複々線化が各地で実施されているのはそのためです。

 いずれにしても、閉そく区間の原則があるため、ダイヤ作成の上では同一進行方向の列車の間隔は一定程度間をあける必要があります。一定間隔以下にダイヤを設定できないのはそのためです。

 その他にも、近年ではコンピュータ制御による自動安全停止装置などが大幅に普及しており、そういった安全対策は日々進化し鉄道運行の安全が守られているのです。


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