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ちょっと幸の薄い花

肌がありえないくらい、しっとりもちもちだった。

そういえば前日にシートマスクをしたんだった。シートマスクをして、その上から友人がくれたシリコン製のマスクをつけてダラダラした甲斐があるってものだ。シリコンのマスクは小顔さんも使う用なので、口元が引っ張られてしまうのが玉に瑕という感じだ。いつもの化粧のノリも結構いい感じ。

前日行ったことの効果が実感として出てくる、というのはなんだか嬉しい。やったことに対して跳ね返りがあることの手ごたえがあるというのは幸せなことかもしれない。自分の体へのケアがそういった成果として表れることは、すごく建設的な感じがする。

家を出てすぐのところに、立て続けに二株の紫陽花があることに最近気が付いた。いや、昨年も気が付いてはいたのだが、1年をかけてすっかり忘れていた。普段、そんなにたくさんあるような気がしないのに、時期になると意外なほどあちこちで見かける花ナンバーワンが紫陽花だと思う。ほかの桜だとかツツジだとかは、つぼみが出来て花が咲いてという過程を楽しんでもらえる花だと考えると、紫陽花はちょっと幸の薄い花だと思う。最近見かけるはどれも満開の紫陽花だ。同じ種類の花だというのに、バリエーションがとても多いのも面白い。最近見かける白っぽい色をした固い花びらの紫陽花がとても慎ましやかでかわいいと思っている。

電車にのって立っていると、わきに座った親子にジロジロ見られているのがわかった。いま、わたしは極端に春夏の服を持っていなくて、出かけるたびにてんやわんやだ。なんとなく秋冬もののズボンを春を過ぎても履いているし、勧められるままに買ってしまった羽織物は家にある服のテイストと絶望的に合っていないし、困ったときにとりあえず着るワンピースは1着しかない状態だ。なので、人と会う約束なんてしていると、毎度ほぼパニックである。もしかして、外をほっつき歩くには不足な変な格好になっていたかと戦々恐々としながら、脇腹のあたりを撫でてみると、なにやら固くて丸いものに触った。なにかと思ったら、どこかでついてしまったのだろうかカナブンがとまっていた。なーんだ。これをみてあの親子はヒソヒソと話していたのか。言ってくれればいいのにと思う。でも、「もし、あなたお腹にカナブンがついていますよ」なんて中々馬鹿馬鹿しくて言えたものではないのか?

ふと思い出したけど、いつかに電車の中で鞄にでっかいバッタを付けている女子高生に出くわしたことがあった。その時はどうしたのだったか……。たしか、バッタがついていますよと伝えた気がする。でっかい虫をつけたまま歩いているのはかなり恥ずかしいと思ったからだ。

私は虫が全然平気なタイプなので、服に付いたカナブンを捕まえると、降りた駅で空中にリリースした。カナブンは床に落ちきる前に透明な羽を広げ、綺麗な曲線を描いて飛んで行った。それを見てわたしは、それがカメムシじゃなくて本当に良かったと思ったのだった。

虫といえば、数日前から家の共有スペースにデッカイ蛾がとまっている。ちょうど堅い葉っぱが枯れてクシャッと2枚重なっているみたいな見た目の物体が壁にひっついているのだ。本当に葉っぱのようにしか見えないので、実に見事だ。都内にしては自然多めな環境にある我が家なので、年に一回くらいはこういう不思議生き物に遭遇することができる。こういう環境に暮らし始めて初めて知ったが、蛾は信じられないくらいカロリーを消費しない生き物だ。一度見かけると少なくとも一週間、気を抜けば数か月単位で同じ場所に止まり続けている。その忍耐というか、無気力さというか。とても羨ましく感じてしまう。

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