考えは、浮かんだことが大事。忘れていい。

さっき、あ、これは覚えておきたいと思う考えが浮かんできた、考えは大抵浮かんでくるもので、数式なら左から右に数字を書いていってイコールで結んだりしていって答えに辿り着く、山の頂上までのルートはいくつかあるかもしれないし一本道かもしれないがとにかく道を進んでいくと頂上にたどり着く、考えはそんなものではなくて閃きの連続、僕だけか、僕はとにかく頭の中でこれがこうであれがああなるからこれはこう、ていうのがなくて全部一緒にやってくるから言語化しようとすると大変だ、途中を忘れて結論まで辿りつかないことが大変なのはなくて、途中の空白を補足してるうちに別のところに行ってしまうことばかりだから、そうならないようになるべく丸っとやってきたそのもののまま現していくことが難しいのだ。
言ってる側からもう、この文章がそれで、何を書くつもりだったのかさえ忘れてしまった。考えは大抵浮かんでくるもので、というのが余計だった。いつもそうだ、これを覚えておこうとしたことを記しはじめた途端に、書いた言葉に釣られて別の考えが浮かんできてしまい、それを忘れないように書き始めると前のことは忘れてしまい、書きはじめたこともどんどん考えが浮かんできて、一番新しく浮かんだものが僕にとっては大抵一番新鮮だから、それを残したくなってしまう。
覚えておきたい考えが浮かんだけどすぐ忘れた。忘れないように残しておこう、でもそのときもう忘れた、でもすぐならまだ思い出せるかもしれない、それで書きはじめたけどもう思い出せない、全く、断片とかそんなのない、全てを忘れた

頭に浮かんだ考えは出てこないとすごくもったいない気がしていたけれど、結局はその気持ちも次第に薄れる。考えというものはなんだろう。考える、という行為ではなくて考え、「立つ」とか「踊る」とか、身体が一度できるようになったらなかなか忘れない動作や癖。
それより、ふと浮かんできた鼻歌の「メロディ」か。
でも立つ、とか踊る、とか自転車に乗れる、とか逆上がりができる、はそのとき一度きりの鼻歌や閃きとは違くないか。いや、一緒だ。自転車に乗るという行為を大雑把に捉えれば公園でも道路でも山道でも同じだけど、一度として全く同じ動きをすることはないし、場合によっては動きとしては真逆の働きをすることで速度を維持したり自転車と自分のバランスを取ったりしていて、そういう無意識に行われる一度きりの状況への感応を含めて「自転車に乗る」という動作になっているのだから、鼻歌のメロディや閃きと同じことを僕らは、いつもしているのだった。

また話が逸れるけれど、この一度きりの状況への感応、という点で自転車に乗ることと自動車に乗ることは、多分その動作の中に含まれる状況の変化は大きく開きがある。自身の足でペダルを漕ぎ、サドルとブレーキの握りの強さを無意識に変え、姿勢を道の角度や凸凹に合わせて重心を安定させるように身体はバランスしている、風や後退していく景色の変化、空模様、身体で駆動させる自転車とある程度以上自動で行われる自動車では、そのときどちらが「考え」が深いか、といえば自転車だろう。一つの命題に対して集中して答えを出していくことを求めているとき、そして今は往々にしてそういうことを「考える」「頭がいい」とされているから自動車に乗る方が都合が良いことになるが、瞬間瞬間変化していく未知である、つまり「今」に対応するためにできる限りあらゆる方面に集注することを求めたとき、自転車に乗ることの方が頭がいい。知能と知性の違い。

考える、がそういう動作とかメロディに近いのなら、僕はそのとき浮かんだ一つの「応え」に固執することはないことがわかる。それをわざわざ思い出すのではなくそれらが現れる動作、身体の感覚、に自然に気持ちが向かうことに注目すればいい。何を隠そう、自転車と自動車の違いが知性と知能の違いであることも、読み返してないから的を得ているのかずれているのかはっきりはしないけれど、僕自身が「なるほどなぁ!」と感得しているところで、これもこの文章をただ流れに乗って書くことを目指しているからできたことだ。「なるほどなぁ!」が別に今は間違っていてもよくて、この「なるほどなぁ!」という発見の驚きと喜びが僕の中で推進力になっていて、ゼロからのスタートよりも速く、遠くまで「考え」という動き、あるいは流れが伸びていくから、今間違得ることは問題でない、この応えがゴールではなくて、なんならスタートでもなくて推進力であることを僕は理解してるから。
そのときそのとき現れる「考え」は、それは絵や文だったり鼻歌だったり、急カーブでのブレーキではなく敢えて漕ぐことだったり、それらは固定させて「答え=知能を働かせること」ではなくて、瞬間瞬間に対応する「応え=知性を働かせること」に基を置くなら、忘れてしまうことは何にも問題なくて、その考えが起こったことこそが重要だ。

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