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LOSTAGEへ敬愛を込めて【後編】

遠くに住む、一ファンである私の約10年分の記憶を綴る。あくまでも私から観た景色なので齟齬があるかもしれない。
中編前編はこちら。

①『In Dreams』ワンマンライブでの変化

2017年発売の7枚目フルアルバムである『In Dreams』のツアーファイナル、渋谷O-EAST。
自身最大キャパのワンマンライブで、LOSTAGEだけを観にきたファンと共に彼らを観た。
私が観た10年前の彼らとはもう、表情はとっくに変わっていた。
それはそうだ。10年。過ごすには長い期間だ。
「BLUE」を合唱する未来。皆が愛するアンセム。皆が歌えるほどの。

ここは分岐点だと強く思った。これが今のLOSTAGEに繋がっていく。
観てほしい。


「BLUE」だけではなく、「ひとり」を合唱する未来を、誰が思い描けた?
LOSTAGEと大きく書かれたステージいっぱいのフラッグを掲げていた。
現時点で観られるLOSTAGEの姿がこういう形になることを、ちっとも想像していなかった。


いつ観ても焦燥や怒りでちりちりしていた。
纏う空気が柔らかくなったかもしれない、と感じても、それを捉えられる瞬間は言葉少なに終わるMCだけだった。
カウンターアクションというライブハウス、また札幌の地と観客がそうさせただけなのかもしれない。
沸々と熱量を溜め込む私たちはあまり声を上げなかった。それを許す空気でもなかった。
ただ抑えきれない気持ちだけが身体を揺らした。
そんな中でも少しずつだが、いつだか拳を突き上げ、歓声が上がるようになっていった。
互いに応えていく、そして拡がっていくようなイメージを覚えた。

それの延長線上。間違いなく、今のLOSTAGEを観ていた。
感極まった。


②『HARVEST』リリースと弾き語りライブ

LOSTAGEは2年前に8枚目のフルアルバム『HARVEST』をリリースした。
ベースボーカルの五味兄は一旦ベースを置いて、アコースティックギターに持ち替えた。

すぐ過ぎったのはZAZEN BOYSの『ZAZEN BOYS 4』で、フロントマンの向井秀徳がギターを置いてシンセに移行したこと。
今はシンセを置いてギターを弾き倒しているが。

それと同じように五味兄はベースをやめるわけではなく、ひとつの選択肢としてこの形を選んだ。
そのときは何もわからずにアルバムを買ったが、ひとつの流れがあったのだろう。
まあ、衝撃だった。
知っているようで知らない形だったからだ。
五味兄の弾き語りライブは何度か観ているが、バンドセッションとなるともちろん変わる。

いつかのライブのMCで、五味兄と拓人さんが「さだまさしと長渕剛のどっちにいくんだろう」「いくんだったら長渕剛のほうにいきたいけどな」というやりとりをしていた。
これはカウンターアクションだったか?
「これ、LOSTAGEの長渕剛なんだ!」と思って、聴き終わったあとに微笑んだ。



話は逸れるが、今でもよく演奏される『ECHOES』収録の「NAGISA」という美しい曲がある。
背景を知った上で聴く『渚、僕等はまだ 美しい夢を見てる』の響き。
ここで指す渚は人名であるとライブ中に聞いて、腑に落ちた。だからこんなに説得力があるのかと。

人ごみに紛れて どこかに隠れてる
渚、僕等はまだ 美しい夢を見てる
「NAGISA」

この曲はLOSTAGEのスタイルそのものを見ているようで、彼らはずっと、どのような形であってもバンドを続けてくれるかもしれないと無責任な思いを抱いた。
前述のライブでの印象がそれである。

とんでもないバンドだったし、いつでも、いつまでもLOSTAGEは唯一無二であり続ける。

時系列は前後するが、五味兄の弾き語りライブをはじめて観たときの話をしたい。
これもたぶん『CONTEXT』くらいのときだったので、もうLOSTAGE表記になってだいぶ経っていた頃だった。

2007年発売2枚目のフルアルバム『DRAMA』の「ドラマ・ロゴス」という収録曲がとても好きだった。
その頃のLOSTAGEは前述の通りlostageの曲を演奏しなかったので、きっともう聴けないと思っていた。
でもいつかこの曲を聴きたいと希った。そうなったら人生を終いにしてもよかった。
ロストエイジにはそういう曲がたくさんある。

札幌市内にあるちいさなカフェで五味兄が弾き語りをすると聞いてすぐチケットを買った。
バンドとしてのLOSTAGEは観ていたが、弾き語りをする姿は一度も観たことがなかった。
当日、雨で路面が滑る道を歩いてたどりついた場所は、想像以上に狭く、また演者との距離があまりにも近かった。

うそだろ。
あまりの距離感に驚いて声に出てしまったと思う。
自由席だったので、観客が思い思いのところに座る。椅子が埋まっていく。まだ空いていた最前列。
そこにいくことはできなかった。どうも緊張してしまい、真ん中くらいに座った。
そして、五味兄が弾いて歌ったのは「ドラマ・ロゴス」だった。
後のことは覚えていない。
そしてこの曲を聴けたため、私はこの日、一度死んだ。

「ドラマ・ロゴス」は今でも演奏されている。
うれしい!


数年追ってきたただのファンである私は、LOSTAGEが重なる変化にずっと感動している。
怒りも悲しみも苦しみも抱きかかえた人間の愚かさを捨てず、そこには確かに慈しみもあった。

長い間 どこかに置き忘れた
この間まで 確かにここにあったのに
とても遠くに そしてとても近くに
ほんの少し 僕が瞬きをする間に
「瞬きをする間に」

生活だった。
間違いなく、背骨を担う、生活の一部。
LOSTAGEの一瞬一瞬が好きだ。

我が敬愛するLOSTAGEへ。
デモ音源から新譜の『HARVEST』まで大事に聴いています。
また、歌詞は2021年に発行された歌詞集の『TAPESTRY』から引用しています。

そして、カウンターアクションで拾ったピックも未だに財布の中に大事にしまっています。


③ Throat Records

ところで。

LOSTAGEはサブスクをやっていない。
そして、今のところやる予定もないそうだ。
MV化されていない音源はCDやレコードなどの媒体で聴くことになる。
公式サイトや通販サイト等からご購入いただくのがいいだろう。
以下、五味兄が運営しているThroat Recordsの公式リンクを貼る。
LOSTAGEが誰かに届けばうれしい。


ちなみにトップ画像は奈良にあるNEVERLANDの写真。
ホームへ行けた。LOSTAGEを観た。

これは蛇足。
前編で触れていることを繰り返す。
約10年ほどファンとしてライブを追っているが、未だに緊張してご本人様方と話をすることすらできていない。
五味兄は自らレコード店を構えているし、それがなくてもとても気さくな方だと聞いた。
それでも話しかけられない。

写真のひとつでも撮ってもらったらいいのに。

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