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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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#友野雅志

よせる波とひいて消えさる波。

よせる波とひいて消えさる波。

あなたをのみこんで
おおきい波、そして崩壊がきた
折れる骨
こなごなになる空
言葉は消えた

しばらくすると
しずかに星は震えた
過去を思いだすのではない
来るあたらしい時間を
おそれるのではない
全身をおおう
線が
震えている

もう 生命体ではない
時と
影がゆれる
みじかい時間

時がこまかく
砕けながら
あなたの前へ前へと
ながれていく

ある夜明け あるいは
午後のあかるさ
紺色の夜

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手のひらのなかで

手のひらのなかで

あおいまるいボール
ガラスは冷たいまま
ひびく足音
もがく手のひら
ガラスのかけらが
ながれる 槍のように
ときには あたたかい外套のように

あの声が聞こえるだろうか
眠りつつあるあなたには
触れていく風を感じるだろうか
氷の透明さのあなたには
もうおろしてしまおう
白い麻の空を
あなたの
呼吸のあたたかさが
あおい星をくもらせる

だれの手のなかで回っているのだろう
あなたの夢と
わたしの

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Tomo Poetry、春のからだ。

Tomo Poetry、春のからだ。

きみはすきとおり
くずれる滴になる
両手では掬いとれない
きみのからだ
春ではない
かなしみではない
絶望ではない

のこる記憶の音
ぽとん ポトン しっとん
きざまれた時の
ひとつひとつ

いくつかとびこしながら
思いだす
存在しない
きみのからだの
痙攣と
なみだ

風がすぎるのはどこだろう
わたしのかなしみ
きみの
存在したはずのからだ

目黒川をあるく
きみの記憶で
びっしょり濡れた
シャ

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TomoPoetry、過去へむかう鳥。

TomoPoetry、過去へむかう鳥。

鳥がないた
別れの知らせ
巣からはばたく
過去へむかって
かれが知らないはずの
わたしたちには見ることができないはずの
ひらく扉がない方向へ
鳴き声と羽ばたきもきこえない方向へ
空がない
方向へ

鳥に
一本の光が見える
ほかに見えるものも
聞こえるものもない
かれが生まれる前の
世界へ
空がない
鳥は眼をとじている
あおい波も
みどりに揺れる星も
あかくながれる涙も
すべてをうけいれる闇も
空も

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TomoPoetry、風がはこぶ古いかおり。

TomoPoetry、風がはこぶ古いかおり。

語らなかった
子どもたちのうえに降る
花のような焔
木の棒になった
自立を望んだ子どもたち
だれも語らなかった
背をかじる
あかい海老

まるいテーブルで
まわる皿
フォークで刺されるのは
オマール あるいは
アメリカ
あたらしい皿には
しあわせを詰めたという
まるい赤

ならんでいる
あなたが捨てたものが
風がはこんでくる
あなたの記憶からきえたものを
レッドベリーと
ソーダ水で
口をあらう

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TomoPoetry、きみを何と呼ぼう。

TomoPoetry、きみを何と呼ぼう。

きみを何と呼ぼう
なまえのないきみを
きみを何と表そう
色も形もないきみを
きみを
どのように抱きしめよう
わからないきみを
存在しているのか
わたしに
触れることなしに
あたたかさを与えるきみを

何と呼ぼう
焔のあとに
かおりだけを残していく影
踏もうにも
そこがない そら
すべてが
それぞれの位置に帰っていく
もう 正座して
世界は
足先から崩れていく
ひとつひとつの
なまえのない口
声が発

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きみがひっかくこの星

きみがひっかくこの星

きみの親指が
星の経線を
傷つけ傷うけながらはしっていく
ながれる血と涙
かなしみとよろこび
33分の
叫び
悦びの そしてさみしさの
わたしたちの裸体は投げられる
心地よい肌のうえ
裂かれた肉体のなか
どこまでもひろがる
きみのたましい
わたしは凍った箱舟になり
浮いている

コーヒー味のアイスクリーム
血が溶けている
アジアの
水が
けがれていく音
靴音と
歓声と
悲鳴
わたしたちは
わたした

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TomoPoetry、きみは何を語るのか。

TomoPoetry、きみは何を語るのか。

さあ 言うがいい
きみを槍で刺し
笑う男に
呟くがいい
きみの血がながれるのを
喜びおどった男に
死の扉のむこう
どこまでも落ちていく闇について
一言
語るがいい

おおくの耳が
きみの声を待って
何千年だろう

目が覚めると
星が洗われるような
耳鳴りがする
それは
聞こえないきみの声が
世界から欠けている
せいだ

朝の道に
無意味な耳鳴りが
反響している
バス停で
横断歩道の白を跨ぐとき

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あなたが人であるなら

あなたが人であるなら


あなたが人であるなら
わたしは人でない

かれは口を閉じた
人から発するものを
吐き出した
すべてからになるまで
言葉
のぞみ
糞尿

そして血

乾いた葦になり
数分からからと燃えた

あなたが牛のステーキを切るとき
かれは骨だけになった自分を
削っている

あなたが
頰に風を受けて歩くとき
かれは
風のなかを
かるい種と一緒に
ながれていく

あなたが人であるなら
かれは人ではない
きらき

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よあけの前に

よあけの前に

灰色の空気
色なくくすんだ風
そこを歩く

どこへ向かうのか
背がななめのきみは 
こたえない
灰と水を踏むわたしは
何も
知らない
何も知ろうとしなかった

今朝もきみは
その道を踏んでいる
赤いヒールを捨てようかなと思いつつ
コートと
合成皮革のかばんを
捨て去ろうと思いつつ

わたしは もう
凍えている しかし
はだかだ
風も声もつき刺さる
わたしの
色がするところ
わたしのなかの
かくせな

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ちいさな者へ

ちいさな者へ

目が覚めると
きみは河の向こうから
こちらを見ている

すべてが破壊され
まだ煤が熱をもっている
時を
目覚めるには早すぎると
眠り あるいは
生がはじまる前の
かなしみの笛が鳴る前の
わたしを
きみは水で流しさろうと
あおい眼を
ふくらませ わたしが腰をおろした星を
ぴっしょり濡らす

言葉から言葉へ落ちていく
いのちは
透きとおった卵
時よりも
すこし先で
割れていく

ちいさな者よ
忘れては

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語ってほしい、ユーリー(ユーリーのはなし②)

語ってほしい、ユーリー(ユーリーのはなし②)

朝 わたしのとなりはびっしょり濡れている ベッドからのびるのは 青い歴史の時間 ユーリーは イルカのように 星を叩き飛んでいった あたたかい水のながれる ふるさとへ あおい筋の カレンダーを織ってもどして きみのほそい今日の呼吸を 深く吸う 藍色の星の いのち わたしは要らないのか もういちど訊く わたしは要らないのか 海が泣いている だれにも読めな

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TomoPoetry、ユーリーのふるさと

TomoPoetry、ユーリーのふるさと

** ユーリーの包帯の上下は 汗ばんでいた 白く、青く、ピンクに ユーリーのふるさと 南太平洋の砂浜のように 青いシーツは ひかり、反射している ユーリーの過去の恋 誰も握らない指 ユーリーの胸から取られた 肉のかたまりは わたしだけが見た ユーリーの恋人も 小さな子どもも見なかった 銀色の皿で それは語っていた わたしはユーリーと生きた ユーリーは

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天に向かってうたう

天に向かってうたう

きみの肉体は やぶれた皮膚ともろい骨 のびきったロープのような管でできている 小包み紐のような 四肢とかわいた内臓には 化石のような 蛇がかわいて 絡みついている あるき始めて数千年 鳥を食べた 鼠を齧った 雪をしゃぶった 風を舐めた 低い音やビブラートで あれは何年まえだ 背に女がぶら下がっている 乾いたまま 首には小さな腕が巻きついている ときに

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