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盛夏の美山荘・渓流の涼のおもてなし

40歳のお祝いに、夏生まれの同い年の友人と、美山荘を初訪しました!
ずっとあこがれながらも、道のりの遠さと険しさになかなか決心がつかず、40歳の誕生日を機に一念発起して片道1.5時間の山道ドライブを敢行!
洛北から鞍馬を抜け、傾斜のきついヘアピンカーブと、見通しのほとんどない曲がりくねった山道を延々と北上したその先に、美山荘は静かに佇んでいました。

渓流を見下ろす掘りごたつのお部屋

通していただいたのは、窓から涼しげな渓流を見下ろすことのできるお部屋。お部屋の中は土壁のしっとりした空気。ふすまを開けた途端飛び込んでくる窓の向こうの鮮やかな深緑の煌めきに目を奪われます。


お誕生日のお祝い

中居さんが温かい笑顔で迎えてくださり、お誕生日のお祝いに、とお赤飯のお膳をいただきました。お箸は栗の木を削った手作りのもの。最初のお膳だけこちらでいただくのですが、とても温かみを感じます。

おもてなしのお茶は、珍しいあけびのお茶。お茶の樹が根付かない地質とのことで、昔から地元ではアケビのお茶が飲まれているそうです。その土地ならではのおもてなしを受けて、これから始まるお料理にも期待が高まります。

八寸 ずいきとタニシ、エンドウ豆の鹿バターサンド、甘酒のブランマンジェ

山のものと川のものに工夫を凝らした逸品がぎゅっと詰まった八寸。
ずいきの酢の物は、お酢が強すぎず弱すぎず、ずいきも柔らかく、とても爽やかでやわらかい仕上がり。エンドウ豆の間には、冬に仕込んだ鹿バターが挟んであり、とてもコク深いモダンな味わい。卵はどじょうと合わせてありますが、臭みも骨の触感もなく、どじょうとは思えない上品な仕上がり。
ほおずきの中は、「甘酒のブランマンジェ」とのこと。甘酒とすももを合わせてあるそうです。これも、スモモの酸味のあるあまさと、甘酒の優しい甘さがマッチして、夏にぴったりの一口スイーツに仕上がっていました。


杉の釣瓶に盛られた岩魚のお造りときゅうりのすり流し

涼しげな杉の釣瓶の器に盛られた岩魚は、身がしっとり柔らかく、川魚とおもえない口当たり。口の中でゆっくりと淡いお味がほどけていくようなお造りでした。写真では見えませんが、お造りの奥には立派に育った山椒の葉。山椒の葉と一緒にお召し上がりください、とのことで、深緑の山椒の葉っぱをお造りと一緒にいただくと、不思議なことに葉の硬さや筋っぽさは全くなく、お造りと一緒に山椒の香りが鼻に抜けます。
きゅうりのすり流しは、隠し味にミントが入っているとのこと。そういえば、スっと爽やかな香りがするような?


お凌ぎは、蓮蒸しご飯ときゅうりとなすの和え物

お凌ぎとして供されたのは、蓮の葉に包んで蒸されたちまき。ガラスの器のもう一品は、きゅうりとなすに渓流の水のジュレを和えたもの。
お盆の施餓鬼にちなんだお凌ぎです。
中居さんは手際よくお料理を取り分けつつ、こうしたお料理のテーマについても丁寧に教えてくださいます。

鯉と桃と紫蘇と渓流の水

見た目にも味わいも瑞々しい逸品。ごく薄くスライスした鯉の紫蘇漬けに桃の薄いスライス、そして渓流の水のジュレ、透き通るよう薄青の釉薬がなんとも涼やかな逸品でした。

うなぎの筒焼きの煮物椀

このお椀は、お女将さんが自ら届けてくださいました。
このウナギ、しっかりと筋肉質な弾力・歯ごたえをかんじさせるのに、すっと口の中でほどけてうまみがじわ~っっと出てくる。お出汁も、こんなにも澄んだお色からは想像もつかないほど、力強いコクのある味わいでした。
うなぎを取り巻くのは、瓜と、失念しましたが瓜系のお野菜二種。
夏のうなぎのほとばしる生命力を感じる、印象的な夏のお椀でした。
すばらしかったです!!!


江戸時代から続く焼き鮎の海苔麩巻き

良く育った鮎の塩焼きの後に続いて出されたのは、頭と尾、わたを取った鮎と摘み草(忘れました)、ソース。これらを、川海苔のお麩のシートで巻いてかぶりつきます!江戸時代からある食べ方なのですが、私にはむしろ巻いていただく焼きものというのがとても新鮮でした。
お味は、摘み草のシャキシャキ感やごくわずかの苦みもマッチして、本当においしかったです!あと、何より楽しいです!!

雉と焼き茄子、蕗の炊き合わせ

これが・・・・もう本当においしかった!
手前に見えるのは雉。鹿児島でいただいた薩摩地鶏をほうふつとさせる、弾力のある味わいの強い身、臭みが一切なく甘みの強い黄色い脂。濃い味付け・苦みの蕗の煮物のアクセントにも全く負けていない濃厚なうまみ。焼茄子が雉と蕗の主張の強い味わいを受け止める、見事な締めの炊き合わせでした。


鮎の炊き込みご飯、白みそのアイスとキャラメリゼした無花果、よもぎ餡の葛まんじゅう

鮎の炊き込みご飯は、淡いお出汁のしみ込んだお米を鮎の香りが包み込み、止まらない味わい。付け合わせにいただいた紫蘇と梅もぴったりで、いくらでも食べられてしまいます。

デザートの、胡麻と焼き無花果のキャラメリゼは、白みそのアイスと一緒にいただくことで、なぜかみたらし団子のような味わいに。白みその主張が強すぎず、ほんのりとした白みその風味で、下にひいたサブレの香ばしさと食感もとても良いアクセントになっていました。

お抹茶の主菓子として出された蓬の葛まんじゅうはものすごく蓬!!「蓬入りあんこ」では決してなく、蓬餡でした。


美山荘の裏手を流れる、美しい渓流

初めて訪れた、夏の美山荘のお料理は、渓流の涼やかな風情にあふれる品々でした。その表現力は、渓流を見下ろしながら瑞々しく仕立てられた品々をいただく一時、外の酷暑を忘れるほど。

洛北の山の奥深くの自然の野趣あふれる味わいを存分に表現しながらも、手間暇をかけて食材の尖りを取り、器と時節のテーマで趣向を凝らし、見た目も味わいも優雅に仕上げるのは、貴族文化を育んだ古都、京都ならでは。

山道になれないドライバーにとっては、冗談抜きで命がけのドライブですが、春、秋、いつの日か冬の摘草料理も、ぜひ味わってみたい。

初訪で、憧れがますます強くなった、夏の美山荘でした。


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