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「青山誠と学ぶ保育基礎講座ほいくきほんのき」に寄せて その2〜保育の技と同僚性

「青山誠と学ぶ保育基礎講座〜保育の読む、書く、見る、対話する」に寄せて。
今回は、保育の技と同僚性の話。

保育の技を保育者が「同僚性を通して」学んでいく場合、おおまかに二通りの道筋があるような気がします。
ひとつは意識的に、もうひとつは無意識的に。

意識的なほうは、先輩から「これはこうだよ」とか「そうはしないで」とか、直接的に教えられる場合。
私もふりかえれば、新卒で入った時期と、りんごの木に入った時期は、けっこうそのような機会が多くありました。

新卒で入った園では、
「絵本は椅子の上に座って読まない、子どもたちと同じ目線で」とか、
「散歩で「はやく」という言葉で子どもを急かすな、ちがう言葉でおきかえて」とか、まあ、いろいろ教えてもらいました。

いまでは、その内容についてはそうかなぁ、、と思うこともありますが、内容そのものよりも、内容に含まれている趣旨というか、意図というか、理念というか、そのようなものにはやっぱり納得させられるものがあります。

ただし、保育者にとってじつはこのような機会はあまり多くはありません。ほとんどの保育者において、先輩と一緒に同じ場面をともにする機会は限られています。
特に幼稚園では(私も最初は幼稚園でつとめていたのですが)、担任がひとりということも多いため、直接的に「あの場面ではこうしたほうがいい」と教えてもらう機会は極端に少なくなります。

より多くの場合、保育者はもうひとつの学び方、無意識的に学んでいく機会のほうが頻繁です。

無意識的に学んでいくとは、ふと目にした他の保育者の言動、ふるまいかた、関わり方などから、それをいつしかしぜんとまねていくようなことです。

よく園見学にいって、その園の保育者たちの雰囲気を感じることがありますが、それは無意識的にその園の保育者同士がお互いにまねあっているからではないでしょうか。

もちろんこれは意識的にまねていることもあるので、完全に無意識的とは言えないかもしれません。
ただ、私たちは他者の言動やふるまいから、知らないうちにけっこうおおきな影響をうけていて、だからこそ保育現場の言動やふるまいというのは、よくもわるくも、反響しあってしまうわけです。

よくもわるくも、というのは、ある保育者が現場でなんらかの「ちから」をもつときに(それが職位なのか、職場での年数なのか、はたまた、なんだかわからないけど「あの人はつよい」的な存在感なのか)、その保育者の言動が影響をもってしまう。暗にその人のふるまいがロールモデルになってしまい、あたかも、その人に似せていくことが評価されることになってしまう。そんなようなことが、保育の場ってよくもわるくもあるわけです。

さて、このような二通りの学び方がいまとっても難しくなっています。
業界を概観してみると、離職率が高く、常勤職員の経験年数が浅い集団が多いため、そもそも先輩がいない、いても教えられるほどのものをもっていない、という職場がたくさん生まれています。

そこでは同僚性が、先輩は後輩のいまの経験世界に降り立とうとし、後輩はまだ見えない先輩の視野に背伸びしようとし…という間柄が、生まれにくくなっているのではないでしょうか。

「保育講座ほいくきほんのき」ではそのような事情を少しでも補完できたらと思っています。

とはいえ、ほんとうの同僚性にはなかなか届かないとは思います。そこでは無意識的な身体知、まねる、ということがやっぱりできないからです。
私の保育をみてもらって、それをまねてもらって、というのはオンラインの講座ではむずかしい。

けれども、はんたいに、身体知の落とし穴をうまくよけられるのかな、とも思っています。
「まねる」場合、無意識的に先輩の言動やふるまいをトレースしていく、そして、それをくりかえしていくことで、自分の身体になじませていくのだと思いますが、そこに落とし穴があるのは、身体に一度なじんでしまったものは、ぬけにくいからです。
そこに省察はなかなか働きません。

保育者にとって学ぶということは、ほんとうはアンラーン(学びなおし、学びはずし、とか)を伴っていなければいけないのです。
よく、1、2年目なのにものすごく堂々と、堂々としすぎるくらい堂々としている保育者をたまに見かけますが、それは保育という仕事のこわさをまだ知らず、先輩の言動をトレースしおわったという自信だけなのです。

講座でやることは、意識的に、この身体知をほりおこし、「あえて技として抽出していく」ということになりそうです。
これはあえて技として抽出することで、批評や協議の対象とするということです。それは、ほんらいは属人的な要素を完全には否定できない保育というものを「あえて技として抽出すること」で、はじめて可能になります。

私がりんごの木のミーティングを学んだ時に行ったのも、いま多くの方にミーティングをステップに分けてお伝えしているのも、同じように、「あえて技として…」なのです。

さて次回からは基礎講座きほんのき、のそれぞれの内容に入っていきます。


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