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漢字直接入力「風」

 ラジオで物書堂さんのことが話題になっていたのをたまたま耳にした。それで、以前使っていた日本語IM「かわせみ」のことを思い出した。物書堂は「かわせみ」の発売元。
 そして、連想はさらにさかのぼって、すっかり忘れてしまっていた漢字直接入力「風」のことを思い出した。
 あれは、私が自分のパソコンを持った1990年代の始めのころである。当時使っていたのはNECのPC-9801EXという型番だったか。フロッピーディスクが5インチから3.5インチに切り替わっていくくらいの時期で、当時としては新しい、3.5インチのフロッピーディスクドライブが2つついたモデルだったと記憶している。OSはMS-DOS。
 ほとんどのアプリケーションソフトは、フリーウェア、シェアウェアでそろえた。ファイルマネージャのFD。エディタはVzエディタ※とLightWayText。パソコン通信のソフトウェアもすべてフリーソフトウェアだった。
※訂正:エディタにJeditと書いていたのを修正しました。
 日本語入力のFEPにはWXP、WXIIを長く使っていたように思う。これは基本的に今の日本語IMと同じだ。ローマ字入力またはかな入力で音を入力し、かな漢字交じりの文字列に変換する。この変換効率がよいとか悪いとか、音節の区切り方に癖があるとか、いろいろ言っていたわけである。いや、今も言っているか。
 あるとき、知人から「風」というFEPのことを聞いた。かな漢字変換をしない、漢字を直接入力するFEPだという。漢字も含め、一文字一文字を数ストロークのキー操作で入力していく(その理屈については開発者の冨樫さんのウェページを参照)。
 私は最初にワードプロセッサ(専用機)を使い出したころ、日本語の入力にはローマ字入力を使っていた。それが、辞書を引きながら英語の文献を日本語訳しているときに、辞書で調べたことを文献の余白にメモしようとして、シャープペンシルでローマ字でメモしてしまって愕然とした。出力がローマ字モードになってしまっているのが、とても不自然な状態に感じられた。それ以来、キーボードから日本語を入力するときにはかな入力を使うようになった。
 そういう過去を持つ私だったから、変換せずに一文字一文字自分で文字を入力する、知らない漢字は入力できない、とにかく自分が入力したとおりにしか入力されないという「風」の設計思想には、強くひかれた。変換間違いなどあり得ない、間違いはすべて自分の覚え間違いか入力間違いなのである。よく知りもしない難しい漢字を使ってしまうこともない。これこそ、人間が道具を使うということではないか。
 それで、「風」を使い始めた。最初は本当にぽつりぽつりと、一文字一文字確かめながら入力するしかなかった。だが、よく使う文字は、その文字を出すためのストロークを手が覚えてくる。徐々に、日常的な文書であればある程度の早さで入力ができるようになった。
 その後私はMac教に宗旨替えをする。残念ながら「風」と似たMac用の日本語入力方法は見つけられず、その後はまたかな入力のかな漢字変換に戻ったのだった。
 「風」は一応Windows版もリリースされているようだ。だが、Mac版に移植されることはあるまいなあ。ParallelsとかBoot Campとかを使ったらMacでも「風」を体験できるのかもしれないが、そこまで趣味に走るような余裕は、当面なさそうである。

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