見出し画像

情報システムを作るとは(ユーザ編)

会社では業務でコンピュータを使います。その業務を実行するアプリケーションを(時にはコンピュータ…箱…とセットで)情報システムと呼びます。経理、顧客管理、社員管理、ワークフロー、生産管理、受発注管理、などなど。今では何も使ってない会社は少ないでしょう。デジタルトランスフォーメーション(DX)だとか、デジタル化だとか、言葉はいろいろありますが、事業に必要な基本は情報システムです。

それでは利用者側から見て、情報システムを作るにはどうすれば良いのか。すべて網羅すると本一冊分が必要ですが、ここではイメージを掴んでいただくために、ざっくりと概要だけを説明します。

まず計算するためのコンピュータ(の箱)が必要です。パソコンで動かす場合や、サーバと呼ばれる高性能の箱で動かす場合、それがネットワークの向こうにあるような場合と様々ですが、詳細は省略します。どこかで動かすと思ってください。

また、一から作る場合と出来合いのものを買う場合があります。洋服で言えば、オーダーメイドと既製服の違いですね。最近では出来合いのものを買う場合が多いのですが、今回はオーダーオーダーメイドについて説明をします。

まず何をするのか、何を情報システム化するのかを、明確にします。洋服なら、ジャケットなのか、ズボンなのか、シャツなのか、何なのか、です。例として、お客様の情報を管理する、という情報システムを作ることにしましょう。会員証を発行する際に連絡先も書いてもらっているとして、紙で処理しているものをデジタル化します。

アプリケーションは、柔軟性に乏しいものです。教えたことしかできません。大量の情報を高速で計算することは得意ですが、教えてない例外が発生しても対応できません。いろいろなパターンに対応させようとしたら、そのすべてを教えなければいけません。AIなら柔軟に対応できるように見えますが、実のところ見せかけだけで、まだその域に達していません。つまり、
・一つ一つ手順を教えてあげないと何もできないが
・一旦覚えたら大量に高速で何時間でも正確に計算する
という従業員だと思ってください。また、
・指示命令をする方法が限られる(キーボードなどを使う必要がある)
ことも意識しなければなりません。その人に、どう教えれば立派なアプリケーションになれるか、です。今後は情報システムとかアプリケーションと表現すると分かりにくくなるので、抽象化してデジタル社員と表現することにします。

何をデジタル社員にやらせるかが決まったら、最初にその仕事を洗い出すことが必要です。「こんな感じで適当に」なんて通じません。例えば。今は、お客様に情報を書いてもらっていて、会員証を発行している。顧客情報は、名前、郵便番号、住所、電話番号。それに、顧客番号と登録日を追加して顧客名簿に記録している。お客様から問い合わせがあったときに、誰なのか調べるために利用している。年賀状を送っている。それが現状であり、今度は、お客様に書いてもらっている流れはそのままに、顧客名簿をデジタル化すると決めます。

では具体的にデジタル社員に何をやってもらうかを決めます。
・顧客名簿の情報を伝えたら管理する(覚えておく)
・顧客情報に「最終購入日」を追加し、来店しての購入のたびに更新
・名前または住所の部分検索を指示すると対象の一覧を表示し、どれかを選ぶと顧客情報全体を表示する
・最終購入日の範囲(開始日または終了日、あるいは両方)を指示すると対象の一覧を表示し、どれかを選ぶと顧客情報全体を表示する
・検索した一覧をファイルに書き出す(年賀状ソフトと連携できる形)
以上を、デジタル社員の業務であると決めました。

次に、どの程度の性能や要求する条件なのかを決めます。
・指示をしてから答えるまでの時間
・指示をする仕組み(PCに向かうか、タブレットなどを可能にするかなど)
・指示をする方法(マウス・キーボード、スキャンして読み取り、など)
・指示をする操作の利便性(全部手入力とか、郵便番号から住所補完とか)
・結果を表示する方法(PCのモニター、印刷、など)
・稼働する時間帯(昼間だけとか、24時間とか、365日だとか)
・故障にどこまで備えるか、故障時にどこまで停止が許されるか、復旧は
・データ漏洩への備え
・過去の紙の情報をすべて登録する方法(個別に入力とか)
・やれることを増やせる余裕を確保しておくかどうか
考えるべきことはたくさんありますが、代表的なものとしては以上です。

何をやってもらうかとか性能だとかを考えるのは難しいですよね。難しければ専門家に手伝ってもらいましょう。ITに関するコンサルタントですね。今回の例は非常にシンプルなものですが、多くの機能を担当させ、連携させるとなると、とても複雑になります。専門家の助言を得て進めましょう。

要求が固まったら、IT構築会社に依頼します。大きなシステムであれば、要求事項を複数の会社に提示して、提案書を出してもらうこともあります。このような仕組みで、ここまで実現するとしたら、いくらかかる、という回答です。この提示内容(提案依頼書と言います)を作ることは、とても重要です。

やり方を間違えると使えない情報システムになり、お金を捨てることや業務を混乱させることになりかねません。技術的なことは良いコンサルタントを見つけることで解決しますが、一番のポイントは業務を具体的に洗い出すことです。普段、何となく実行していたことを、デジタル社員に具体的に嚙み砕いて、業界の常識などでごまかさず、例外も含めて、整理するのは難しいことです。そして多くの場合、複雑で曖昧で込み入った業務をそのままデジタル社員にやらせようとすると、膨大なお金がかかります。使えないことにも繋がります。業務を整理し簡素化することが、実はもっとも重要なのです。

以上、情報システムの作り方、ユーザ編、でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?