見出し画像

小規模企業のための人事考課制度

従業員を評価する目的は、その人の良い点や改善点だと上司が判断していることを本人に知らせて成長を促すことと、給与や賞与、昇格などの判断材料にすることと、です。完全年功序列(結果に関わらず年功で昇給・昇格)であれば不要ですし、それも一つの考え方ですけれど、一般的には貢献に報いるために評価を行う方が良いことが多いです。人は自分を承認してほしいですし、経営者の観点からすれば従業員に成長してほしいですからね。また、従業員が数人で普段から社長が細かい点まで見られる環境であれば、制度など作ると逆に効率が悪くなったりするので、評価結果だけしっかりと伝えてあげれば、基準は社長の独断で良いでしょう。社長の目が届きにくく、管理職を作らないといけない規模になってきたら、制度として考えましょう。

よく使われるのが、職能等級制度です。これは複数の等級を設定し、各段階で必要とされる能力(知識や遂行)を定義するものです。経理部門であれば、等級が上がるにつれ、簿記3級から2級1級が必要と決めたり、人に聞きながらから独り立ちしたり他人に教えるようになったりといったことを決めるのです。一番下は、資格なし&指導を受けながら、その上が簿記3級&独り立ち、とかですね。昇級ですが、下位の等級ならそれを一定以上に満たしたら一段上がる(卒業基準)だとか、上位の場合は基準の一定以上を満たしたら当該等級にする(入学基準)だとか、決めて運用します。自社の仕事をするのにどのような知識や遂行の能力が必要かを熟慮して決める必要があります。メリットは基準が明確であること、デメリットは定義付けが大変だったり柔軟な対応が難しかったりすることです。能力評価だけでなく、勤務態度や目標達成度などを組み合わせて評価することが多いです。専門家の支援が無いと構築は難しいでしょう。

最近は日本版ジョブ型雇用という方式を取り入れている大企業が幾つかあるようですが、実態は職能等級制度に詳しい職務記述書を追加したようなものです。言葉が先行した制度なので説明は省きます。

職能等級制度は、自分たちの仕事の内容を見返して、定義することで働く人たちに一定の気づきを与えることができると言う副次効果もあります。ただ構築が大変なので、数十人以上の中規模企業でないとデメリットの方が上回るでしょう。では社長が全部見渡せる従業員数を超えて、しかし数十人に達してない、おおよそ10~50人程度の企業はどうしたら良いのかが、本稿の主題です。

執務態度の評価は必要ですね。規律正しいかどうか、他の人と強調して仕事ができているかどうか、責任を果たそうとしているかどうか、仕事の幅を広げるなど積極的に活動しているかどうか、などです。企業理念に沿っているかどうかなどを評価することも効果があるでしょう。実際には、社長が、こんな態度で仕事をしてほしいという基準を作ればよいのです。いくら成果を出しても他の社員の邪魔をしたり組織文化を乱すのは悪影響も大きいので。組織内の融和など関係なく成果だけ出せばよいという企業風土であれば必要ありませんが。一方で、縛りすぎて誰もついてこなかったり労働法違反になったりするのは論外です。

目標設定も大切です。チームプレーで仕事をする企業が多いと思いますので、評価はチーム単位になるでしょうが。半年とか1年とかで達成目標を設定します。何個製造するとか、製品の歩留まり率とか、接客数とか、新規獲得金額とか、育成数とか、ミスの数とか、です。できれば従業員が自分で設定した方が良いでしょう。ただし立場(課長など)や給与に即したレベルかどうかは社長が判断します。

職能等級制度の能力(知識や遂行能力)に該当するものの評価は、それほど必要ではありません。設定するとしたら成長でしょう。フォークリフトの資格を取るとか、ミスなくハンダ付けができるようになるとか。成長度合いを認めてあげると従業員のやる気は上がります。

小さな企業でも明確な評価基準は必要です。しかし大きな企業がやるような細かい設定や厳格な基準を導入すると失敗します。大企業における評価は、成果を残す人とそうでない人を選別する意味合いもあります。評価されなければ去っていくかもしれませんが、それでも良いという考えですね。しかし小規模企業では人材確保は困難です。簡単に駄目という烙印を押しては経営が成り立ちません。目標設定が未達でも、だから駄目ということではなく、達成するためにどうすれば良いのか、助け合ってみんなで考えることが大切です。駄目な部分をことさら掘り出すのではなく、良い点を見出すことも大切です。少しでも成長したら褒める、良いところを認識する、ということですね。小さな企業では自分の弱みを直すより強みを伸ばすことが大切です。人についても同じですね。至らない点を直そうとするとコストが掛かる割に変わりません。良い点や得意とすることを伸ばすほうがよほど効果があります。人事考課はポジティブな視点で。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?