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人をつなぐ「ふまねっと」

 ふまねっとをもっと知るべく、オンラインのふまねっと教室に参加することになった。早速、休日に手作りのふまねっとを作成する。

 はじめにYouTubeで作り方のレクチャー動画を見る。12枚の新聞紙とホッチキスでできることが分かった。新聞は毎週勝手に届くフリーペーパーや授業のために買った英字新聞を家中からかき集めた。
 作り方は広げた新聞紙を5㎝幅の細長い棒状に折るだけという至って単純な工程だ。私はリビングの床に座り、おもむろに折り始める。無心で折り続けること30分、棒状に折られた12本の新聞紙が出来上がった。全部折り終えたころには手のひらが真っ黒になっていた。
 次に12本の新聞紙をホッチキスで繋いでいく。まずは4本で四角形の枠を作り、その中にもう2本十字にしてくっつけていく。すると2×2のマスができあがる。それを2セットつくることで手作りふまねっとは完成する。

 参加する前日に運動をするスペースを確保するために、部屋の整理をした。パソコンを置いている4.5帖の寝室で行うことにした私はデスクの前にふまねっとを置いてみた。デスクの横にはベッドがあるので、ギリギリふまねっとを置くことができた。スペースは決して広くない。事前の案内では「ふまねっとと全身が移る状態でカメラをオンにしてください」と書かれていた。全身を移すのはとても難しかった。パソコンの下に教科書などを置いてカメラの位置を高くしてみる。夜中にカメラの位置を30分ぐらい試行錯誤していた。

 6月10日。朝起きるとその日はとても天気が良く、窓からも明るい日差しが差し込んでいた。寝間着から動きやすい服に着替え、Zoomにつなぐ準備をする。少し早めに入室するが、すぐに入れないので緊張しながら待つ。9時になると、Zoomの部屋が開かれた。初めてのふまねっとの体験が始まった。そこにはふまねっとの女性スタッフと参加者が移った。私はカメラをオンにするつもりでいたが、オフにして入ったのでつけるか迷った。それは恥ずかしい気持ちと他の参加者に圧倒されたのだと思う。私はタイミングを失い、そこで躊躇してしまった。なので、カメラをつけないで参加することにした。

 その日の参加者は12人だった。カメラをオンにしているのは5人で、60代から70代のようだ。女性スタッフの名前はいっくと言うようだ。まずは、カメラをつけている参加者の自己紹介から始まる。1番目は夫婦で参加されていたむっちーとよっちゃん。2人でお揃いのオレンジのTシャツを着ていて、とても仲が良さそうだ。むっちーは「今日も楽しくふまねっとをしたいと思います!頑張りますのでよろしくお願いします!」と慣れた様子で明るく挨拶をする。ほかの参加者も次々と挨拶をしていく。自己紹介が終わるごとに「拍手~!」と言い、拍手が響き渡る。自己紹介が終わると、カメラをオフにしている参加者もいっくさんが名前を読んで紹介してくれる。

 自己紹介を終えると、参加者に「今日の体調はいかがですか?ばっちり?」「ズボンの裾は長くないですか?」「周りに危ないものはないですか?」と聞いていく。そして、運動を始める前のストレッチをする。ストレッチは用意された動画をみながら行うものだった。ゆっくりとした音楽とともに10分ほどのストレッチを行った。

 ストレッチを終えて、今日行うステップのレクチャーが始まった。一つ目はリズムを楽しむステップ。目標は網をふまないように歩くこと。「1マスに2歩ずつ、右足からいち、に。左足からいち、に」と丁寧に説明する。説明をした後、いっくさんがお手本を見せる。2拍子のリズムにのってゆっくりステップをしていく。いっくさんは参加者を見ながら「ばっちり!大成功~!素晴らしい!」と声をかけ、教室を盛り上げている。次は同じステップに手拍子を加えていく。そこでも「順調、順調!」「~ちゃん、手拍子ばっちり!」などと励ましながら見守る。いっくさんが参加者の反応を伺うと、みんな腕で大きいまるのジェスチャーをする。

 2つ目の変化を楽しむステップ、音楽も3拍子に変わる。「1マスに3歩ずつ、右足からいち、に、さん。左足からいち、に、さん」。一つ目のステップと違い、1つのマスに3歩する。1回目はみんな上手にできていた。今度はまた手拍子をつけていく。1マス目と3マス目は全部手拍子をつけることになり、少しずつ複雑になっていく。テンポはゆっくりでありながらも、頭で考えるときがあった。再び参加者の反応を伺うと、さっきよりジェスチャーが小さくなった参加者もいた。だが「みんな上手にできたと思います!拍手~!」と言ってこのステップは終わる。

 3つ目は歌に合わせてステップをしていく。今度は汽車ポッポの音楽を使う。「1マスに2歩ずつ歩きます。最初は右のマスから始めます。右足からいち、に。次は左のマスへ左足からさん、し。次は前のマスへ左足からいち、に。そして隣のマスへ…」3つ目のステップはこれまで前に歩くのと違い、蛇行しながら歩いていく。説明を聞いて私は一瞬混乱したが、お手本を見て理解できた。少し難易度が上がったステップに私同様、混乱している参加者もいた。最後のステップの目標は笑顔。画面をみると、目標の通り参加者に笑顔が溢れていた。私も実際にやってみると、時々手拍子を忘れたり、順番を間違えそうになったりした。また、網を踏まないように意識をしないと網を踏んでしまうことがあった。常に「その調子!」「上手にできていますね!」「ばっちりです!」と声をかけてくれているのが励みになった。

 最後に感想を発表しあう。「今日もすごく楽しかったです。最後少し笑顔が引きつっていたかもしれませけどね」という参加者に対して「とても素敵な笑顔でしたよ!」という会話にほっこりする。それぞれ嬉しそうに報告する。いっくさんは一人一人の感想を聞いて「ステップも手拍子も上手にできていましたよ!」「~さんの笑顔に私たちも元気をもらいました!」などとコメントをしていく。参加者とのコミュニケーションもお互い楽しそうにしていて、参加者に親しまれているという感じだった。人とつながる場所を作るには楽しい雰囲気が必要だが、スタッフによって空気作りができていることが体験して分かった。

 「良い一日を!ありがとうございました!」初めてのふまねっと教室の体験が終わった。朝から運動したことで、いつもより体が軽くなった気がする。そして何より元気をもらった。その日は1日元気に過ごせることができた。
 今回ふまねっと運動を体験してみると、高齢でない私も身体だけでなく、頭を鍛えられたように感じた。それだけでなく、親しみやすいスタッフによって作られる暖かい雰囲気も感じることができた。(山田菜々子)


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