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なぜ今まで高断熱化が進まなかったのか。

なぜ今まで高断熱化が進まなかったのかと聞かれて考えた。いくつか複合的な理由があるが以下のようなことが関係あると思う。

1)高断熱高気密は日本の風土に合わないという思い込み。
2)日本はもともとエネルギーをあまり使ってこなかった。
3)材料が揃っていなかった。
4)コンピュータシミュレーションと窓の技術革新
一つずつ紹介していこう。

1)高断熱高気密は日本の風土に合わないという思い込みがあった。これには仕方ない歴史がある。日米貿易摩擦の結果、日本は2x4などアメリカの工法を受け入れざるを得なかった。その時、一緒に入ってきたのが、北方住宅。これは窓が小さく閉鎖的な感じである。風が通りにくそう、暗いというのが第一印象であった。これのマイナスイメージは大きい。これには吉田兼好の「住まいは夏を旨とすべし」という言葉も影響している。実はこの兼好の時代は、夏に食あたりなどを起こす人が多く、夏に死亡率が上がっていたのである。一方、現在は冬になると死亡率が大きくなる。特に北関東の比率は多い。現在は、冬を旨とすべしなのである。

2)日本はもともとエネルギーをあまり使ってこなかった。
これはすごく慎ましやかな生活をしてきた。アメリカなどと比べると、圧倒的にエネルギー消費量はもともと少ない。ただ、ここで話が終わればよかった。現在は脱炭素の時代。すなわちゼロにしなくてならない。こうなると使っている量が大きいので減らすことにインパクトがある。

3)材料が揃っていなかった。
樹脂サッシのような優秀なパーツがなかった。日本のサッシカンパニーは結構な寡占状態にある。大規模なのでなかなか変わることができなかったが、YKKが樹脂サッシに踏み込んだのは大きい。樹脂サッシのペアを使えば、関東以西では等級6にすることができる。あと、今までの在来工法だと気流が起きやすい状態だった。

4)コンピュータシミュレーションと窓の技術革新
実はサッシの進化が大きい。もう一つ大きいのが設計側のコンピュータシミュレーションができることが簡単になったことだ。建物燃費ナビなどのソフトは13万円くらいだ。フルサポートで3万円を頼めば、使えるようになるまで、フォローをしてくれる。何が良いかというと、数をこなすうちに、コストパフォーマンスや工法が色々ありながら、コンピュータ上で試行錯誤ができるのである。

これらの4つが、日本で高断熱高気密が進まなかった主な理由であろう。だが、賃貸でも快適な家に住めることの実現、脱炭素社会への取り組みが必要と考えると、日本のエネルギーの3分の1を使っている住宅、建築の分野で、高断熱の住宅を作ることはデメリットは限りなくなく、メリットが多いことがわかるだろう。よく高断熱高気密にすると家を建てられなくなる人が増えるというが、家を建てない賃貸の人の立場になれば、なんの問題もないのである。また、家のコストが上がったとしても、それは元が取れる。初期コストの増大に関しては、ローンの枠を増やすなのどの金融的な補助をすることは必要と思うが、それ以上は脱炭素に向かう以上、避けて通れない道なのである。

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