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DIYで施工できる、コスパのいいヘッドライトコーティング剤

今回も買って良かったのもの(ヘッドライトのコーティング剤)と、それに関連する特許調査です。

だんだん曇ってくるヘッドライド

自動車のヘッドライトは数年から5年くらい経つと、かなり曇りが目立ってくるかと思います。
見た目が悪いだけならまだいいのかもしれませんが、曇りがひどいと車検でライトの光量不足で不合格となる可能性があります
ただ、私はライトの光量不足とは関係なく、曇っていると車が極端に古臭く見えるのが嫌でDIYでメンテナンスすることにしています。

今回は、リピート購入しているコーティング剤の紹介です。CCIという会社のコーティング剤 W-225です。

実際の施工のBefore/Afterは後半に記載しています。
まずは、ヘッドライトにコーティング剤が必要なのかというのを特許文章から検証したいと思います。

コーティング剤は必要なのか?

曇ったら曇りを拭けばいいような気もします。現に、窓ガラスや鏡などは拭くだけか、多少の薬品を付けて擦れば曇りがとれます。
車のヘッドライトに限定していえば、コーティング剤は必須だと思っています。その理由を特許調査で見てみたいと思います。

成形した樹脂に何かを塗布するということを主眼において検索すると、理系の人でも読むのを躊躇する化学式だらけの出願にヒットします。
この化学式だらけの出願に、コーティング剤を塗る必要性が書いてありました。

特許でヘッドライトのコーティング剤について調べる

例えば、特表2015-524855のを参考にしてみます。
最近のヘッドライトは意匠性向上のために加工しやすい樹脂で成形されているという背景が見てとれます。
その樹脂ですが、ポリカーボネート(以下、PC)などの樹脂が多いようで、このPCは表面硬度が低いと書かれています。

透明プラスチックは、光学及び透明ディスプレイ産業における核心素材として幅広く活用されている。特に、PC(polycarbonate)またはPMMA(polymethyl methacrylate)のような透明プラスチックは、高い光透過率、耐破裂性、高屈折率の特性と、ガラスに比べて低い重量であり、既存のガラスに取り替えて、ディスプレイ、光学レンズはもちろん、大型建築物の透明板、自動車産業に適用されている。しかし、このようなプラスチック樹脂は、ガラスに比べて低い表面硬度を有するため、耐磨耗性が落ちるという短所を有する。このような短所を改善するために、プラスチックの表面硬度を高めるためのハードコーティング技術が重要なイシューになっている。
(出願人は韓国の企業です。翻訳文のため、言い回しに若干の違和感があります)

特表2015-524855より抜粋

更に、特表2003-535169も参考にしてみます。
この発明は、コーティングの発明ではなく素材自体(説明ではシートとなっています)の発明です。性能を向上させた素材を提供するものです。
この発明の説明の中でPCは日光に含まれるUV域の光に対しては黄変するとあります。

透明なポリカーボネートシートの選択において重要な要因は、高い光透過率と低いヘイズである。日光のUV域がシートの過酷な黄変を導かないように、ポリカーボネートは通常少なくとも一種のUV安定化剤を含有している。
(出願人はドイツの企業で、前出の出願同様に翻訳文です)

特表2003-535169より抜粋

これらの例に加え、特開2020-83987の背景技術も参考にしてみます。
前記の2件と重複した内容です。樹脂に何かを塗布することで、表面だけ硬度、耐擦傷性、耐候性を上げるということをしているのが一般的のようです。

また、自動車用部材等の屋外で使用されるガラス代替材料には耐候性に優れることも要求されるが、ポリカーボネート樹脂は耐候性が低く、太陽光によって劣化を受け、成形品が著しく黄変したり、表面にクラックが生じたりするという問題もあった。従って、太陽光や酸性雨などによる変色、光沢の低下、塗膜の剥離やクラックの発生等を引き起こすことのない優れた耐候性と、衝撃などによる傷がつきにくい表面硬度や耐擦傷性に優れる塗膜を形成可能なガラス代替基材用のコーティング剤が産業界から強く求められている。

特開2020-83987より抜粋

つまり、これらの先願の情報をまとめると、ヘッドライトにはPCが使われ、PCは太陽光のUVで黄変するとともに、表面だけ硬度、耐擦傷性、耐候性を上げる必要性が説明されています
これらの欠点を回避する方法一つとして、コーティング剤を塗る必要があるのだと思います。

当然ですが、コーティング剤はそれほど厚い訳ではないので、ヘッドライト本体のPCに影響が出るよりも先にコーティング剤が剝げることがあります。
PC自体は黄変しますが、ヘッドライトが白濁している印象をもたせるのは、斑に剥げたコーティング剤の影響が含まれると思います。

コーティング剤に求められる性能

上記の特許調査で「UVで黄変する」、「表面だけ硬度、耐擦傷性、耐候性を上げる」というキーワードが出ているので、「UVカットできて、かつ硬度、耐擦傷性、耐候性を上げる」ことが肝要だといえます。

CCIのコーティング剤はこの2点をかなり高い性能で満足しています。日焼け止めのようにUVカットの能力が定量的には分かりませんが、UVカット機能はあります。

このコーティング剤は2液混合タイプのもので、混合することで初めて硬度が得られます。他製品と比較しにくいですが、混合しない1液で作れる硬度よりも高そうな気はします。

この製品のセットの中には研磨剤のクリーナーと紙やすりも入っています。研磨剤等で古いコーティング剤を完全に削り落としてから新しいコーティング剤を塗布することで、更に綺麗な仕上がりになるようにしています。

施工のBefore/After

論より証拠で、施工前のBefore/Afterと経年した様子を示します。
この2枚は22年の10月に施工した時のものです。さすがに曇りは綺麗になってますね。うまく施工できれば塗跡もほとんど分かりません。

左:施工前、右:施工後

施工後、約1年半経過した24年5月末現在の様子です。メーカの2年というのは本当だと思います。
近くに寄って見ると、部分的なコーティングの剝がれなり劣化なりが少しありますが、全体としては綺麗なままという印象です。
ちなみに、この車は普段、青空駐車で洗車は洗車機という、あまりいい扱いではないです。

施工後、1年半経過

違う車になりますが3年以上経過したヘッドライトがこんな感じ。正面からの写真だと黄変している感じはそれほどではないかと思います。

右の写真で分かるかと思いますが、劣化してくると斑に剥げるのと、塗布時に伸ばした跡が少し浮き出てボコボコしています。ガーゼにとった薬剤を伸ばして塗布するので、仕方ないかもしれません。

左:正面から撮影、右:斜めから撮影

最後に

DIYでヘッドライトのメンテをする薬剤等は各種販売されていますが、CCIのコーティング剤は2000円以下で、2年くらいは良好な状態を保つことから、コストパフォーマンスがいいと思います。オススメです。
今回は白い車に施工しようとリピート購入しました。

今回は、前半に特許文章から発明に至る困りごとというか、問題点を抽出することをしてみました。
特許文章は学術論文とは異なり、査読されいないため、全てが正しいという訳ではないことに留意する必要があります。

しかし、複数の特許文章において、内容が共通しているのであれば、信頼性の高い情報だろうと推測できます。
「必要は発明の母」とはいいますが、この必要なことを特許文章から探すこともできるという事例紹介の記事にもなりました。

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最後までお読みいただきありがとうございます!
特許調査に間違いなどがあれば、ご指摘をいただければ幸いです。

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