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200510_時は、経つ

吉祥寺に行く用事があったので、昔アルバイトをしていたビストロの前を通ってみた。少しテイストが変わったなあとおもう気もしつつ、まち全体が自粛ムードの中、粋な音楽が流れていて、他のお店たちとは、世界線が違う感じは、相変わらずだ。

お店の前でテイクアウトの呼び込みをしているお兄さんたちと、「昔ここでバイトしてたんですよ~」なんていう会話をしながら、自分がここで働いていたのが何年前かを計算してみたら、なんと10年前…時は、経つ。この日の私は、薄メークで、マスクをして、ポロワンピを着て、前髪切りたて。どこからどう見ても20歳くらいにしか見えなかっただろう。私が10年前にここでバイトしてたって言ったとき、彼らは変な顔をしていた。あの顔は、明らかに、過信(?)ではなく、「10年前のこの人、何歳やねん…」だったと思う。

このお店で働くことになったきっかけは、道を歩いていて、ピンと来たから、ただそれだけだった。「直感が来る」と分かって、散歩をしていた。そして、直感が来た。長続きしない派の私が、最も長く続けたバイトだったと思う。それでも、2年間だけれど。

このお店にいる時間が、好きだった。今でも、あの世界に一歩足を踏み入れるだけで、ワクワクしてしまう。半地下のロマン。あまり人には言いたくないけど、テラス席が最高なんだよね。コロナが開けたら、大好きな人たちを連れてまたこの店に食べにきたい。

好きな理由の一つが、料理長だった。寡黙で、こわくて、かっこよくて、繊細で、ちゃーみんぐな料理長。大っ嫌いで、大好きだった。今も。基本的にはガサツな私は、よく怒られていた。何度か、他のバイトメンバーに止められながらも、バトルもした。(あの頃から、理不尽に怒られるのは、相手が誰であっても、許せなかったんだなあ、私は。ストリートファイター。)

最高にガサツだった私が、人と共同生活したりできるくらいlessガサツになったのは、今思えば、料理長のおかげ。全く周りの見えない主観女子だった私が、客観的に物事をみることのできる人の世界観を少し理解できるようになったのも、料理長のおかげ。たまに開かれる営業終了後の飲み会@お店では、料理人たちが作ってくれる最高の料理が出され、お店のワインやカクテルは作り放題、でも馬鹿みたいに酔っ払うわけではない。でも、楽しく酔う。テニスサークルで下品な飲み方ばかりしていた私にとって、「私は、周りの同年代と比べて、少し大人の世界にいるのよ」というような気分を味あわせてくれた。あの頃、本当に、楽しかった。

卒業をしてからも、1年に1回くらいは、どうしてもこの店に来たい日があって、飲み食いしに行っていた。バイトや社員は変わってしまったが、料理長だけはいつもいてくれる安心感があった。料理長は、私が訪れると嬉しそうにしてくれて、「あの頃はたのしかったなあ」という話をしたり、ワインの話をしてくれたりした。バイトをしていたころとは違う関係性が築かれていった。

この日も、当然、料理長がいるもんだと思って、テイクアウトを注文しながらも、中をちらちら見ていた。でもなかなか見つからないので、諦めてバイトボーイに聞いてみたところ、「1年前くらいに、辞められました」とのこと。

10年も経ったんだ。当然だ。私だって、最近は、年に何回も、仕事も暮らしも変わっている。私は、どんどん、変化している。

でも、変わってほしくなかった。あそこに、ずっといてほしかった。いてくれると思っていた。

自分はどんどん変わるのに、勝手な話だよなあ。

勝手だけど、切なかった。何の落ちもないけど、今夜は、行き場のないこの切ない気持ちを抱いて、眠ろう。

Good night. 

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どうせ書いている日記。独り言を、つらつらと。閉じておく理由もみつからないので、公開してみることに。ちょっとやってみて、意味がありそうであれ…

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