重い肩を軽くする方法Part2
前回の続きになります。
前回の記事はこちらからどうぞ
https://note.com/msuatcym/n/nd0515e6dfda5
今回の内容は、
前鋸筋下部線維の機能低下が肩に与える影響を中心に書きたいと思います。
まずは前鋸筋を考えてみましょう。
起始 第1-8 or 9肋骨の外側面
停止
上部:肩甲骨の上角
中部:肩甲骨の内側縁
下部:肩甲骨の下角
機能
上部:肩甲骨の回旋形成
中部:肩甲骨の外転
下部:肩甲骨の上方回旋
神経支配
上部:長胸神経C5, 6, 7 +菱形筋枝からのC4, 5
中部・下部:長胸神経C5, 6, 7
という形で非常に複雑な筋なんですよね。
長胸神経の圧迫も考えなければいけませんね。
そして、前鋸筋は菱形筋との線維性結合組織があり、
前鋸筋の下部線維になる程、前鋸筋との連結が深くなるという研究結果もあります。
それに加えて、
前鋸筋と外腹斜筋の機能的関連も強いときた(胸郭の安定性)
そしてそして...
前鋸筋上部は補助呼吸筋として、胸郭の挙上にも関わっています。
胸郭の挙上が多くなると、前鋸筋下部線維のポジションが悪くなり、
筋発揮がうまくできなくなる。
その結果肩甲骨の上方回旋ができなくなり、
肩が上がりにくくなるということにも繋がってくるということですね。
野球選手で肩で息をすることが交代のタイミングということも頷けますね。
ということで、
色々考察したいのは山々ですが、
今回は2つだけエクササイズを紹介したいと思います。
1つ目は......
ウォールスライドです。
この画像では腕のみを壁につけていますが、
ストレッチポールなど壁と腕の間に挟んで使うこともできます。
注意するべきポイントとしては、
1. スタートポジションで肩甲骨が上方回旋していないか
2. 体幹の伸展が起きていないか
3. 肩甲骨が挙上していないか
また肩甲骨の後傾が出ているかも重要になってきますね。
2つ目のエクササイズは...
プッシュアッププラスです。
プッシュアッププラスは、
通常のプッシュアップにプラスして、
最高時に肩甲骨を外転させるというものです。
下の画像の1-3は安定した地面でプッシュアッププラス
4-6は不安定な地面でのプッシュアッププラス
Parkらの論文では、不安定の地面の方が安定した地面よりも
前鋸筋下部の活動が多いということでした。
注意点としては、
1. 肩甲骨の挙上をしないか
2. 脊柱が直線になっているか
3. 肩関節が外旋しているか(肩甲骨が下方回旋している)
4. 肩甲骨が上方回旋していないか
バリエーションとしては、
肩関節の屈曲角度を変えることで、
前鋸筋の様々な線維に刺激を与えることができますね。
今日紹介したエクササイズは簡単で一般的なものですが、
指導するポイントや説明の仕方で効果は大きく変わってくると思います。
流行・おしゃれ・オリジナリティを求めるのではなく、
解剖学・生理学・物理学(もちろん脳の機能改善なども)を基本として、
エクササイズプログラムを作成していくことが大切だと最近思います。
参考文献
Hardwick, D. H., Beebe, J. A., McDonnell, M. K., & Lang, C. E. (2006). A comparison of serratus anterior muscle activation during a wall slide exercise and other traditional exercises. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 36(12), 903-910.
Park, S. Y., & Yoo, W. G. (2011). Differential activation of parts of the serratus anterior muscle during push-up variations on stable and unstable bases of support. Journal of Electromyography and Kinesiology, 21(5), 861-867.
那須久代, & 秋田恵一. (2011). 前鋸筋の形態とその神経支配: 機能解剖学的考察. In 理学療法学 Supplement Vol. 38 Suppl. No. 2 (第 46 回日本理学療法学術大会 抄録集) (pp. AbPI1095-AbPI1095). 公益社団法人 日本理学療法士協会.
羽崎完, 藤田ゆかり, & 山田遼. (2012). 菱形筋と前鋸筋は機能的に連結しているか?. In 理学療法学 Supplement Vol. 39 Suppl. No. 2 (第 47 回日本理学療法学術大会 抄録集) (pp. Ab0440-Ab0440). 公益社団法人 日本理学療法士協会.
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