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オタクサイドに抗議します - 今わかっていることと3つの提言 - 全国フェミニスト議員連盟宛ネット署名関係者に届いた殺害・爆破予告事件


「10月1日15時34分に爆弾積んだプリウスで突っ込んで殺害・爆破する」

不幸中の幸いというべきか、この予告が実行に移されることはありませんでした。
このようなテロ行為に断固として抗議します。

今回の記事では経緯と問題点の確認、ぼくからの提言を書きます。


## テロ予告の経緯

まず経緯を簡単にまとめます。

- ある表現が「性犯罪を誘発する」などの抗議により削除された。
- 表現を守ろうとする有志が抗議者に公開質問のネット署名を集めた。
- 署名の撤回と辞職を求める殺害・爆破予告が起きた。

流れを確認します。

千葉県松戸市のご当地Vtuber戸定 梨香 @Tojou_Linca 」さんと、警察署がコラボして、交通ルールの啓発動画が公開された。

啓発動画の内容に対して全国フェミニスト議員連盟から抗議が出された。https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=4153667894742846&id=750861658356837&m_entstream_source=timeline&__tn__=%2As%2As-R

抗議の内容は「本動画は、女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長しています。」「公共機関である警察署が、女児を性的対象とするようなアニメキャラクターを採用することは絶対にあってはならないことです。」など。

抗議をだした全国フェミニスト議員連盟に対して、ネット署名で公開質問状がだされた。https://www.change.org/p/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88%E8%AD%B0%E5%93%A1%E9%80%A3%E7%9B%9F%E5%AE%9B%E6%8A%97%E8%AD%B0%E3%81%A8%E5%85%AC%E9%96%8B%E8%B3%AA%E5%95%8F%E7%8A%B6?signed=true

公開質問は「VTuberが地域の交通安全啓発をすることが、なぜ「性犯罪誘発」につながるのか、明確な機序をお答えください。」など4点。

署名賛同者有志代表
青識亜論 https://twitter.com/BlauerSeelowe
おぎの稔太田区議 https://ogino.link/

署名は 約6万6千筆集まった。(2021-10-02現在)

署名賛同者有志とVtuber関係会社宛に殺害・爆破予告がだされた。
警察署が被害届を受理したと、おぎの稔氏からツイートで発表があった。

詳細は、複数のマスメディアが報じています。
ここでは最も新しいSankeiBizの記事を紹介します。


ネット署名発信者出あり、殺害・爆破予告の被害者である、おぎの稔氏のツイートです。


殺害・爆破予告についての記事です。


上記記事内で引用されている殺害・爆破予告の内容です。

「アンフェ議員がネットでイキってるので、大田区役所、徳島県庁、株式会社Art Stone Entertainmentに15時34分に爆弾積んだプリウスで突っ込んで殺害・爆破する。イキリオタクに生きる価値なし」

「署名をやめて辞職したら、やめてやる」


## 犯人の目的

殺害・爆破予告には目的をこう記されています。

アンフェ議員がネットでイキってるので

「アンフェ」とは「アンチフェミニスト OR アンチフェミニズム」のことでしょう。

「イキっている」の「イキる」とは、「調子に乗って偉そうにする。(明鏡国語辞典第三版)」という意味です。

また、殺害・爆破予告にはこうも記されています。

イキリオタクに生きる価値なし

オタク」とは「ある趣味に没頭し、それについて非常に詳しい人。(明鏡国語辞典第三版)」のことです。

つまり、殺害・爆破予告の目的は以下の2点です。

「アンチフェミの議員が調子に乗って偉そうにしているから
調子に乗って偉そうにしている、"ある趣味に没頭し、それについて非常に詳しい人"に、生きる価値はないから

無茶苦茶な理屈で、到底容認されるものではありません(無論、殺害・爆破予告に容認される理屈などありませんが)。


## 問題点

この殺害・爆破予告の問題点は以下の3点です。

1. 犯罪である
2. 表現の自由に対する暴力を使った脅しである
3. テロである


1. 犯罪である

脅迫罪と威力業務妨害罪が該当するでしょう。

脅迫
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
威力業務妨害
第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045


2. 表現の自由に対する暴力を使った脅しである

この殺害・爆破予告は以下2つの表現行為を脅かしています。

① ネット署名を使った公開質問および「抗議に対する抗議」という表現行為。
② Vtuberなどの「オタク」表現行為。


3. テロである

この事件は単なる殺害・爆破予告ではありません。
「テロ予告」だ、という意見もありますが、違います。
予告ではなくテロそのものです。

日本におけるテロの定義を確認します。

テロリズム(広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。)」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a193125.htm
テロリズム」とは、一般には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、又は社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいう
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b193125.htm
テロリズムとは、ある政治的目的を達成するために、暗殺、殺害・爆破、破壊、監禁や拉致(らち)による自由束縛など過酷な手段で、敵対する当事者、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、攻撃の物理的な成果よりもそこで生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを図るものである。政治的目的をもつという意味で単なる暴力行為と異なるが、それらの目的には、政権の奪取や政権の攪乱(かくらん)・破壊、政治的・外交的優位の確立、報復、活動資金の獲得、自己宣伝などさまざまなものがある。これらテロリズムを行う主体をテロリストといい、個人から集団、あるいは政府や国家などが含まれる。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0-102010

重要な点は「恐怖」「特定の主義主張に基づき」「殺傷行為」の3点です。
テロリストが使う手段は必ずしも暴力ではなく、重要な要素は恐怖です。
テロリズムは英語で「terror(恐怖)+ism(主義)」です。

具体的な、日時・場所・行為内容・ターゲットを示し、「特定の主義主張に基づ」いた、殺害・爆破予告行為はテロです。許してはなりません。


### 事例

表現の自由を規制することを目的としたテロの事例をひとつ挙げます。

シャルリー・エブド襲撃事件
> 2015年1月7日、フランスの風刺週刊新聞『シャルリー・エブドCharlie Hebdo』の本社がイスラム過激派に襲撃され、同紙の編集長で風刺漫画家であったシャルボニエStéphane Charbonnier(1967―2015)をはじめ、社内にいたコラムニストや漫画家、警護の警官を含む12人が殺害・爆破された事件。
> 『シャルリー・エブド』紙は、2006年と2012年にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載し、さらに、2013年には漫画『ムハンマドの生涯』を発行したことなどから、イスラム社会から信仰を侮辱するものだとして強く非難されていた。殺害・爆破された編集長は殺害・爆破脅迫を受けて警察の警護対象者になっており、フランス政府からは掲載内容に関する自粛要請が行われていたという。しかし事件直前にはイスラム過激派の聖戦に参加する人を揶揄(やゆ)する風刺画を掲載した。
> また、シャルリー・エブド襲撃事件と並行して、パリ郊外南部のモンルージュで1月8日、女性警官が銃殺される事件が発生した。
> 3日間で17人が殺害・爆破され、20人以上が負傷した凄惨(せいさん)な事件に対し、パリでは参加者370万人という大規模なデモ行進が行われ、世界40か国の首脳も参加した。
> 事件の背景には、北アフリカなどからの移民のイスラム教徒が、差別や迫害を受けて先鋭化しているという社会問題があるとされる。事件後、ISやアルカイダ系組織は容疑者を英雄として称揚するメッセージを発表した。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%96%E3%83%89%E8%A5%B2%E6%92%83%E4%BA%8B%E4%BB%B6-1725964


このテロに抗議し、大規模な集会やデモ行進などが行われました。市民らとともに各国の首脳も参加し、その規模は数百万人ものぼりました。

スローガンは「Je suis Charlie(私はシャルリー)」で、日本でもSNSなどで連帯する動きがみられました。


## マスナリジュンの3つの提言

ぼくから、3つの提言です。

1. マスコミは取り上げる
2. 全国フェミニスト議員連盟は抗議声明をだす
3. 署名賛同者は暴走しない


1. マスコミは取り上げる
記事執筆時点で確認できているのは、先に引用したキャリコニュースのみです。多くの主要マスメディアがなぜこの事件を取り上げていないのかが不思議です。

この事件は殺害・爆破予告事件であり卑劣なテロです。警察の捜査は現在進行中でしょうが、言論や表現に対して殺害・爆破予告を使って脅したこの事件は、報道すべき重大事案です。


2. 全国フェミニスト議員連盟は抗議声明をだす

殺害・爆破予告には「署名をやめて辞職したら、やめてやる」とあります。

この「署名」とは、全国フェミニスト議員連盟あての公開質問状です。
全国フェミニスト議員連盟は署名にある公開質問に、期日を超えた今も答えていません。積極的に答えたくない事情があるのだろうと邪推されても仕方のない状況です。

犯人が全国フェミニスト議員連盟メンバーや賛同者とはおもいませんが、殺害・爆破予告の動機としてあげられた事案の発端となった存在として、また、市民の代表たる議員として、「このような卑劣なテロ行為を絶対に許してはならない」などの声明をだすべきです。


3. 署名賛同者は暴走しない

先にあげたフランスのシャルリー・エブド襲撃事件では、「私はシャルリー」のスローガンで大きな抗議行動が起きました。その動きは一部で移民排斥運動と混ざり、集団ヒステリー状態となりました。移民や特定宗教に対する差別として利用されたのです。

フランスの歴史学者エマニュエル・トッドは、事件後に出版した本の中で、このようなことを述べています。

> いたるところにシャルリが君臨していますが、シャルリは自らがどこへ向かっているのかを知りません。ポジティブな普遍的価値を意識的に標榜するときにさえ、無意識にはスケープゴートを探し始めているのです。

『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧』 (文春新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/B01B60ZC8M/


抱えている不満や怒りの矛先として、また、自分の正当性を証明するために、スケープゴートを探してはいけません。

幸い、今回の被害者の対応は極めて理性的で、署名賛同者らに対して抑制的であるよう促しています。




犯人の属性を憶測で語ることは、無益な分断を深めるだけです。憎悪が憎悪を呼び、最も弱い立場にいる人までが被害にあいます。
卑劣なテロ行為には毅然として抗議するとともに、理性的な言動をお願いします。


## むすび

殺害・爆破予告という、取り扱いに慎重さが求められる事案です。また、事態は現在進行形で動いており、情報も錯綜しています。今回の記事を書くことも拙速だったかもしれません。
この記事の内容に間違いがあれば、ぜひお知らせください。

最後になりましたが、殺害・爆破予告の対象として名指された被害者の方や関係者、ご家族や親しい方たちは、大変な恐怖とストレスを感じておられるとおもいます。心静かにすごせる時間が、一日でも早く戻りますことを、心からお祈り申し上げます。

犯人は自首しなさい。

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追記: 2021/10/03 14:30

- タイトルに「 - 全国フェミニスト議員連盟宛ネット署名関係者に届いた殺害・爆破予告事件」を加えました。

- タイトルの「オタクサイド」とは、「オタク」+「cide(殺人)」の意味の造語です。

- 新たな犯罪予告が届けられたようです。


サポートいただけると、ぼくが喜び、幸せな気分になることをお約束します。