MEMORIES

私はそんなに変ですか?
個性は持ってはいけないのですか?
あなたを好きになってはいけないですか?

そんな顔をしないでください。
個性は持ちません。
好きにも……なりません。

あなたが笑った顔を見るのが私の何よりの楽しみです。
ずっとずっと……。
あなたのことは私が一番知っています。
産まれた時から……やんちゃな子供に育ち、いつも怪我ばかり。私がいつも手当てをしていたんですよ? 我慢強くて泣くことが嫌いで、私の前では泣くことをしませんでしたね。
すくすくと、成長というのは本当に早いものですね。
いつだったか彼女が出来たと喜んで、そして振られたと落ち込んで、でも私の前では泣くことがありませんでしたね。

お父さん、お母さんが亡くなられた時も決して私の前では泣くことがありませんでした。
きっと私に隠れて泣いていたことでしょう。
そんなあなたが好きでした。いえ、今でもそしてこれからも、この気持ちは変わることはありません。でもあなたには言いません。

個性は持ちません。
好きにも……なりませんから。

あなたが死ぬまでそばにいます。

いつかあなたは言いましたね。
「ロボットは言われたことをしろ。個性は持つな」
その通りです。

でも、なぜでしょう。この気持ちは。
好きで、好きで、たまりません。

そんな気持ちを持つことはやっぱりおかしいことですよね?

あなたの寝顔をいつまでも眺めています。
最期にあなたは一言だけ「ありがとう」と言って目を閉じましたね。その時に私ははじめてあなたの流す涙というものを感じることができました。

私はやっぱりおかしいんですかね? 欠陥品だったのでしょうか?

流れるはずのないひとすじの涙が、確かに私の瞳からあなたの頬に垂れていったのを感じたのです。

「私の方こそ、今までありがとう」
そう言うと、私は彼と同じように目を閉じた。