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手が震えるようなことをやる

「すばらしい」の「す」に「的」をくっつけて「素敵」という熟語が生まれたらしい。「的」→「敵」になったのは「敵わない」から用いられたみたいだ。大正に発生、昭和に定着したという。

マイソウルブラザーの熊谷ゆ~ほくんがEPをリリースした。

『BLUE SUMMER, MY HEART BEAT』。「夏の隙間」の作詞を担当させてもらった。この季節にぴったりのナンバー揃い。すべてを自分一人で作ったというから驚きだ。いったいどれだけの労力がかかったことだろう。自分も作り手の端くれとして、自らの作品を表に出すことの勇気と大変さの尊さを一応知っているつもりだ。

個人的には「心臓と波の音」が大好きだ。アップテンポでワクワクする。夏が始まる! いやもう始まっていた! この曲を聴いていると夏が終わる前にもう一周夏ができる感じがして、まだまだやり直せる!と思わせてくれる。 

「炭酸(feat. 妻)」も相当ヤバい。語彙力を喪失してしまった。妻様の歌声が凄まじい。プロですよね。鳥肌が立つ。二人にはぜひこの歌を音楽番組で歌ってほしい!と願わずにはいられないくらい、素晴らしくて敵わない。なんかもう敵わない。圧倒される。

すぐに自分自身にベクトルが向いてしまう悪い癖が出るが「手が震えるようなこと」をやりたいと思った。これも言いたいだけで終わってしまわないように気をつけたいけれど、自信がないことを、緊張してたまらないことを、やる。かっこつけてばかりの自分がいて、慣れた手つきで、すました顔で、刺激のない日々を送っている。本当は震えたいのに、怖くて、それができないままでいる。久しぶりに「勇気」という言葉を思い出した。

良い作品とはなんだろう。人の心を少しでも動かすことができたのなら、それは良い作品と呼べるのではないだろうか。動かそうと思っても動かせない人の心を、自らが「動く」ことで動かさせる。だがそれは怖くてなかなかできない。それをやってみせる人がいると勇気づけられる。その人の内面に触れたとき、こちらの心までも振動する。

素敵な作品には、私に鼓動があることを思い出させくれる祈りがある。MY HEART BEAT。音楽から心が伝わってくる。向き合おうとしてこなかった、自分の見たくない部分を、大丈夫怖くないよと言って手を差し伸べてくれるような気配がする。目を開けると、海が見える。空が見える。深い海の底を潜る勇気もあれば、水面から顔を出して光を直視する勇気もある。

FIRE STARTER。火をつける前はドキドキする。自分のやったことで悪いことが燃え広がってしまったらどうしよう。でも、つける。明日はもうこないかもしれないから、今やらないと。手が震える。自分のやったことが誰かの心を動かすと信じて。呪いではなく、祈りを込めて。火が消えたら、またつけよう。その度にドキドキしよう。

苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。