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ゲーム業界大胆予想:『バルダーズ・ゲート3』は国産の後追いが出る

『バルダーズ・ゲート3』は2023年12月の日本語版発売以来、「The Game Awards』をはじめとする海外でのゲーム賞の多数受賞もあり、いわゆる「洋ゲー」に興味を持つゲーマー達の注目を大いに集めました。

同作はTRPGのシステムをコンピューターゲームに落とし込んだような「CRPG」と呼ばれるジャンルのゲームであり、欧米圏では長らく親しまれてきましたが、日本で注目される程大きな話題になる事はありませんでした。

原作『ダンジョンズ&ドラゴンズ』もコンピューターゲーム方面では長らく目立った動きがなかったため、日本国内からはノーマークだったところに、このバルダーズ・ゲート3が現れたのです。

日本語版では「すべてのRPGを過去にする」と謳われていましたが、過去になった先には、何があるのでしょうか?

国産の後追い

『バルダーズ・ゲート3』は、洋風の絵柄や世界観、日本人ユーザーの平均的な習熟度は高いと言えない『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第5版のシステムを採用、質が高いとは言えないチュートリアルなど、多数の逆風要素を抱えながらも、少なくとも悪辣なまとめサイトが取り上げる程度には国内でニッチを獲得しました。

個人的に、この盛り上がり方に思い当たる例があります。『ハースストーン』です。

『ハースストーン』は現在のデジタルTCGジャンルのはしりとして世界的な人気を確立しました。
そして、『Warcraft』という日本人にとってほとんど馴染みのないシリーズを原作としていながらも、国内でもニッチを拡大し日本語版リリースにまで至っています。

そして、そこに現れた後追いの『シャドウバース』。日本人好みのビジュアルでハースストーンを超える国内人気を得ています。

ハースストーンとバルダーズ・ゲート3には大きな類似点が複数あります。

  • 日本人には馴染みのない原作

  • 海外で多大な人気を獲得

  • 日本国内でもニッチな人気を得る

ここから考えるに、まだ公になっていないだけで、ここに目をつけ、日本なりの感性でバルダーズ・ゲート3の流れを汲むコンピューターRPGを作ろうという動きはもう存在しているのではないかと私は考えています。

細かい部分は馴染みがある

バルダーズ・ゲート3は全体を見ると馴染みのない存在に見えますが、パーツ単位に分解すると、日本人にも馴染みのある要素が浮かび上がってきます。

選択肢によるルート分岐などは、ビジュアルノベル方面で広く使われています。
見下ろし型の戦闘画面も、『ファイアーエムブレム』や『タクティクスオウガ』などのいわゆる「シミュレーションRPG」と同じルーツを持っています。

実際の所、馴染みがないのはキリスト教圏的な世界観と物語の方向性、そしてD&Dのシステムだけなのです。

国産の後追いとして、こういった要素を強調することで国内のゲーム史の自然な延長線上としてアピールできる可能性は大いにあります。

しかし、完全なコピーという訳にもいかないでしょう。
バルダーズ・ゲート3の開発規模は非常に大きく、マレーシア、ヨーロッパ、カナダの3拠点で、高度に自動化された開発・連絡パイプラインによる24時間体制の開発を行ってもなお5年以上の開発期間を要しました。

言語や資金の壁などにより、日本が欧米圏級の大規模な開発チームにアクセスし辛い以上、どこかで妥協点が必要になります。

妥協点

ゲームの長さ

ゲームクリアまでの時間を調査、掲載するサイトHowLongToBeat.comによれば、バルダーズ・ゲート3は一周直進でクリアするまでに69時間、細かい要素の回収を含めると164時間を要するという情報があります。(2024/11/15付)

Steamの実績統計によれば、全3部構成の同作において、チュートリアルを終えたプレイヤーが91.0%に対し、第1部を一度でも終えたプレイヤーは52.5%、エンディングを迎えたプレイヤーは22.8%です(2024/11/12時点)。
この統計は、その狂気的なまでの分量が大半のプレイヤーにとって簡単にお腹いっぱいになってしまう事を示しています。

後追いが出るにしても、バルダーズ・ゲート3に比べて全体の量が非常に少なくなる事は間違いありません。
しかし、全体の長さを短縮することで、マルチエンディングを制覇するための周回プレイをうながす事にもつながります。

キャラクターメイクの是非

これはどちらに転ぶとも考えられます。

よりTRPGらしいプレイフィールを求めるなら、キャラクターメイクも導入されるでしょう。
一方で、固定のキャラクターのみで開発コストをカットし、その分各ルートに濃密な物語をもたせることができます。

システム

『バルダーズ・ゲート3』は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』第5版のゲーム化として、基本のシステムは原作に忠実である事が求められていました。

D&Dのシステムがプレイヤーに理解する事を求める要素は国産のコンピューターRPGに比べれば複雑な上、バルダーズ・ゲート3のチュートリアルはほぼ間違いなくD&Dが必修科目レベルで浸透している欧米圏の文化前提で、お世辞にも優れた物とは言えません。
しかし、後追いの作品にはその必要性がありません。ユーザビリティの観点で大きく勝る作品とすることができます。

プレイヤーの選択肢

バルダーズ・ゲート3を含む海外のCRPGは、TRPGの延長線上として、プレイヤーに多種多様な行動が認められ、ゲームはそれに対応するように作られていました。しかし、後追いがTRPG要素に目を向けない場合、開発コストの観点、そして行動が制限されても仕方ないという日本の文化的な差異から、既存のJRPG同様に極度に抽象化される部分も出てくるでしょう。

一方で、TRPG的な要素に目を向ける場合、『ドラゴンクエスト』シリーズ初期のみに登場した鍵開けの魔法「アバカム」のように、JRPGとして発展していく中で廃れていった、TRPGの名残りといえる要素が逆に復活する可能性も秘めています。

TRPGルネサンスがやってくる

スクウェア・エニックスの『SaGa』シリーズを統括する河津秋敏氏や、フロムソフトウェアの宮崎英高氏など、現在のコンピューターRPGを支えるクリエイター達には初期の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のようなTRPGやその直系にあたる『ウィザードリィ』『ウルティマ』などのコンピューターゲーム、あるいは「ゲームブック」と呼ばれるものに強い影響を受けた者も多く存在しています。

初期の『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』シリーズを経て、スーパーファミコンや初代プレイステーション世代以降、コンピューターのRPGへのTRPGおよびD&D的な影響は鳴りを潜めていましたが、ここ数年『エルデンリング』や『ファイナルファンタジー14』などのTRPG化に代表されるTRPGへの注目も含め、再びTRPG的コンテキストを強めたコンピューターゲームの企画にゴーサインが出るかもしれません。

バルダーズ・ゲート3そのものの存在は日本では小さな物だったかもしれません。しかし、その爪痕は皆さんが思う以上に大きく広がっているのかもしれません…。


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