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12.【MSI主要コンセプト8-6】筋力が強いからと言って正しい運動にはつながらない

このブログは、MSI(Movement System Impairment)について解説することを目的としています。
MSIについては、こちらをご覧ください。
MSIでは、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。


はじめに

今回は、" 筋力が強いからと言って正しい運動にはつながらない"についてご紹介します。
筋トレは痛みがある方に対するリハビリの一環として一般的に行われています。
身体を動かす原動力は筋肉なので、筋トレは重要です。
しかし、筋力が改善しても症状が改善しない経験をしたことがある方は多いと思います。
この原因として、筋力が強くなっても動き方が改善していない場合が多いです。
この記事では、"筋力が強くなること"と"動きの改善"の違いについて解説します。
”患者さんの筋力は改善したのに症状の改善につながらなくて悩んでいる方”のヒントになる内容になっています。

"筋力が強いからと言って正しい運動にはつながらない"とは?

筋肉は身体の中で唯一、身体を動かす機能を持っています。
筋肉が収縮することで、関節が動き、身体を動かすことができます。
身体には約640個の筋肉があるため、関節を適切に動かすためにはこれらの筋肉をバランスよく動かす必要があります。
一方で、筋力トレーニングは1〜数個の筋肉にターゲットを絞りトレーニングをしていくことが一般的です。
そのため、筋力トレーニングをしても、関節をバランスよく動かす事にはつながりません。
多くの関節が連結している身体をコントロールするには、筋肉をバランスよく動かす”協調性”が欠かないから
です。
これらの根拠から、"筋力が強いからと言って正しい運動にはつながらない"のです。
全ての筋トレが不要というわけではありません。
今回強調したいのは、”筋力がある”=”正しい運動が出来る”という方程式は成り立たないということです。

筋力があるから正しい運動ができるわけではない

筋力改善が症状改善につながらない場合、どうしたらいいか?

この場合、問題は筋力不足ではなく、正しい運動が行えていない可能性があります。
そのため、”関節の動きや動作が正しく(過剰な負担のかからない状態で)行えているか”という視点で考えることが重要になります。
具体的な例で考えていきましょう。

”肩関節外旋で痛みがある症例”で考えてみます。
肩関節の外旋筋力を改善するためのトレーニングとして、
1st position(立位で脇を締めて肘を90°に曲げた姿勢)で肩関節を外旋する運動がよく行われます。

1st肩関節外旋エクササイズ

外旋筋力は改善したのに症状が改善していない場合、肩甲上腕関節で正しい外旋の運動が行えていない事が原因になることが多いです。
代表的なエラーパターンとしては、三角筋後部繊維が過剰に活動して上腕骨骨頭が前方滑りしている場合です。
また、肩甲骨内転による代償パターンもよくみられるエラーパターンです。
上腕骨頭の前方滑りが痛みの原因の場合、外旋筋力は改善しても症状の改善にはつながりません。
正しい外旋の運動が症状の改善につながります。
このように、単関節のトレーニングにおいても目的とした関節が正しく動いているかを考えることが重要になります。

正常な肩関節外旋(左)と上腕骨頭の前方滑りが生じた肩関節外旋(右)
肩関節外旋のエラーパターンとしてよくみられる肩甲骨内転

まとめ
今回は、MSIの重要な8つのコンセプトの一つである、
「 筋力が強いからと言って正しい運動にはつながらない」についてご紹介しました。
筋力が強くなっても症状が改善しない経験をしたセラピストは多いと思います。
筋力は大切ですが、「正しい運動が生じているか?」という視点で考えることで、動きが改善し、症状の改善につながります。

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2024/9/7-8ににMSSTOKYO2024が行われます
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