見出し画像

介護拒否が多いKさんへの気持ちが変わった日 

介護職員の葛藤

こんにちは😀介護職7年目のmocmocです。
今日は何かというと介護拒否をされていたKさんが「変わってくれた」ではなく、私の気持ちが変わった日の話をしたいと思います。
グループホームで1年ほど勤めた頃の事です。

■認知症のこと

私は高齢者のグループホームで勤務しています。
グループホームは認知症の状態にある高齢者の方が、共同で生活する施設です。介護職員が24時間常駐し、見守りや介助をしながら安全に暮らしていただいています。
なので元になる病気の違いや、症状の軽い、重いはあるものの皆さん何かしらの認知症の症状があります。


軽度の記憶障害のみで、一見ではそれと分からない方もいます。
ある方は自分が忘れていく事を自覚し、お部屋で涙を流していた事がありました。

症状が進行してしまい話すことも、食べることも、歩くことも忘れてしまった方もいました。

ご家族や御本人の気持ちになったら、本当に切なくて悲しい事だと思います。

環境や周囲の人の接し方によって、改善もすれば、進行してしまうこともあります。

グループホームで生活している方は、自宅での生活が難しくなり、ただでさえ知らない場所に来て不安な気持ちもあります。理解できず混乱してしまう場合も多いです。

できるだけ安心してもらえる接し方、表情にも気を付けようと日々思っています。


■グループホームでの仕事

そうは言っても…

日々、限られた時間しかありません。

少ない職員で、9名の食事、入浴や排泄介助、お掃除から洗濯、レクリエーション、介護記録や日誌など。


特養や老健といった大きな施設とは比べものにならないとは思いますが、こなさなければならない業務が沢山あります。

沢山お喋りしたい。ゆっくりお風呂に入ってもらいたい。転倒の危険がある方が歩きたいなら、いつまでも側で歩いてあげたい。


と思うのですが、時間までに終わっていない業務があれば、他の職員に負担がいってしまいます。

介護職の皆さんは、ほとんどの方が経験する葛藤ではないでしょうか。


困った人というレッテル


■介護拒否のあるKさん

そんな中で芽生えてしまうのが…
「あー、この方は拒否があるから時間かかるなー」
「すぐに怒り出すから、何か別の理由でごまかしながら誘導しようかな」
という気持ちです。


Kさんは塗り絵や脳トレプリントは好きなのですが、入浴、トイレ誘導(パンツがかなり濡れていても本人はわからないので誘導して、キレイにしたいのです。)など

毎回、声をかけるたび「もう入ったよ!」「なんで何回も入るの!」「今トイレいったばかりだよ」と怒り出してしまいます。
どんなに笑顔で声掛けしてもだめなのです。

他の職員も困っていて、カンファレンスでも話し合いますが、解決しません。
なんとか脱衣場に来てもらい、言い争いになってしまう職員もいます。


そんなKさんが、ある日大好きな塗り絵をしていました。
いつもなら「キレイですね」「何のお花ですか」「飾りましょうか」など穏やかな会話になるのですが…

声を掛けると「ちょっとなんで見るの!」と怒り出してしまいました。

認知症の方には急に不穏になる方もいるため、特にびっくりはせず「ごめんね」と、その場を離れました。

離れたところでKさんを見ていると、何やらゴシゴシと消してはまた書いて、また消します。周りをキョロキョロ何かを探しています。

Kさんは自分の名前が書けなかったのです。周りに自分の名前が書いてあるものがないか探していたのです。

名前を書いているところは何度も見ているので、その時初めて困ってしまったのか、今までも何度かあったのか。

時間をおいて近づき、Kさんの作品を綴るファイルを渡しました。名前が貼ってあります。
「これに綴じましょうか。」「漢字ってだんだん出てこなくなりますよね。」「私もしょっちゅうありますよ。」

そんな声掛けで笑顔になってくれたKさん。

その出来事をさかいに、私のKさんに対する気持ちが180度変わりました。かわいそうと思ったわけではありません。
多分私でも同じように隠したくなる。と共感したのです。

私はそれまで笑顔では接していましたが、知らずしらず「困った人」「時間がかかる人」というレッテルを貼っていた事に気づいたのです。


それからは、入浴の時もトイレの時も、嘘のようにKさんは拒否しなくなりました。

言い方を変えたわけでも、ごまかすような事を言う訳でもないのに、ニコニコとお風呂に入ってくれます。

多分、私の心の黒い部分が消えたからだと思うのです。

汚れたパンツを見せるのが恥ずかしい、そう思っているのは分かっていたつもりですが、レッテルのほうが大きくなっていたのではないかと思うのです。

Kさんは「困った人」ではなく困っていたのに…


それからもう3〜4年がたちます。
Kさんは今日も笑顔です。


読んで下さりありがとうございました。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?