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映画「ドーナツもり」(ネタバレあり)

 

公子はイラストレーターの仕事の傍ら、東京・神楽坂にある、小さなドーナツ屋でバイトをしている。このお店に訪れるお客さんは風変わりな人々ばかり。好奇心旺盛な公子は彼らの人生にお節介にも介入していく。そして彼らとの交流を通して、自分自身と向き合うようになる。(C) 定谷美海

提供者からの紹介文

 アマプラで観た44分の短編映画だが評価は平均4.4と高い。主演した公子役の中澤梓佐さんは容姿や雰囲気が原田美枝子さんに似ている気がしたが存在感を放っている。
 ドーナツには、どうして穴が空いているのか、その理由には興味はないけれど、ドーナツの穴を通して見える世界は愛おしいようなことを公子は冒頭に語る。
 彼女はイラストレーターの仕事をしているが、必ずしも思うようには評価されない。別れた彼氏はカメラマンで公子とよりを戻したいのか軽薄な感じで、まとわりついてくる。それを、けっこう邪険に扱う公子だが、彼女の本心も定まっていないようだ。
 ドーナツ店には、いろいろなお客がやってくる。ドーナツを意中の人のために買って行った青年がゲイだったとは気づかなかった公子はたまたま彼が男から振られるところを目にした。
 彼氏を頻繁に変える女の子が、新しい彼氏を公子のドーナツ屋に連れてきては、めいめいが注文した後で、「ドーナツ半分こにしよう」と言うのだが、男の反応は様々だった。
 いつも、オールドファッションのドーナッツだけを注文して帰っていく暗くて無愛想な女性は夫を亡くしたばかりだったことを、別れた彼氏を通じて公子は知った。
 なぜか、公子はドーナッツの穴から覗けた世界を放っておけなくて、おせっかいを焼いてしまうのだが、それら変わったお客さんたちとのコミュニケーションを通じて、お互いに少しばかりの気づきを得てホッコリするのだった。
 特に大きな事件が起こるわけではない。変わったお客さんたちだが、失恋や離別は誰もが経験することだろう。神楽坂というロケーションがゆったりした時間の流れを感じさせるのだろうか。お客も公子も、自分に欠けている「穴」のようなものを悲嘆で塞ぐのではなくて、落ち着きを取り戻して少し前向きに歩もうと考え直すところがよいのかな。

監督:定谷美海
出演:中澤梓佐, 足立智充, 髙橋雄祐
提供:定谷美海

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