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ライブハウスのおもろい出演者たち


マスターのぼやき

 先週「シンガーソングライターになりたい♫」という記事を公開した。ライブハウスで音楽の創作と表現の活動をするアマチュア・ミュージシャンの方々について、思うところを少し真面目に書いたのだった。その後、私がお世話になっているライブハウスのマスターがX(旧twitter)で少しぼやいていたので、それについても少し書いてみたい。

 マスターはXでは素性を明かして投稿しているのだが、無断で二次利用させていただいているので、ここでは氏名と店名を伏せておく。また、マスターの投稿は真面目な内容なのだが、私は野次馬的な立場から、ちょっと不謹慎な感想も記すことになるし、マスターがXに投稿した以外のぼやきにもふれるので、その方がよいと思う。

 その店の業態はバーでカウンター席とテーブル席を合わせて最大20人くらい収容できる。私はオープンマイクのイベントで時々ギターを練習させてもらいに行くが店のイベントの柱は、主にアマチュアを対象としたワンマンまたは対バンでのライブである。マスターのポリシーとして開店してから20年以上、ライブ出演者にノルマを課さず、チャージバックもしている。店がリスクを引き受けているのだが、最近はそれに甘える出演者がチラホラといるらしい。

出演者の甘え

 先週の投稿でもふれたようにライブの出演者にノルマを課すライブハウスは多い。出演者が先に出演料(=店が期待する売上)としてノルマを支払い、お客が所定の基準よりも多く聴きに来てくれたらチャージバックするという店が多いはずだ。中には出演者がノルマを支払うとチケットを渡されて、知人友人に売りさばいてもらうという店もある。

 しかるに私がお世話になっている店は20年以上、アマチュア出演者に対してもノルマなしでライブを催してきた。だが、最近、当店に来るようになった出演者には、ノルマがないのをよいことに集客に努力しない人がいるそうだ。中には、SNSなどでの告知さえしない人もいることにマスターは悩んでいる。最低、告知だけはしてほしいと言っても、しない人はしないらしい。

 マスターにしてみれば、告知すらしないで当日お客が来なかったら商売上がったりだし、人に聴いてもらいたくないライブなら最初からやらないでほしいところだろう。ところが過去には、自信満々に次のように言い放った出演者が二人もいたそうだ。

こちらの店は小さいから、私がちょっと告知したら一瞬で店に入りきれないくらいのお客さんが殺到しちゃって、来てくれた人にもお店にも迷惑がかかるので今回はあえて告知はしません。

 結果は二人とも、当日見事に一人も客が来なかったので、店は大赤字だったそうな。私と面識がない人物だろうが、厨二病の疑いがある出演者だなぁ、とマスターの投稿を読んで思った。そんなに自信があるなら、大きくてノルマのある店でやればよいのにとも。また、つぎのような実例もあったそうだ。

 それは、過去2回のライブでは満席に近いお客が聴きに来た出演者のこと。ところが3回目にはたったの数人に激減してしまったそうだ。その人は次のように言ったそうだ。

今日のライブは、僕からの告知を一切しなかったら、どれだけ人が集まるか実験してみたんですが、やっぱり少なかったですね、ハハハ(照れ笑い)。

 自分の本当の人気を知りたかったのだろうか?でも、そういう"実験"はノルマがある店でやらないとな〜。店に迷惑をかけてもいいや、と考えたのだろうが、個人的には、その思考回路を理解できない。

ここまで来ると・・・単なる世間知らず?それともジコチュー?

 これは、Xに投稿された話ではなくて、10年くらい前に、個人的にマスターから聞いた話である。アコースティックギターで弾き語りをする、当時30歳前後の自称ミュージシャンの男性。働いているのか、いないのかわからないくらい、いつも懐がピーピー言っていたらしい。

 彼がライブをやりたいと言って初めて店に来た時に、のっけから「ギャラはもらえるんですよね?」と尋ねたそうだ。マスターが「たくさんお客さんが来てくれたら、こういう基準でチャージバックしますよ」と説明すると、彼は「店が集客しないんですか?」と真顔で聞き返したそうだ。そこらにいる素人のお兄ちゃんから、いきなりそんなことを言われたら、さすがにマスターも面食らっただろう。

 まさかとは思うが、自分の弾き語りで金を稼げると思い込んでライブをやらせてほしい、と店を訪ねたのだろうか?もちろんライブはブッキングされなかったが、そのお兄ちゃんも世の中の仕組みを少しは学んで帰ったかと思ったら、後日再び、オープンマイクのイベントに参加しようと来店したそうである。

 オープンマイクとは、いろいろなライブハウスで行われているイベントで、客が数千円のお金を払えば一人10〜15分くらいの時間をもらって歌うなり、演奏するなり順番にパフォーマンスを披露させてもらえる機会である。しかし、そのお兄ちゃんに常識は通用しなかった。

 その時は、「お金ないけど、オレ出演者だから払わなくっていいですよね?」とマスターに確認したそうである。彼は何も学習していなかった…。マスターは、その場でお引き取り願ったが、そのお兄ちゃん帰宅してから自分のブログに、店からこんな冷たい仕打ちを受けたとか書いたそうな。それに同調するコメントの書き込みもあったと言うから恐ろしい。マスターもご苦労さまである。

自己愛が強い出演者の場合

 これは5年くらい前のことである。彼女は東北地方から東京に出てきて、時々ライブ活動を行っている20代の女性であった。私は彼女の動画を視たことがあるが、当時はヒラヒラした衣装を身にまといカラオケの伴奏に合わせて簡単な振り付けで踊りながら歌うというパフォーマンスを行っていた。

 私から見れば、よくいる地下アイドルの一人だし、彼女が主に活動していたのも地下アイドル向けのハコだったようだ。だが、彼女自身はアイドル風の歌謡曲シンガーということで自分自身はアーティストと考えていたそうだ。ただ、お客さんが彼女をアイドルとしてとらえても、それは自由ですとか言っていたそうな。(マスターによると、地下アイドルには歌詞を見ながらでも、ちゃんと歌えない人が多いから、彼女は歌えるだけマシらしい)

 う〜ん、よくわからない。ともかく彼女、件の店にライブをブッキングしたけれど、なんと、ライブ当日にドタキャンしたのだった。しかも、電話の一本もなく、メールを一方的に送ってきただけ。温厚なマスターが事前に説明したキャンセル料をきっちり請求すると珍しく怒っていたが、ごもっとも。なお、ドタキャンしたのはファンの応援が少なくて気持ちが盛り上がらなかったからとか。悪いのはファンだそうだが、アーティストは客が一人でも聴いてくれる人のために歌うものである。

 で、地下アイドルにあるあるの話なのだが、可愛い子にはパトロンの優しいオジサマがいて(彼らは概ね紳士的で献身的らしい)、キャンセル料を肩代わりしてくれたそうである。彼女は一時期メンタルを病んで里帰りしていたが最近、復活した。そして、ドタキャンされても肩代わりしてくれるパトロンがいることを知ったマスターは心置きなく彼女のライブをブッキングしている。めでたし、めでたし。

念のため・・・

 先週、公開した記事ではアマチュアながら質の高い音楽活動をしているIさんとUさん、音楽を職業とすることが出来たEちゃんと私が演奏を聴いたことが有る三人のシンガーソングライターについて、真面目な記事を書いた。もちろん、そこで挙げた三人は真面目な方々であり、世の中には、真面目に自分の音楽を追求している人たちは沢山いらっしゃる。

 なので、本稿の「出演者の甘え」で記したような方々は少数派、「ここまで来ると・・・」と「自己愛が強い出演者の場合」で記した方々は、珍しい人たちと考えていただきたい。また、地下アイドルについて素人だと見下すような表現をした部分もあるが、本意ではない。この世界にもプロもいれば素人もいるのが現実である。別途、自分の見聞を記してみたい。

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